『海の音』は稲垣麦男(1931 - )の、おそらく第1句集。
稲垣麦男は1977年に「蒼茫」創刊。
裸木の影ばかり一筋の道
十年西日にただれた部屋に棲(す)む
荷馬いつも心得て止まる女将の人参
和尚は死刑立会人玉つきに凝り
五体朝霧のごとし山門を出る
パラソルの中で遊んでいった蝶一つ
砂の上に大の字書けば沖の白波
言の葉焚けば煙は薄し冬の空
夢覚めればぽっかり白雲浮いている
コスモスの海原乱れ君は去り
身ぬち走るいかづち白し鬼薊(あざみ)
雷神を父として嫋(たお)やかに活けている
凍てついて四十雀(しじゅうから)水が飲めない
抱擁し媾合(こうごう)し春の雲ゆく
雲になりたくて小屋の小兎跳ね回る
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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