角川文庫の小松左京、平井和正作品その他の装幀で馴染みのあった生頼範義が物故した。ハヤカワ文庫のベスター『虎よ、虎よ!』、ディレイニー『ノヴァ』等の装幀もこの人だった。
斎藤栄『河童殺人事件』は30年以上ぶりの再読。子供の頃かよっていた近所の床屋のおばさんがミステリー好きで、一時、客から古本をもらっては店に置いていた。それを借りて読んだうちの一冊だった。中味はまるっきり忘れていた。このおばさん、さして年のいかないうちに亡くなってしまい、店舗だった離れも最近取り壊されてしまって、今は床屋があった痕跡もない。
2冊の詩集、財部鳥子『氷菓とカンタータ』(書肆山田)と佐峰存『対岸へと』(思潮社)は著者より寄贈を受けたもの。記して感謝します。
中上健次『鳩どもの家』集英社文庫・1980年
《ぼくは十八歳の高校生。青春のまっ只中。だが、大人たちが築いた虚構の日常の中に、ぼく達の場所はない。だからセックスに煙草に関心を示し喫茶店にいりびたり、悪ぶってみせる……。表題作「鳩どもの家」他、「日本語について」「灰色のコカコーラ」等、バイタリティに満ちた初期作品を収録。 解説・村上龍》
収録作品=日本語について/灰色のコカコーラ/鳩どもの家
大原富枝『地上を旅する者』福武文庫・1986年
《近代日本の興隆と没落の波に翻弄され、言語に絶する悲運の境涯を送りながらも浄福の世界につきぬけた明治の女と、妻子ある男との危うい関係に揺れる現代女性を重ねつつ、日本の女の生きた水脈を探り、女の真の「自立」を問う長篇。》
高杉良『社長解任』集英社文庫・1985年
《経営再建のため、構造不況にあえぐ中央繊維工業に社長として天下ったエリート官僚出の川島。しかし、メイン・バンクの策謀に乗ってハネ上がる労組委員長の大久保に中央繊維工業は牛耳られていた。合理化案を潰し、人事権まで握って、川島の社長解任を画策する大久保の専横に対抗して、川島が放った最後の秘策とは!? 表題作『社長解任』ほか、中、短編4作品を収録。 解説・金田浩一呂》
アレッサンドロ・バリッコ『絹』白水Uブックス・2007年
《1861年、男は愛する妻と別れ、世界で最も美しい絹糸を吐く蚕を求めて、最果ての地、日本へ旅立つ。そしてそこで美しい謎と出会う。絹のようにしなやかで官能にみちた愛と幻想の物語。イタリアのベストセラー。》
荒俣宏『新宿チャンスン―シム・フースイversion 3.0』角川ホラー文庫・1995年
《現代建築の粋を結集した双頭の摩天楼・新都庁舎。凍てついた夜、この工事現場で魔除け柱が掘り返された。その瞬間、封印されていた怨念が息を吹き返す――。
工事中に続発する事故。地下水の噴流。怪火。そして、遂には作業員までもが消息不明に。
都庁職員の要請で、風水師黒田龍人とミヅチは、庁舎に巣喰う“魔”の正体を暴こうとするが……。異才・荒俣宏が、新宿風水の謎をここに解き明かす!
〈書下し〉》
李恢成『またふたたびの道・砧をうつ女』講談社文芸文庫・1991年(群像新人賞・芥川賞)
《日本の敗戦によるサハリンからの辛うじての帰国。劇変する状況、分断された祖国、一家離散の家族の悲劇。群像新人賞受賞の出世作「またふたたびの道」および、母を描く感動の名作「砧をうつ女」、父を描く「人面の大岩」、インターナショナルな視座から時代に正面し、たじろがぬ、常に真摯に力走する在日作家・李恢成の初期秀作群。》
収録作品=またふたたびの道/砧をうつ女/人面の大岩
石光真清『望郷の歌―石光真清の手記』中公文庫・1979年
《遼陽、沙河と、眼のあたり見た凄惨な日露の死闘の記憶は凱旋後も消えない。幾度目かの渡満、浪人とも海賊ともつかぬ流浪の果て、失意のうちに帰国、東京市郊外の世田谷村に三等郵便局長としてしばし閑居の日を送る。そして明治四十五年七月の末、楽しくもあり苦しくもあった明治、夢多く生命溢れた明治の世は終った――》
南原兼『アルキメデスの恋愛原理』もえぎ文庫ピュアリー・2009年
《高校二年の夏休み。物理学フェチの百合原歩が同居することになったのは、従兄弟の美形三つ子。高飛車だけど頼れる秀才の梢、スポーツ万能でワイルドな葉、料理上手な優しい幹。神話のエロスのように毎夜歩のベッドに忍びこんでくるのは誰? 愛とか恋とか興味ないのに麗しの王子三人に心乱されて。危険な従兄弟たちとのドキドキ家庭内四角関係。あふれそうな想いの答えは?》
渡辺淳一『廃礦にて』角川文庫・1976年
《十年前、国家試験を終えたばかりの整形外科医有村は、Y炭礦病院に出張していた。ある夜彼は、急患の若い女性の大手術を手がけるはめになった。患者は子宮破裂で、すでに絶望的であった。だが、溢れるばかりの血の海の中から、彼女は奇蹟的に甦える。有村は凄じい女体の生命力に、底知れぬ畏怖と無気昧さを覚えた。……
「廃礦にて」のほか、著者の直木賞受賞第一作「三十年目の帰還」等、主人公である医師の眼を通して、人間の温かみと悲哀が漂う三篇を収録。》
収録作品=廃礦にて(「母胎流転」を改題)/三十年目の帰還/窓の中の苦い顔/閉じられた脚
平井和正『ウルフガイ 魔界天使』角川文庫・1986年
《魔の波動のままに、背徳の都市と変貌したニューヨーク。悪の鬼神たちが跋扈する街は氷点下40度を超える酷寒地獄と化し、人々は心を喪くし、生きるものすべての魂は夜よりも暗く、そして冷たい。不死身の戦士・犬神明は、涸渇した地平の果てに、その血に刻まれた運命を悟り、そして人類救済のために立ちあがる。闇を切り裂くウルフの熱き咆哮が今ここに。光は闇の中ではじめて輝きをもつのだ――。
宇宙の思念を言の葉として現代に綴る筆者が、人間の究極の姿を壮大なスケールで描いた、アダルト・ウルフガイシリーズの頂点!》
阿部昭『千年』講談社文庫・1977年(毎日出版文化賞)
《幼い少年であった彼にとっても、生きることの深い哀愁は手の届くところにあった……生成と死滅の無限の連鎖をくりかえす時間の彼方に情感をこめた視線をそそぎ、人生の手ざわりをたっぶりと感じさせる連作小説集。表前作を初めとする秀作短篇四作品と、父と子の屈折した共感をつづる名篇「父と子の夜」を収録。》
収録作品=千年/桃/沼/子供の墓/父と子の夜
西村京太郎『汚染海域』徳間文庫・1982年
《1人の少女が入水自殺をした。その真相を糾すべく弁護士の中原がヘドロの海を訪れるが、そこには目先の利益に躍る巨大企業と地元民、そして公害調査に取組む高校教師吉川と生徒たちの地味な活動があった。
折しもアカネエビの解禁で出漁した漁師たちの網に調査団長の冬木教授の死体がかかり、勾留された吉川の無実をはらすため中原は企業と調査団の黒い実体を暴く。
公害問題に挑戦する著者の長篇野心作!》
西村京太郎『幻奇島』徳間文庫・1982年
《雨の某夜、いきなり車に飛び込んで重傷を負った女が、謎めいた言葉を残して茅ヶ崎の海に消えた。内科医の西崎が小さな島の診療所へ追われたのは、このためだった。
南海の果て、滅亡を予告された幻奇の島――祭の日、西崎は茅ヶ崎の海に消えた女と瓜二つの島の娘と結ばれるが、それ以後、一見、平和そのものの島内で殺人事件が次から次へと起る。そして……。
哀しくも美しい島を舞台に描く秀作推理。》
斎藤栄『国会議事堂殺人事件』徳間文庫・1981年
《国会議事堂には天皇専用の秘密脱出路がある――峯岸は、その論文草稿の準備中、極左グループと公安関係の両派から脅威を感じていた。その草稿を三分割し、それぞれ師の伏見教授、友人の堀に託して峯岸は上京したが、その直後、彼は何者かに惨殺され、伏見教授もまた殺されてしまった。
事件の真相を究明すべく、堀は恋人とともに調査を開始するが、国家秘密機関の暗躍、学閥間の陰謀等が行手に待っていて……。》
斎藤栄『河童殺人事件』徳間文庫・1983年
《鎌倉の松阪外科病院で看護婦が刺殺された。白衣の上から胸を刺され、犯行現場にあった屏風に書かれた短歌の中の“河”と“童”の文字に血がついていた。床には水がこぼれ、徴かに水藻の臭いがした……。
そのころ、川崎市内の産院から建設大臣山本の孫が誘拐された。しかし誘拐犯の3人組は犯行を看護婦の真島圭子に見つかり、圭子も連れて逃げる羽目になる――サスペンス溢れる新生児誘拐過程を描く長篇推理。》
エイヴリー・ギルバート『匂いの人類学―鼻は知っている』ランダムハウス講談社・2009年
《匂いがなかったらこの世界はどんなにつまらないだろう。
学問、カルチャー、ビジネスなど幅広い切り口で
人間にとっての匂いを探る。
――日高敏隆(京都大学名誉教授、動物行動学者)
五感の中でも嗅覚は、最も知られていないと言われる。
例えば、匂いは何種類あるのか?どうすれば匂いを分類できるのか?
こういった疑問に、現代の科学はどこまで迫っているのだろうか。
いい香りから悪臭まで。
匂いのメカニズムから匂いの心理学まで。
匂いを利用したマーケティングから、匂いを駆使した映画・小説・ポップカルチャーまで。
科学的な根拠を提示しつつ、嗅覚にまつわるエピソードをあらゆる角度から描き出す。
匂いがわかれば人間がわかる。
ジャーナリスティックな文体にジョークをふんだんに盛り込んだ、匂いのプロデューサーが案内する、匂いの百科全書。》
書評:匂いの人類学-鼻は知っている [著]エイヴリー・ギルバート - 瀬名秀明(作家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
常岡浩介・高世仁『イスラム国とは何か』旬報社・2015年
《混迷を深める中東、失敗を重ねる米国…三度の潜入取材に成功、世界でただ一人のジャーナリストが語る衝撃の日本人人質事件の背景とは…“脅威”の実像に迫る! 》(「BOOK」データベースより)
横尾忠則『温泉主義』新潮社・2008年
《温泉嫌いのぼくが、温泉に取り憑かれた!いったい、著者に何が起こったのか?しかも一温泉一作品、大作を24点も描いてしまった!絵画作品とエッセイで綴る24の温泉ファンタジー。》(「BOOK」データベースより)
佐野眞一『宮本常一の写真に読む失われた昭和』平凡社ライブラリー・2013年
《宮本常一が残した10万点余の写真のうち190点を厳選。村里の暮らし、島と海に見た貧しさと豊かさ、街角の庶民の息づかい……。高度成長期前後の日本の民俗と社会を知る手がかりとなる一冊。》
村上龍・坂本龍一『村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Cafe』スペースシャワーネットワーク・2013年
《ふたりの「龍」による、伝説の対談が30年ぶりに復活。単行本初収録の対談、鼎談もたっぷり加え、未来なき、21世紀の日本を語る。》(「BOOK」データベースより)
倉谷うらら『フジツボ―魅惑の足まねき』岩波科学ライブラリー・2009年
《泳ぎ、歩き、逆立ちし、慎ましく脱ぐ。つぶらな瞳と招く脚―。ダーウィンが愛した魅惑の生物、その殻に隠された素顔がいま明らかに。人体に生えるって本当?東郷平八郎がバルティック艦隊に勝ったのはフジツボのおかげ?なぜ歯医者さんが注目?美しい写真や歴史的な博物画も満載。巻頭に図鑑、巻末に観察ガイドとペーパークラフト、そしてページ右下に変態パラパラ付き!充実のオールカラー版。》(「BOOK」データベースより)
中野香織『モードとエロスと資本』集英社新書・2010年
《デフレ、エロカワ、少子化…時代の映し鏡であるモードを通して、劇的な変化を遂げる社会をリアルにつかむ一冊。》(「BOOK」データベースより)
村上龍/テレビ東京報道局編『カンブリア宮殿 村上龍×変革者』日本経済新聞出版社・2015年
《規制と既成を突破する。自ら変化をつくり出し、時代を変えた15人の働き方。》(「BOOK」データベースより)
スラヴォイ・ジジェク『事件!―哲学とは何か』河出ブックス・2015年
《事件―それはわれわれが世界を知覚し世界に関わるときの枠組みそのものが変わることである。現代政治からビッグバン、キリスト教、仏教、恋愛、映画、俳句まで―現代思想界の奇才が、「事件」をキーワードに、読者を思考の冒険にいざなうスリリングな哲学入門。日本語版序文「日本的事件とは」収録。》(「BOOK」データベースより)
財部鳥子『氷菓とカンタータ』書肆山田・2015年
《美しい音楽にかさなって聞こえてくるもう一つ
の小さな響き───細ることなく消えることも
ない記憶を拳に握りしめ、世界で一番さびしい
少年が走る。大江の川波にむかって、「おーい」
と叫んでいる。遠い未来が少しかすんで揺れる。》
西澤潤一・中村修二『赤の発見 青の発見―高輝度LEDで光の三原色をつくった天才たち』白日社・2014年
《世界的発見、発明に至る経緯、創造力を発揮させる必須条件、科学、技術、そして日本のあるべき姿を語り合う。知能犯と暴力犯による毒舌対談集。》(「BOOK」データベースより)
石原千秋『百年前の私たち―雑書から見る男と女』講談社現代新書・2007年
《セックスと就職と自分探し、いまと変わらぬ明治・大正。》(「BOOK」データベースより)
荒俣宏『江戸の幽明―東京境界めぐり』朝日新書・2014年
《どこまでが江戸の内なのだろう?江戸人となった著者が、御府内と郊外との境界線を探る旅に出た!将軍お膝元の日本橋では大店がならび殷賑をきわめるが、一方、信仰に賑わう目黒は国賊たちを祀る所でもあった。田園調布にムサシをベースとした多摩川文化を、明治神宮や哲学堂では古来の営みを感じ、板橋・練馬では著者の育った戦後の思い出がこもる。開国築地に着いて江戸一周は明治となり、朱引の内外を楽しむ紀行も大団円!》(「BOOK」データベースより)
大庭健『民を殺す国・日本―足尾鉱毒事件からフクシマへ』筑摩選書・2015年
《チェルノブイリに次ぐ大惨事となった福島第一原発事故と、百年以上前に起きた足尾鉱毒事件。いずれも、この国の「構造的な無責任体制」に起因する。そこでは「国家の決定」が神聖視され、「知性の犠牲」を捧げてまで、その遂行が優先される。こうした体制=国家教の下で、足尾では企業による鉱毒垂れ流しのため村が廃村となり、森林は今なお回復していない。無数の人びとを見殺しにするこの国の「構造的な無責任」体制を超克するには何が必要か。倫理学者による渾身の書である。》(「BOOK」データベースより)
M・バルガス=リョサ『果てしなき饗宴―フロベールと『ボヴァリー夫人』』筑摩叢書・1988年
《1959年の夏、パリに到着したばかりのペルーの一留学生が買い求めた一冊の小説。それこそは、作家としての彼の人生を決定づけた「愛の物語」だった。現代ラテンアメリカ文学の最前線に立つ若き巨匠、マリオ・バルガス=リョサが、鍾愛の書『ボヴァリー夫人』をめぐってダイナミックに展開する、とびきり面白い文学論。》(「BOOK」データベースより)
ローレンス・ダレル『黒い本』中公文庫・1974年
《ヘンリー・ミラーをして「チョーサーよ、シェイクスピアよ、くたばるがいい! この本によって宣言された、先駆的宇宙に栄光あれ!」と叫ばせた『黒い本』は、二十数年にわたって半ば発禁の書とされ、暗澹たる絶望と熾烈な背徳の世界を現出して、最も現代的な問題に迫る。》
岡崎乾二郎『芸術の設計―見る/作ることのアプリケーション』フィルムアート社・2007年
《マニュアルを超える、表現技術のハード・コア!素人から抜け出すための秘密の方法!使えるアプリケーション/アーカイブ・ガイド付き。》(「BOOK」データベースより)
雪舟えま『プラトニック・プラネッツ』KADOKAWA/メディアファクトリー・2014年
《漫画家志望の住吉休之助と暮らす、ロボットペットメーカー社員の二十四軒すわの。おとむらいの儀式で歌った晩、フューチャークラシコ葬祭社の荻原楯と出会ったことから、すわのの運命が回りはじめた…ほんとうの願い、大すきだった人と離れて進む道、団地から宇宙の果てまできらめく想いの炎。心がすっきり、楽になる、世界を見る目が変わる小説。》(「BOOK」データベースより)
佐峰存『対岸へと』思潮社・2015年
《越境の都市景
湾が広がっている せまってくる
遠ざかり 黒々と鮮やかに
透明に 増え続ける
生態の柔らかな連鎖は生臭く
鋼鉄の空白に 食い込んでいく
(「湾」)
「ミクロとマクロ、有機と無機が同一の空間のなかで組み込みを果たし、じつに、じつに見慣れない詩の景色が展開している」(野村喜和夫)、「それはディストピア、ではない。必然としての未来であり、彼の「指」はかなしみもなく、乾いた詩的真実だけをぼくらの待つ「対岸へと」つづるだろう」(石田瑞穂)。生成と分解を続ける、半透明にさらされた都市の器官。境界のトポスから発語する鮮烈な第1詩集。装画=引地渉》
マルグリット・デュラス『ヒロシマ・モナムール』河出書房新社・2014年
《アラン・レネの名画『二十四時間の情事』の分身であり、映像と文学の決定的な出会いから生まれた類い希なテクスト。今読む意味を問う尖鋭な訳者ノート付。》(「BOOK」データベースより)
水無田気流『「居場所」のない男、「時間」がない女』日本経済新聞出版社・2015年
《仕事以外の人生の選択肢に乏しく、“世界一孤独”とされる日本人男性。婚活・妊活・保活…リミットに追われ続け、家庭でも自分の時間を確保できない日本人女性、双方が幸福になるために、一体いま、何が必要なのか?気鋭の社会学者が、「時空間の歪み」をキーワードに読み解く。》(「BOOK」データベースより)
書評:「居場所」のない男、「時間」がない女 [著]水無田気流 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
『「居場所」のない男、「時間」がない女』 水無田気流著 : ライフ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
荒俣宏『決戦下のユートピア』文春文庫・1999年
《軍国主義の大号令が響きわたった第二次大戦下にも人々に日々の生活はあった。庶民の健康な欲望の痕跡を求めて、戦争当時に刊行された本や雑誌、新聞などの資料を徹底分析。ファッション、グルメ、文学、お笑い、結婚相談所、新興宗教などを通して、戦時下における等身大の庶民生活を再発見する異色の一冊。》
森村誠一『新幹線殺人事件』角川文庫・1977年
《その日、ひかり66号のグリーン車は空いていた。名古屋を過ぎてまもなく、検札の車掌が通った時に異常はなかった。だが終着の東京に近づいたころ、乗客の一人が男の刺殺体を発見、たちまち車内は大混乱に陥った。
目撃者も凶器もなく捜査は極めて難航した。そして捜査本部がようやく、事件の背後に、万国博の巨大な利権をめぐる二大芸能プロダクションの暗闘をつきとめた時、有力な容疑者が捜査線上に浮かび上がった。しかしその男には、二重三重に張りめぐらされた鉄壁のアリバイが……。
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