2015年
ふらんす堂
『海路』は大串章(1937 - )の第7句集。
大串章は大野林火に師事。「百鳥」主宰。
竜天に登り鯨は骨残す
大白鳥千里来て剥製となる
竹伐つて大海原を近くせり
露の世の宴の酒に酔ひにけり
白鳥と古墳と天地分け合へり
潮干狩バケツ揺すりて終りけり
大空を洗ひ夕立去りにけり
霜柱縄文人のやうに踏む
鳥籠の影揺れてをり春障子
桜鯛ひしめく網を引き絞る
惑星は宇宙の過客聖五月
風鈴売百の音色に溺れをり
整然と虹の原理を説く子かな
大夏木蜜蜂の巣を蔵したり
竹を伐り利休の自刃思ひけり
あとがきには戦後70年ということで、満州で敗戦を迎えた作者の悲惨な状況が語られている。
大串章の一家の入っていた女児河の日本人社宅は、敗戦と同時に自衛のために周囲に鉄条網を張りめぐらし、要所要所に小銃を抱えた不寝番が立った。しかし数十日後ソ連兵に武装解除され、無防備となった。その日の夕方、社宅は匪賊に襲われ、一家は裏山へ逃げ込んだ。燃え上がる社宅を見ながら隣町まで歩いて逃げ、以後一年間、食うや食わずで日本に引き揚げてきたという。
《集団自決とは、窮地に陥った開拓団が、最初妻子を殺し、続いて自らの命を絶つことである。私たちは、戦争の恐ろしさ、平和の有り難さを忘れてはならない。》
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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1945年、宝田明少年が見た終戦=旧満州・ハルビンから引き揚げの記憶
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