「里」(発行:島田牙城、編集:仲寒蝉)2014年12月号から。
特集は「海野良子句集『時』にピッケルを打ち込む」。
堀下翔「俳句雑誌管見」第8回は後半、《闇深かりし三矢サイダーありし頃 行方克己》を取り上げて、「三矢サイダー」は存在しない、あるのは「三ツ矢サイダー」だと指摘した上で、作者の記憶の誤謬をかえって「正直」とし「信用」するという展開。《自分しか知らない「闇」をほとんど自分のためだけに記述しようとするとき、このサイダーが「三矢」であったか「三ツ矢」であったかに気を配るだけの余裕を持つ方がよほど俳句に対して不誠実ではないのか。》
「三矢」か「三ツ矢」かなど大概気にも留めずに通り過ぎられてしまうところで、俳句を言葉として唯物的に読む姿勢の徹底は稀少。
女湯の屋根の曲線秋まつり 海野良子(特別作品20句から)
にほひなく美味穴熊を薬喰
山火事はどつち左右へ消防車
TPP反旗ひらめく刈田道 翠 雲母
村よりも明るきバスや蟲時雨 仲 寒蝉
人影に力こぶある焚火かな 島田牙城
みどりなす炎を産みゐたる落葉
純愛やメニューを立てるものが透け 佐藤文香
乳房まづしく色なき風の中に立つ 水口佳子
乗客をみな貫いて秋落暉 九里順子
息白く地味なATMに向かふ 大西龍一
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