2014年
銀蛾舎
『地祇』は「小熊座」編集長・渡辺誠一郎(1950 - )の第3句集。
2004年(平成16年)から2014年(平成26年)春までの588句を収録。
《震災詠もなんとか作ったが、現実を前に筆が折れる思いだった。被災の後始末の仕事に就いていたこともあり、空しい感情に流れるばかりであった。》(あとがき)
春の丘姉は小さな光食べ
淑気とは紙一枚の立つごとし
海よりも淋しき水着見ておりぬ
しばらくは異形に還る冬籠
虫かごの無傷の虫が混み合いて
月山は一切であり淑気満つ
稲妻やうらさみしきはわが頭蓋
原子炉に水打つ女が夢に立つ
セシウムの降りて盗汗が内臓に
地の揺れは虫の血の揺れ梅ひらく
被曝して玉虫走る殺さねば
腐りしずもる山河へとやませ這う
フクシマの黒旗となりぬ黒牛は
写真師は地割れの虻を撮りたがる
死者だけが海辺を歩く春日向
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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Arvo Part Te Deum
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