閑中俳句日記（別館） －関悦史－

「草樹」53号（2014年9月）

　「草樹」（草樹編集部編集／吉田成子発行）53号（2014年9月）から。


生きものの音絶ゆるなし嘉祥菓子　　　沼尻巳津子

更衣しばらく山河よそよそし　　　吉田成子

高々と来て夏蝶の白ばかり　　　宇多喜代子


重ね置く大皿小皿祭笛　　　西澤和子

みちのくの墓標ふえゆくわらび山　　　林　和琴

伊勢道に人暗くする驟雨かな　　　稲本登美子






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Marianne Faithfull (BBC Sessions)

 

「里」2014年9月号

　「里」（発行：島田牙城、編集：仲寒蝉）2014年9月号から。

　特別作品として島田牙城37句、樽本いさお13句を掲載。

　堀下翔の連載「俳句雑誌管見」は週刊俳句第379号の福田若之作品について。



折紙のやうなる祖母の三尺寝　　　喪字男

立秋や眼鏡の薄きむらさきを　　　中山奈々

ゆらゆらと佃の路地や盆まつり　　　小林苑を

手縄繰る鵜匠の腕の太からず　　　仲　寒蝉

ハイドンの天地創造百日紅　　　丸岡正男

初秋の冷やし中華や雨降りさう　　　佐藤文香

鳥渡るセロハンテープ虹の色　　　上田信治


梨かじる螢光色の靴履いて　　　島田牙城（特別作品）

おもむろに雨の空より秋螢

空間として秋空が寝てをりぬ


雷に身を硬くするなめくぢら　　　樽本いさお（特別作品）






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Haydn "Schöpfung" unter der Leitung von Bernard Haitink (2013)

 

「小熊座」2014年9月号

　「小熊座」（発行：高野ムツオ）2014年9月号から。

　「第7回佐藤鬼房全国俳句大会シンポジウム―鬼房俳句と愛について―」の模様を収録。パネラーは神野紗希、矢本大雪、宇井十間、司会は大場鬼怒多。



生者死者息を合わせて今朝の海霧　　　高野ムツオ

吊革に伸びるどの手も梅雨の底


萬緑や沖に置かるる老の耳　　　平松彌榮子

誰も知らぬ防空壕の屋根かぼちや　　　浜谷牧東子（物故）

闇いくつ越えきし白蛾光りゐる　　　日下節子

戦さまた夜更けてまでも水鶏啼く　　　佐々木とみ子

巨鯨にはきこえぬ叙事詩月蝕(か)ける　　　宇井十間


地下茎でつながっている夏の星　　　佐藤成之

錠剤のやうな餌撒き熱帯魚　　　津髙里永子






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[The Hagen Quartet] W. A. Mozart - String Quartet No. 18 in A major K. 464

 

「澤」2014年9月号

　「澤」（発行：小澤實、編集：望月とし江）2014年9月号から。

　特集は「澤創刊十四周年記念吟行大会」。



油揚げの卵とぢ春惜しむなり　　　小澤　實


晝闇に白しや蘭は色に香に　　　高橋睦郎（新竪題）


天降り来し迦楼羅の嘴に花一片　　　高橋和志

腰まで浸かり妊婦歩くやプールの中　　　生井敏夫

花見舟の手を振る人や振り返へす　　　髙見恵子（物故）

河童忌や雨降つて草沸きたちぬ　　　川上弘美

梅の実落つ会津八一の杖の先　　　葛西省子


ベースの太き弦弾く太き指に汗　　　トオイダイスケ

ベージュ着るなよ君が裸に見えるだろ　　　限果

眼鏡打つビールジョッキや飲み乾せば　　　榮　猿丸






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Jerome Rose Plays Chopin - Four Ballades, Two Sonatas - Medici Classics

 

【十五句抄出】中村慶岳・中村文句集『東福寺』

2014年
本阿弥書店



　中村慶岳（1955 - ）は「狩」「ホトトギス」「杉」に入会後、4年前に俳誌「花安居」を創刊した臨済宗の僧侶。

　中村文（ふみ　1975 - ）はその妻。

　夫婦での合同句集としては既に『雲自去来』『東山水上行』『花安居』の3冊があり、この『東福寺』が4冊目となる。慶岳の句181句、文の句70句を収録。



枡酒のやうに新茶を枡で飲み

朝食の席にゆつくり午睡せり

十二時を過ぎて大安京の月

橋上の左右明るく紅葉寺

山に百合岩魚動きて夜は更けぬ

凍えては煙草の数を重ねけり

時計は丸く柱は長く松は緑

蝉鳴く前に聞こえてゐた現在

何となく生き生きしたる夏の部屋

大ぶりの茄子の漬物ご飯炊く

百合の花見事な白の一つ開く

敷石に附いた杉苔手入れして

鳥鳴いてをり冬雲の輝く

　　　＊

夫が好き散歩が好きで初夏が好き　　　（中村文）

秋晴れの日はコーヒーでも飲もうよ　　　（中村文）






※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。






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山粧う京の秋　〜 もみじの東福寺通天橋へ 〜

 

【十五句抄出】利普苑るな句集『舵』

2014年
邑書林



　利普苑るな（1959 - ）は「河」を経て「鷹」同人。

　『舵』はその第1句集。序文、小川軽舟。栞、黄土眠兎。栞によると筆名の「利普苑」はレニ・リーフェンシュタールから取ったらしい。



玄関のライダーブーツ明易し

腹這ひのをとこの嵩や百日紅

円錐に頂点ひとつ油蝉

履歴書に増ゆる職歴てんと虫

夏木立少女のなかにある卵

冷酒や早くも減りて今世紀

鶺鴒や実朝の海見に行かむ

仰ぎ見る僧の背丈や水の秋

十三夜ジャコメッティの人歩く

星月夜子どものをらぬ子供部屋

秋冷の神保町へ行くと言ふ

身に入むや白墨の音こつこつと

寒禽のこゑ聞いてをり籠の鳥

囀や心臓模型赤と青

雛の日やはじめ冷たきイヤリング






※本書は関係者より寄贈を受けました。記して感謝します。





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Leni Riefenstahl: Olympia - Das Fest der Schönheit (1936)