「夢殻集―らんの会2014」は「らん」の有志13名による未発表各30句の作品集。
あなたからこなたへ移すだけの人品 五十嵐進
野ざらしのブルーシートで孵化するか蝶
内臓に浸み出してくる冬の雨
夕暮れや水より深く光るもの
鱒寿司などと柴漬け食べつ泳ぎをり 海上晴安
豊かにも静かに老いて草を刈る
煮崩れを皿につくろひ夏了る 片山タケ子
半眼に除夜の鐘きく雷魚かな
風船のあつまつてくる徒手空拳 嵯峨根鈴子
髑髏を描きそれから枝垂桜挿す
ガム噛んでゐるのが人柱らしき
他人のためマスクする人ひがしはくらく 清水春乃
抱き攫ふ白鳥の頸の長さかな 月犬
犀も立つこの炎晝の禱りかな
大津波春の海より生まれたる 鳴戸奈菜
いつまでもこの世は夢の縄梯子
さびしさにウスバカゲロウ解体す
てのひらに冬蜂の完結が在る
軍艦と最中は嫌い日向ぼこ 西谷裕子
満月を投げ上げてのち行方不明 皆川 燈
夢の中に落ちて月光まみれなり
にんげんは壊れやすくてななかまど もてきまり
白蛇が肋骨(あばら)あたりを田中泯
古池やときにピラニア跳ねてをり
虚空には椿油がさわぎだす 森川麗子
耕衣忌の手帳に残る齟齬(そご)ひとつ
首相官邸切れば血の噴くトマトかな 山口ち加
はりがねむしに口あるかしら秋深し
春光や死にきれなくて魚買う 結城 万
髪切れば紫蘇の大束欲しくなる
*****************************************************
Giacinto Scelsi - Duo for violin and violoncello (1965)
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前は必須です。メールアドレスは公開されません。)
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。