今月はやたらに眠くて、時間があっても何も読めない日が多かった。
鮎川哲也『風の証言』角川文庫・1975年
《植物公園のあずまや風の茶店で惨殺されていたバレエダンサーと男のサラリーマン。その死体は不自然なまでにねじ曲げられ、顔は異様にふくれ上がっていた。
〈動機は三角関係か‥…・?〉捜査の結果、殺された男は会社に潜む産業スパイを追及する矢先に消されたことが判明した。だが、産業スパイは堅牢なアリバイを盾に犯行を否認、別に、“赤いベレー帽をかぶった男”を真犯人と主張するのだった……。混乱する捜査陣の中で、丹那刑事、鬼貫警部の名コンビの推理が冴える。
著者会心の本格長編推理。》
宮脇俊三『シベリア鉄道9400キロ』角川文庫・1985年
《出発は、雨の横浜港からであった。50余時間の、揺れに揺れた船の旅。だが、ナホト力からは、待望の汽車である。第1夜は、国際夜行列車ボストーク号。翌日、ハバロフスクに着き、ついにロシア号と対面。――ワイン・レッドの車体に白帯を巻き、横腹に「モスクワ―ウラジヴォストク」の標示板をかけた、それが「これから延々8521キロを6晩7日かかってモスクワまで走る世界最長の列車、シベリア鉄道の代表列車」なのであった。
ひとたびロシア号に乗れば、あとは毎日毎日が汽車の中なのである。長大なアムール川の鉄橋を渡り、いよいよ列車は、氷雪と白樺のシベリアを、一路モスクワめざして走りはじめた――》
神林長平『言葉使い師』ハヤカワ文庫・1983年
《「わたしは言葉使い師」と黒装束の男は口に出していった。〈なんてことを。しゃべっているのが警察に知れたら、捕まってしまいますよ〉ときみはテレパシーでいう――秩序を乱し、破壊するものとしてすべての言語活動が禁止されている無言世界を舞台に、言葉を生き物として操る言葉使い師によって、いやおうなく反社会行為者となった男の行手には……言葉に対するSF的アプローチを試みた意欲作「言葉使い師」ほか、人間とコミュニケートできる火星の岩の物語「スフィンクス・マシン」など、新鋭の才気をあますところなく伝える6短篇を収録。》
収録作品=スフィンクス・マシン/愛娘/美食/イルカの森/言葉使い師/甘やかな月の錆
ジャン=マリー・シュバリエ、パトリス・ジョフロン、ミッシェル・デルデヴェ『21世紀エネルギー革命の全貌』作品社・2013年
《シェール革命、福島原発事故、中国や中東産油国の行方、新エネルギー開発戦争……エネルギー大転換期の未来を見通す。欧州を代表するエコノミストが戦略と政策をまとめあげたベストセラー。》
吉田伸夫『光の場、電子の海―量子場理論への道』新潮選書・2008年
《量子場理論―それは量子力学の完成形である。物理学専攻の大学院生にとってさえ理解が容易ではないこの超難解な理論を、本書はあくまでも一般読者のために解説してみせる。20世紀の天才科学者たちは、いかにして「物質とは何か」という謎を解き明かしたのか?その思考の筋道が文系人間にも理解できる画期的な一冊。》(「BOOK」データベースより)
髙橋みずほ『歌集 坂となる道』沖積舎・2013年
《薄野をとぶこうもりの文様を織り上げて裾にて光。カップの内の泡つぶを数えはじめる子のひかり。ひとのこころにどしゃぶりのよるくらやみの光に消えた。くらやみのほのか光をあつめて雫のおちて坂となる道。大きな“うねり”のあとに“ひかり”(光)の中に改めてピュアをうたう。》
野間易通『金曜官邸前抗議―デモの声が政治を変える』河出書房新社・2012年
《原発再稼働反対を訴え一般市民20万人が集まり、総理との異例の面会にも至った毎週金曜の通称「官邸前デモ」。戦後市民運動の明確な分岐点になったこの運動の経緯と思想を明らかにする。》
書評:金曜官邸前抗議 デモの声が政治を変える [著]野間易通 - 上丸洋一(本社編集委員) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
中井久夫『統合失調症の有為転変』みすず書房・2013年
《1966年に精神科医となって以来、統合失調症を中心に、グラフと年表を作ることの効用、絵画療法の意味、外来治療のあり方など、著者のやってきたこと・見てきたこと・考えたことを懇切にしるし、さらに日本を軸に精神医学の歴史を追跡しながら、今後を展望する。これからの精神医学と医療にたずさわるすべての人のために。》(「BOOK」データベースより)
中井久夫『統合失調症の有為転変』 | トピックス : みすず書房
鮎川哲也『準急“ながら”』角川文庫・1979年
《――事件は、何とも奇妙な様相を示しはじめた!
殺されたのは土産物屋の主人。彼は尻すぽみの商売をたて直すため、新しいこけしの商談に出かけ、翌朝ナイフで胸を刺された死体となって発見された。
だが、調査が進むにつれて、何と殺されたはずの主人が、出身地で元気に生きているという情報が届いたのだ。背景には何が……?
奇々怪々の出来事の中で、丹那・鬼貫たちは、首尾よく事件の核心に迫ることができるか?
本格ミステリーの名手、鮎川哲也が贈る、“アリバイ崩し”の傑作!》
佐野洋『一瞬の殺意』徳間文庫・1984年
《エリートコースを歩むまじめなサラリーマンは、なぜ妻を殺したか。幸せな日々を送る夫婦を襲った突然の破局には、意外な動機があった。表題作『一瞬の殺意』をはじめ一夜を共にした未亡人の妖しい打明け話から亡夫の心中事件の真相を知る『淫らな贈物』、パトロンに殺された日陰の女の微妙な女ごころを描く『奇妙な体験』ほか五篇を収録。いずれも典型的な小市民生活を送る男女に起きた犯罪を描く珠玉篇。》
赤坂憲雄『方法としての東北』柏書房・2007年
《「ひとつの日本」というイメージを支えてきた様々な仕掛けを解体し、多様な日本像・東北像を浮かび上がらせてきた著者の新たなる第一歩。》(「BOOK」データベースより)
宮脇俊三『台湾鉄路千公里』角川文庫・1985年
《はじめて見る台湾であった。とうとう来たなと私は思った。この島には阿里山鉄道があり、台東線があり、トロッコ用の狭々軌の上を鉄道博物館のように走っている。いっぽう、基隆―高雄間の縦貫線は昨年六月に複線電化され、「自強号」という超特急電車が日本の在来線の特急を上回る高速で快走しているはずである。さらに今年の二月には、東北部の嶮しい海岸線に洽って「北迴線」が開通した。連続する長いトンネルの合い間から、有名な清水断崖が瞥見できるという。これらのほかにも九本のローカル線があり、また、砂糖会社の鉄道で一般客を乗せるのもあるらしい。そのあたりになると詳細はわからないが、とにかく私にとって訪れずにはいられない島であった。
――本文「桃園国際機場」の章より》
デズモンド・バグリイ『砂漠の略奪者』ハヤカワ文庫・1984年
《麻薬で一人娘を失ったイギリスの映画王ヘリアー卿。その彼からの依頼を受け、麻薬密売ルートを撃滅すべく、医師のウォレンは私設軍隊を作り上げた。集められたのは、プロのギャンブラー、命知らずの傭兵、魚雷づくりの技能を持つ自動車修理工、それに特ダネめあての新聞記者と麻薬を憎む心理学者。ウォレンと彼ら5人の男たちは二班に分かれ、悪辣な敵の待つレバノンヘ、そしてイランヘとそれぞれ飛び立っていったが……! 灼熱の中東砂漠と紺碧の地中海を舞台に繰りひろげられる激烈な銃撃戦――スリルに満ちた著者会心の本格冒険アクション》
中島岳志『血盟団事件』文藝春秋・2013年
《一九二八(昭和三)年、日本での革命を目指す宗教家・井上日召は、流浪の末に茨城県大洗にたどり着く。巧みな弁舌で農村の若者たちを魅了し、次第にカリスマ的指導者として君臨するようになる井上。共に理想のための「捨石」となる決意を固めた彼は、若者たちを「一人一殺」を掲げるテロリスト集団「血盟団」に変貌させていった―。》(「BOOK」データベースより)
『血盟団事件』 (中島岳志 著) | 自著を語る - 本の話WEB
『血盟団事件』 (中島岳志 著) | 鼎談書評 - 文藝春秋WEB
「対談◎血盟団事件とは何者だったのか ――革命・三島由紀夫・近代化」文學界2013年11月号より | インタビュー - 本の話WEB
『血盟団事件』 中島岳志著 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
書評:血盟団事件 [著]中島岳志 - 角幡唯介(ノンフィクション作家・探検家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
【書評】現代と変わらない若者の苦悩 「血盟団事件」中島岳志著 - MSN産経ニュース
山田風太郎『信玄忍法帖』角川文庫・1975年
《「風林火山の行くところ敵なし」諸国にその名を恐れられた猛将、武田信玄が死んだ? 過ぎし日、三方ヶ原の戦いで惨敗を喫した徳川家康は、その真偽を確かめるため直ちに七人の伊賀者を甲斐へ送り込んだ。
一方、信玄なき武田軍団の弱体を痛感する軍師山本勘介は影武者を擁立。信玄存命と見せかけてこれを猿飛、霧隠の二人の忍者に死守させた。のどかな甲府盆地は、たちまち忍者同士の熾烈な攻防に血塗られていった……。
奇奇怪怪の忍法争いを通じて武田家の存亡を描く、山田風太郎の傑作忍忍法帖!》
フアン・カルロス・オネッティ『別れ』水声社・2013年
《田舎町のホテルにひとりの男がやって来た。無愛想な人柄…若い娘との待ち合わせ…妻子の来訪…町人たちは噂し、疑り深い語り手は男の背景にひとつの物語を紡いでいくのだが…語り手の視点から言葉巧みに読み手を作品世界へと誘い、作者自らこの作品を偏愛した秀逸な中編。表題作のほか、モンテビデオで起きた実話を憎愛と復讐の物語へと変貌させた「この恐ろしい地獄」。婚礼というオブセッションに取り憑かれた狂女を幻想的に描いた「失われた花嫁」の傑作短編を収録。》(「BOOK」データベースより)
千葉雅也『動きすぎてはいけない―ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』河出書房新社・2013年
《“もっと動けばもっとよくなる”“もっともっとつながりたい”…動きすぎ、関係しすぎて、ついには身動きがとれなくなった世界でいかに生きるか。待望のドゥルーズ入門。》(「BOOK」データベースより)
動きすぎてはいけない [著]千葉雅也 - 永江朗 - ベストセラー解読(週刊朝日) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
ハッピー『福島第一原発収束作業日記―3.11からの700日間』河出書房新社・2013年
《あの時、何が起きていたのか?今、何が起きているのか?現場作業員による3・11からの「生」の手記。》(「BOOK」データベースより)
書評:福島第一原発収束作業日記―3・11からの700日間 [著] ハッピー - 原真人(本社編集委員) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
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小林久三『真夏の妖雪』講談社文庫・1983年
《天保十五年の真夏、古河の城下で若い岡っ引きが殺された。目撃者はないが、被は当時江戸の牢から逃走した有名な蘭医高野長英をさがしていたという。長英が犯人なのか。そしてもう一つの謎は被害者の懐中にあった雪! 真夏の雪は何を意味しているのか。
歴史の一断面を巧みに推理小説に盛りこんだ秀作集。》
ダシール・ハメット『血の収穫』創元推理文庫・1959年
《コンティネンタル探偵杜支局員のおれは、小切fを同封した事件依頼の手紙を受けとって、ある鉱山町に出かけたが、人れちがいに依頼人が銃殺された。利権と汚職とギャングのなわばり争い、町はふきみな殺人の修羅場と化した。その中を、非情で利己的なおれが走りまわる……。リアルな性格描写、簡潔な話法で名高い、ハードボイルドの先駆的名作!》
マイケル・ハート『ドゥルーズの哲学』法政大学出版局・2013年
《ベルクソンの存在論、ニーチェの倫理学、スピノザの政治学に根源的な展開を見せるドゥルーズ前期哲学の意図とその実践的思考を読み解く。ドゥルーズの好入門書。》
鮎川哲也『偽りの墳墓』角川文庫・1979年
《ある温泉街で起きたみやげ物屋のおかみ殺害事件。屍体は鴨居にぶら下げられ首吊り自殺にみせかけられていた。
まず上がった容疑者は、殺された細君に多額の保険をかけていた店の主人捨松。が、彼はこともあろうに事件当夜は、愛人宅にいたというアリバイを持っていた。
そして、まもなく起きた第二の殺人。被害者は、捨松の身辺を洗っていた美人保険調査員だった。さらに深まる捨松への容疑。だが、捜査線上には新たにフウテンのお小夜等の暗躍が浮かんできた。絡んだ事件の真相を解くために、丹那、鬼貫の名コンビの名推理が始まる。推理界の鬼才、鮎川哲也が贈る傑作本格推理!》
福永武彦『風土』新潮文庫・1972年
《関東大震災と第二次大戦の勃発という二つの運命的な九月一日にはさまれた16年間を背景に、画家桂と彼が片時も忘れ得なかった昔の恋人三枝夫人とのゆきちがった愛の行方を追求する。日本という特殊な風土に育った芸術家の愛と生の悲劇を主題に、世界史の動乱のさ中で芸術家が味わわねばならなかった苦悩を描き、人生の深淵にせまる野心作。10年を費やし、著者の文学的出発をなす長編。》
大川玲子『聖典「クルアーン」の思想―イスラームの世界観』講談社現代新書・2004年
《ユダヤ教・キリスト教への愛憎、運命観、社会の規範…ムスリムの聖典を読み解き、真のイスラーム理解へ誘う。》(「BOOK」データベースより)
阿部和重『クエーサーと13番目の柱』講談社・2013年
《元写真週刊誌の記者・タカツキリクオは、謎の雇い主カキオカの依頼のもと「Q」と呼ばれるアイドルのパパラッチを行う、モニタリングチームの一員。最新機器を駆使し、綿密なチームプレイで最新のターゲット、EDのミカを追い詰めてゆく。ところが、新たにメンバーに加わったニナイケントという男が少しずつ不審な動きを見せてきたのと同時に、チームのメンバーたちが次々と何者かの襲撃を受け始める。敵の正体もわからないまま、一転して追われる側になったタカツキが取った行動とは―。》(「BOOK」データベースより)
『クエーサーと13番目の柱』 (阿部和重 著) | 著者は語る - 週刊文春WEB
コーマック・マッカーシー『チャイルド・オブ・ゴッド』早川書房・2013年
《レスター・バラード。暴力的な性向を持った彼は、家族を失い、家を失い、テネシーの山中で暮らしはじめる。次第に社会とのつながりさえ失われていくなか、彼は凄惨な犯罪に手を染める。ピュリッツァー賞を受賞したアメリカの巨匠が、極限的な孤独と闇を、詩情あふれる端整な筆致で描き上げた傑作。》(「BOOK」データベースより)
皆川博子『少年十字軍』ポプラ社・2013年
《13世紀、フランス。“天啓”を受けた羊飼いの少年・エティエンヌの下へ集った数多の少年少女。彼らの目的は聖地エルサレムの奪還。だが国家、宗教、大人たちの野心が行く手を次々と阻む―。直木賞作家・皆川博子が作家生活40年余りを経て、ついに辿りついた最高傑作。》(「BOOK」データベースより)
安田喜憲『気候変動の文明史』NTT出版・2004年
《異常気象は、文明崩壊の予兆か?巨大災害の世紀をを生き抜くために今こそ読んでおきたい、緊急提言の書。気候変動と文明の興亡との大いなる関係を明かす。》(「BOOK」データベースより)
植田実『集合住宅物語』みすず書房・2004年
《住まわれた歳月から、「建築」が見えてくる。同潤会アパートから代官山ヒルサイドテラスまで、首都圏の代表的な集合住宅を集大成。東京地誌、生活史としての建築遺産の記録。》(「BOOK」データベースより)
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Brahms Symphony No 2 D major NDR Sinfonierorchester C von Dohnanyi
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