一昨日、ワタリウム美術館の寺山修司展関連イベントに呼ばれて俳句の朗読をやってきた。
以前ドキュメンタリーを撮ってもらった『Edge2』スタッフからの誘いで、今回の朗読イベントも番組化するとのこと。
電話をもらったときに、つい最近寺山についての句を大量に読んだようなと第一句集『革命前夜』を出したばかりの澤田和弥さんを思い出して紹介してみたら、熱烈な寺山ファンの澤田氏、開催数日前の急な話だったにもかかわらず浜松から上京し、参加してくれた(しかも膝が悪いとのことで杖をつきながら)。
澤田氏のは、思いのたけを込めたという感じの絶叫型朗読だった。
私は、俳句というのは耳で聴いても意味がわかりにくいし朗読には本来向かないのだがなどとブツクサ言っていたら、スタッフが落語の演目用のめくり台のような形の字幕を当日用意してくれたので、それを見せながら寺山修司の『花粉航海』収録句を21句と、自作は追悼句を1句だけ、ごく淡々と朗読した。
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目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹 寺山修司
ラグビーの頬傷ほてる海見ては
父を嗅ぐ書斎に犀を幻想し
林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき
土曜日の王國われを刺す蜂いて
母は息もて竈火創るチェホフ忌
流すべき流灯われの胸照らす
大揚羽教師ひとりのときは優し
便所より青空見えて啄木忌
同人誌は明日配らむ銀河の冷え
花売車どこへ押せども母貧し
わが夏帽どこまで転べども故郷
かくれんぼ三つかぞえて冬となる
母とわが髪からみあう秋の櫛
黒人悲歌桶にぽっかり籾殻浮き
父と呼びたき番人が棲む林檎園
枯野ゆく棺のわれふと目覚めずや
方言かなし菫に語り及ぶとき
倒れ寝る道化師に夜の鰯雲
ランボーを五行とびこす恋猫や
法医學・櫻・暗黒・父・自瀆
*
悼一句
切り貼り出来ぬ臓器よ青空鷹の形 悦史
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終電がなくなるので、自分の出番が終わるなり慌てて退出。
後半は見られなかった。
ところで澤田さんと待ち時間にコーヒー飲みつつ話していて、筑紫磐井さんの『21世紀文芸時評』刊行がどうも意外と知られていないらしいことに気がついた。
「俳句四季」に10年にわたって連載されている時評の単行本化なので、いわゆる“平成無風”後半期の俳句史的トピックを通覧するのに適し、巻末にはこの10年の俳句略年譜も付く。
本文だけで584ページもある厚い本なのに、ほぼ文庫サイズでパルプ紙を使い、定価は952円に抑えてある。
2,000円以上もする本など若い人は月に何冊も買うわけにはいかないし、次に本を作る機会があったらこういう造本でいいのではないかとも思った。
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Conte de la Variole (Shuji Terayama) 3/3
展覧会場で流れていたこの映像を見て、白人男女3人連れの客がなぜか笑い転げていた。
以前ドキュメンタリーを撮ってもらった『Edge2』スタッフからの誘いで、今回の朗読イベントも番組化するとのこと。
電話をもらったときに、つい最近寺山についての句を大量に読んだようなと第一句集『革命前夜』を出したばかりの澤田和弥さんを思い出して紹介してみたら、熱烈な寺山ファンの澤田氏、開催数日前の急な話だったにもかかわらず浜松から上京し、参加してくれた(しかも膝が悪いとのことで杖をつきながら)。
澤田氏のは、思いのたけを込めたという感じの絶叫型朗読だった。
私は、俳句というのは耳で聴いても意味がわかりにくいし朗読には本来向かないのだがなどとブツクサ言っていたら、スタッフが落語の演目用のめくり台のような形の字幕を当日用意してくれたので、それを見せながら寺山修司の『花粉航海』収録句を21句と、自作は追悼句を1句だけ、ごく淡々と朗読した。
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目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹 寺山修司
ラグビーの頬傷ほてる海見ては
父を嗅ぐ書斎に犀を幻想し
林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき
土曜日の王國われを刺す蜂いて
母は息もて竈火創るチェホフ忌
流すべき流灯われの胸照らす
大揚羽教師ひとりのときは優し
便所より青空見えて啄木忌
同人誌は明日配らむ銀河の冷え
花売車どこへ押せども母貧し
わが夏帽どこまで転べども故郷
かくれんぼ三つかぞえて冬となる
母とわが髪からみあう秋の櫛
黒人悲歌桶にぽっかり籾殻浮き
父と呼びたき番人が棲む林檎園
枯野ゆく棺のわれふと目覚めずや
方言かなし菫に語り及ぶとき
倒れ寝る道化師に夜の鰯雲
ランボーを五行とびこす恋猫や
法医學・櫻・暗黒・父・自瀆
*
悼一句
切り貼り出来ぬ臓器よ青空鷹の形 悦史
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終電がなくなるので、自分の出番が終わるなり慌てて退出。
後半は見られなかった。
ところで澤田さんと待ち時間にコーヒー飲みつつ話していて、筑紫磐井さんの『21世紀文芸時評』刊行がどうも意外と知られていないらしいことに気がついた。
「俳句四季」に10年にわたって連載されている時評の単行本化なので、いわゆる“平成無風”後半期の俳句史的トピックを通覧するのに適し、巻末にはこの10年の俳句略年譜も付く。
本文だけで584ページもある厚い本なのに、ほぼ文庫サイズでパルプ紙を使い、定価は952円に抑えてある。
2,000円以上もする本など若い人は月に何冊も買うわけにはいかないし、次に本を作る機会があったらこういう造本でいいのではないかとも思った。
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Conte de la Variole (Shuji Terayama) 3/3
展覧会場で流れていたこの映像を見て、白人男女3人連れの客がなぜか笑い転げていた。
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