2013年
三省堂
佐藤栄作『見えない文字と見える文字―文字のかたちを考える』は、早稲田大学での『早稲田日本語研究』創刊20周年シンポジウムで話した(話したかった)内容が時間内に収まりきらず、一冊にまとまったという書物。
このとき著者が話したテーマは「正しい」日本語と現実の日本語についてだった。
現実にあるにもかかわらず制度的に見えなくなっている日本語の現状にスポットを当てた一冊で、書き間違えや読み間違えのもととなる雑な書き方の字(「ツ」のような「シ」)から、それを書いた人間が字形をどう理解しているのかを分析したり、現在の漢字テストでは大部分がバツになってしまう漱石の自筆原稿の用字法を分類してみたり、『VOW2 現代下世話大全』から、日本語が読めない作業員による奇怪な説明書(「お楽しみ」が「す樂しみ」になっていたりする)から、作業員は繁体字を使う中国系の人と推測したりと、ワープロ・パソコン以降の打ち文字による字形認識変化を考えたりと、いろいろな話題が取り上げられていて、れっきとした学術書ではあるのだがすらすら読める。
字源をたどったり、「正しい」文字に照らして誤りを裁断したりという本ではない。その辺はかなりリベラルなようで、現実に生起し続けるエラーを字形認識の考察に活用している。
ちなみに著者は俳人佐藤文香の実父。
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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Talking Heads - Love For Sale
三省堂
佐藤栄作『見えない文字と見える文字―文字のかたちを考える』は、早稲田大学での『早稲田日本語研究』創刊20周年シンポジウムで話した(話したかった)内容が時間内に収まりきらず、一冊にまとまったという書物。
このとき著者が話したテーマは「正しい」日本語と現実の日本語についてだった。
現実にあるにもかかわらず制度的に見えなくなっている日本語の現状にスポットを当てた一冊で、書き間違えや読み間違えのもととなる雑な書き方の字(「ツ」のような「シ」)から、それを書いた人間が字形をどう理解しているのかを分析したり、現在の漢字テストでは大部分がバツになってしまう漱石の自筆原稿の用字法を分類してみたり、『VOW2 現代下世話大全』から、日本語が読めない作業員による奇怪な説明書(「お楽しみ」が「す樂しみ」になっていたりする)から、作業員は繁体字を使う中国系の人と推測したりと、ワープロ・パソコン以降の打ち文字による字形認識変化を考えたりと、いろいろな話題が取り上げられていて、れっきとした学術書ではあるのだがすらすら読める。
字源をたどったり、「正しい」文字に照らして誤りを裁断したりという本ではない。その辺はかなりリベラルなようで、現実に生起し続けるエラーを字形認識の考察に活用している。
ちなみに著者は俳人佐藤文香の実父。
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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