栗林浩『俳人 澁谷道―その作品と人』

2013年
書肆アルス（非売品）

　栗林浩『俳人 澁谷道―その作品と人』は、昨年『澁谷道俳句集成』で蛇笏賞を取った大正15年（1926年）生まれの女性医師俳人の来歴、各句集ごとの作風の変遷、代表句をコンパクトに紹介。新書版、本文111ページ。

　澁谷道当人による編著『あるいてきた』（私家版）を別にすると、一冊にまとまった澁谷道に関するスケッチとしては最初のものか。

　来歴では、当人の生まれ育ちの他、澁谷家の先祖が「奥の細道」の旅にあった芭蕉と曾良を泊めていること、師事した平畑静塔、橋閒石、金子兜太との関わり等が紹介される。

　「複雑なのが好きなんです。複雑な中に一本の筋が、光が見えてくる。消えないで見せてくれている。繋がっていて千切れそうで、でも千切れないで……。よく見ると変身している。マジックみたいな、それが五七五でぴたっと言いえたとき、そんな句が時たまですが、一冊の句集に一句くらい出来ますかねえ……」（著者による聞き書き）

　巻末に第10回現代俳句大賞受賞時の自選80句と、『俳句集成』の「未刊句集」から栗林浩が抽出した20句を収録。


雪しづか碁盤に黒の勝ちてあり　　　澁谷　道「未刊句集」から

庭梅をあまり凝視めて枯らしけり

いのちなり花の霞の棚にねて






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Sofia Gubaidulina "Serenade"(1969), Nataly Makovskaya-guitar