2012年
マルコボ.コム
ツイッターでなじみの鈴木牛後さんが句集『根雪と記す』を出した。
第1回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」の最優秀作品として刊行されたもので、判型はCDジャケットほどのサイズ。
鈴木さんは1961年生まれで、北海道で酪農を営んでいる。生活の中から生まれた句がまとめられているが、ことさら労働や風土の厳しさが強調されるわけでもなく、むしろ穏やかで柔らかな詠みぶりから立ち上がる感覚的清新さが持ち味。
寒明の飛び散る乳のほの甘き
歯車の濡れて動かぬ雪解かな
初蝶は牛舎の隅の暗きより
かげろふに濡れて仔牛の生まれ来る
雑巾をミシンの進む日永かな
牛乳に溶く春光の五千粒
蜘蛛潰す音次の日もそこにある
牛死して高く掲げる夏の月
風鈴に隣る電撃殺虫器
零したる軽油たちまち虹捕ふ
牛糞を吸うて汚れぬ夏の蝶
家族より歯ブラシ多し夏の果
満月や牛の数だけある怖れ
みづうみに林檎の沈む透明度
率直な言い方の向こうに、暮らしの中に点在する物たち(「飛び散る乳」「歯車」「牛乳」……)が確かさをもって沈んでいるのが感じられる。
標題は《根雪と記し農作業日誌閉づ》から。
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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Andras Schiff ,Plays,Johann Sebastian Bach
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