石田柊馬発行／内田真理子編集『アンソロジー「Tuzuki」』

石田柊馬発行／内田真理子編集『アンソロジー「Tuzuki」』は、石田柊馬が持っていた川柳教室が終わった後、残って活動を続けたメンバーから各30句を募ってのアンソロジー。
掲載順はくじ引きという。非売品。


格安チケット売り場は月夜茸　　　Ｓ・キャップ

口の中にはうずらやらキリンやら

風吹けば舞妓の骨が喉に立つ

何もない楕円の中の世界一


絹の靴下首都高速の記憶　　　つじきくこ

博物館の後ろに回る愛宕山

干鱈焼く母　棘残しをり


お三時にメドゥサの首さし出され　　　久恒邦子

てっぺんに喫煙室のある枯れ木

煮凝りの目玉ぬるりと創世記

くちびるがおしよせてくる昼下がり


あぶらあげあるとあんしんしてしまう　　　岩根彰子

茘枝割る鑑真和上立ち上がる

どぶ板は絶対音感持っている


よそんちの棚をひらけば深海魚　　　内田真理子

車座の真ん中に置く尖ったの

頑なに絞る鳥類研究所


冷蔵庫開けたまま光悦のＩ　　　環

タンパク的おかみさんなら曲った

ネパールで尻のかたちになった椅子

ハーレーダビッドソンいちまい貝殻骨二枚


モナリザの罅割れへちちろ虫　　　中山一新

圧倒的な安さダビデのおちんちん

殺されて大きな鈴を渡される

死刑にしますかミッフイーにしますか ※「ミッフイー」原文ママ


一夜干し母のパジャマから寝言　　　中村せつこ

フランスを食べて還ってきた鞄

桑の実をジャムにしてから出た噂


高齢者と呼ばれナスカの地上絵よ　　　石田柊馬

鉄橋に祖霊立つ夜ぞ性の部屋

牛のゐる景色に男を埋めてやる

発禁書買いに昭和へ行ったまま

コピペする度四角になるみかん




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Samuel Beckett Quad 1