2008年
あざみエージェント
倉本朝世の川柳句集『なつかしい呪文』から。
全100句の薄い本で後記などもなし。
以下「呪文Ⅰ はる」から
型紙の家楽しげに燃え始め
古代都市滅ぶ一箇の仏手柑
人吐いて家ふわふわと野に遊ぶ
以下「呪文Ⅱ なつ」から
ファスナーをおろす きれいな棘である
心臓のまわりの長い道草や
フラスコがあまたふれあう胎内区
母もその母も干潟が産んだ鳥
噴水に集まりながら消えながら
以下「呪文Ⅲ あき」から
鬱の字を縞馬のむれ通過中
空き家から大きな心音が漏れる
ミシンからずり落ちてゆく昼の姉
本体は先に夕陽を見に行った
以下「呪文Ⅳ ふゆ」から
見知らぬ人が傷口の上に立つ
温室は破裂した影でいっぱい
煮えたぎる鍋 方法は二つある
以下「呪文Ⅴ ゆめ」から
少年は少年愛すマヨネーズ
ラップごしだから戦争はなめらか
方向として破壊的なナンセンスやよりは、自分の内面にある家・家族・身体等を、そのイメージによりそって親密に敷衍したという句が多い。
飛躍に重きを置いていないので驚きはあまりなく、普段俳句を読んでいる側からすると、《ふゆというときのくちびるのかたち》からは《冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ》川崎展宏を連想するし、《地上には水と機械と生殖器》からは《水際に兵器性器の夥し》久保純夫を連想してしまう。
本全体の印象が、蕾のような慎ましやかさで、心理と感覚のはざまを足場にするという資質自体は今後も変わらないだろうが、その中で《人吐いて家ふわふわと野に遊ぶ》のような微量の不気味さをはらんだ軽みが好ましい。
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
*****************************************************
Kate Bush - Cloudbusting
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前は必須です。メールアドレスは公開されません。)
はじめまして
正剛さんの処から来ました
俳句のすごさを知りました
あの3.11を俳句に・・・
この映像は・・・
無知を盾に訊いちゃいます
なぜだかすごくおもしろかった
投稿情報: ののはな | 2012年4 月10日 (火) 23:48
ののはなさま>
はじめまして。ご来訪ありがとうございます。
動画は書いている内容とあまり関係なく、洋楽PVを中心に適当に上げています。
この回のは、ケイト・ブッシュの1985年のアルバム「愛のかたち(The Hounds of Love )」に収録されている「クラウドバスティング」という曲のPVです。
投稿情報: 関悦史 | 2012年4 月11日 (水) 11:13