2011年
リーダーズノート
マンガ本の紹介というのは、おそらく当ブログ始まって以来のことになると思う。
大学のときに美術同好会に入っていたのだが、当時1年後輩だった女性から先日急にメールが来た(こちらのメールアドレスはツイッターやブログのプロフィール欄に載せてある)。
美術部の学外展には卒業生も参加できるのだが、私ももう出展しなくなって随分経つので、下手すると10年やそこら音信不通のままだったかもしれぬ。
向こうは向こうで私が句集など出していたので驚いたらしいのだが、その後輩山下陽子さんのほうも昨年コミックエッセイを出したという。
山下陽子(原作), ヤマシタサツキ(絵)『ある日突然ダンナが手裏剣マニアになった。』なる本である。
結婚したのは知っていたが、そのダンナがなぜか手裏剣にはまって勤めも辞めてしまい、道場を開くまでにいたったらしい。
何のことだかわからないというか、藪から棒にもほどがある。
時代劇の考証に文句をつけながらテレビを見る人は珍しくないだろうが、このダンナ、手裏剣の打ち方に文句をつけたりする。
それだけならまだいいが、家で手裏剣の稽古をしていて、それが立てかけたマットを貫通し、借家の壁をボロボロにしてしまったりもする。
それだけならまだいいが、箸を持てば投げたくなり(手裏剣といえば素人が思い浮かべるのは星型の平たいものだが、ダンナがはまっているのは棒手裏剣のほうなのだ)、一緒に散歩すれば並木一本一本までの距離を目測してイメージトレーニングに励み始め、始終手裏剣の練習などしているので、同じアパートの住人から北朝鮮の殺し屋と妄想されて襲われたりもする。
道場を開くというときにはさすがに妻側も価値観の違いにキレて一時別居となったようだが、それでもそれなりに結婚生活は続いているらしい。
陽子さん(私は学生時代当然旧姓で呼んでいたので、これだと全然感じが出ないが)は、一見おっとりと上品でマイペースなヒトに見えるが、譲れない一線については意思もその表示も極めて明確というヒトでもあったので、趣味に走った挙句に価値観の違いで衝突となったら結構コワそうにも思うのだが、それぞれのマイペースぶりと、ズレっぷりもそのままに何とかやっていっているらしい。
陽子さんが原作を書いたのを、義妹がマンガに起こしたのだが、さらにこの顛末はNHKの「熱中人」でも先週放映されたという。
これだけ加工が重なったら実相・実態からずれている部分も当然少なくないだろうと常識的に思いはするが、それでもマンガを読んでいると、陽子さんだとこういう反応しそうだななどとも思うので、個人的には懐かしいやら興味深いやらであった。
結婚後にこんなわけのわからないご苦労をされているとは思わなかった。
別に無理矢理俳句方面に結びつける必要もないだろうが、こういうことをマンガにしてしまうというセンス、子規たちの俳句や写生文の“写生”の構えにも一脈通じるところがある。
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Talking Heads - And She Was
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