先日、樋口由紀子さんから届いた「バックストローク」だが、いきなり「終刊のあいさつ」(石部明)があって驚いた。
震災発生間もない4月に「バックストローク」岡山大会の選者に呼んでいただいて、大勢の川柳作家たちと一堂に会する機会をもらったことが懐かしく思い出される。たしかにそのとき、雑誌の後継体制をどうするかといった話を耳にした気はするが、年内に終刊してしまうとは思っていなかった。
川柳界全体の状況というのがよくわからないのだが、「バックストローク」は単なる同人誌というよりも、規模といい、内容といい、総合誌に近い役割を果たしてきたのではないかという印象もある。
実際この終刊号掲載のシンポジウム「川柳が文学になるとき」でも川柳というジャンルの自己規定が探られ、アンソロジーの必要が語られたりもしていて、こういうことに向き合ってきた川柳誌は、他にもあるのかもしれないが、個人的にはほとんど見たことがない。
「終刊のあいさつ」によると石田柊馬と石部明が中心の「バックストローク」はここに終刊とするとあり、誌名自体は残らないようだが、次の胎動が始まっている感じもする。
青痣のよくよく見れば九月なり 樋口由紀子
とある日のコネティカットの焼き魚 小池正博
アメリカンコーヒーに浮く青い鳥 湊 圭史
保冷庫にかつては神であったもの 筒井祥文
さわさわと手の生まれくる水の月 富山 悠
くれないの路地で貴人が靴を履く 清水かおり
戦犯をトリプルAに格上げす 丸山 進
砕けつつ玉はおはぎを意識する きゅういち
なみなみとちあきなおみを江戸切子 くんじろう
大の字を燃やし尽して蝉の殻 重森恒雄
長話が嫌いな雲形定規たち 田中博造
長い長い長い無蓋車 渚にて 石田柊馬
鋳型から次々産まれる海月 前田ひろえ
かき混ぜてみる水に浮く大鳥居 石部 明
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William Forsythe - One flat thing reproduced 01/03
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