「小熊座」2010年9月号

　「小熊座」2010年9月号は、新しく神野紗希による「『黙示』を読む」の連載が始まった。今回はイントロダクションだが、富澤赤黄男の中でも評価の定まらない最後の句集『黙示』の句を順番に読んでいく予定だという。


星雲になりたき田螺・蜷・栄螺　　　高野ムツオ

七夕や子なき声なき家ばかり　　　阿部宗一郎

新宿の何処から見ても月は月　　　高橋彩子

白藤は乳房のやうにほの揺れて　　　田中　満

産道は真っ暗闇の青葉かな　　　関根かな

涼しかりきとモロッコの砂手渡さる　　　我妻民雄

あぢさゐや終の藍なら海の藍　　　浪山克彦

幻想が鞄の重さ夏の旅　　　佐藤成之

人体という借物が炎えている

飯を食ふ天の川より戻りては　　　上野まさい

涼しきはギリシア文字のくびれかな　　　渡部州麻子