「円錐」(発行所・澤好摩)第46号・2010年秋の特集は「平成における無季俳句」。
《何で今、無季俳句か、不思議に思う人もいるかもしれない。今日の俳壇は総保守化の傾向にあり、有季定型を何ら疑わぬ人が増えている。故に、今一度、俳句表現史にあって無季俳句の世界を確認し、かつ現状を問うものである。それは、かつて繰り返された俳壇的な有季無季論争のレベルに止まらず、俳句形式の根幹に関わる無季の認識を掘り下げるものでありたい。次号も続けて掲載予定。》(「編集後記」より)
作品は全体に主知性を経た婆娑羅ぶりといった趣き。
我が死後は土砂降りならむユーラシア 横山康夫
はじめに笑ふ山に大方名はあらず
幽谷を出て荒涼と虹立ちぬ
蝸牛宴の半ばを戻りけり 荒井みづえ
麦の秋大風呂敷が立ち上がる 大和まな
山椒魚雑魚寝してまだ雑魚なりし
生まれ変って円虹を吹く鬼に しば丙夜
朧夜は必ず猫がゐなくなる 栗林 浩
遠くから空壜犬に見つめらる 江川一枝
こがねむし水飴売るに棹秤 伊藤華将
戦前の黒揚羽来て囁けり 味元昭次
春愁や大正硝子に歪む貌 小倉 紫
狛犬におうちはなくて花の雨 山田耕司
葉桜や紐につめたき竿があり
黒猫のぴかぴかといる春惜しむ 斎藤康子
サロメの忌剥製の鳥だけの家 今泉康弘
海を知らぬ祖母に鯨のやうな雲
悪霊のおった古木を見失う 矢上新八
百合の蘂電子ロックの強さほど 佐藤獅子夫
七月の塩はみずから溶けはじむ 橋本七尾子
洞深く朽ちそびれしが御神木 入船誠二
スカイツリーの位置確かむる梅若忌 和久井幹雄
展げざる掛軸は棒四月馬鹿 澤 好摩
うららかや崖をこぼるる崖自身
なお今泉康弘氏は先頃、第12回俳句界評論賞を「ドノゴオトンカ考―高柳重信の出発」で受賞。
《何で今、無季俳句か、不思議に思う人もいるかもしれない。今日の俳壇は総保守化の傾向にあり、有季定型を何ら疑わぬ人が増えている。故に、今一度、俳句表現史にあって無季俳句の世界を確認し、かつ現状を問うものである。それは、かつて繰り返された俳壇的な有季無季論争のレベルに止まらず、俳句形式の根幹に関わる無季の認識を掘り下げるものでありたい。次号も続けて掲載予定。》(「編集後記」より)
作品は全体に主知性を経た婆娑羅ぶりといった趣き。
我が死後は土砂降りならむユーラシア 横山康夫
はじめに笑ふ山に大方名はあらず
幽谷を出て荒涼と虹立ちぬ
蝸牛宴の半ばを戻りけり 荒井みづえ
麦の秋大風呂敷が立ち上がる 大和まな
山椒魚雑魚寝してまだ雑魚なりし
生まれ変って円虹を吹く鬼に しば丙夜
朧夜は必ず猫がゐなくなる 栗林 浩
遠くから空壜犬に見つめらる 江川一枝
こがねむし水飴売るに棹秤 伊藤華将
戦前の黒揚羽来て囁けり 味元昭次
春愁や大正硝子に歪む貌 小倉 紫
狛犬におうちはなくて花の雨 山田耕司
葉桜や紐につめたき竿があり
黒猫のぴかぴかといる春惜しむ 斎藤康子
サロメの忌剥製の鳥だけの家 今泉康弘
海を知らぬ祖母に鯨のやうな雲
悪霊のおった古木を見失う 矢上新八
百合の蘂電子ロックの強さほど 佐藤獅子夫
七月の塩はみずから溶けはじむ 橋本七尾子
洞深く朽ちそびれしが御神木 入船誠二
スカイツリーの位置確かむる梅若忌 和久井幹雄
展げざる掛軸は棒四月馬鹿 澤 好摩
うららかや崖をこぼるる崖自身
なお今泉康弘氏は先頃、第12回俳句界評論賞を「ドノゴオトンカ考―高柳重信の出発」で受賞。
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