主宰本井英による「虚子への道」の連載の他、高橋睦郎による第1回こもろ日盛俳句祭記念講演その2「死と仲よく」等を掲載。
手に持ちて笏とは重し花の昼 本井 英
嘴の尖の蚯蚓のくねる見ゆ
剪定の小枝積まれて絡みあひ 山内裕子
春光やどこ歩きても水の音 児玉和子
陶土採る日当る山の笑ひ初む 長浜好子
宗鑑の碑より椿の坂道を 金丸節子
本殿の裏にブランコ落椿 木下典子
天ぷらの薄きころもや蕗の薹 佐野公子
入院の渡り廊下や残り雪 深瀬啓司
以下は課題句の欄から。この号の題は「鯵」で、主宰ではなく杉原祐之の選を経ている。
地方都市同じ形の鯵フライ 辻 梓渕
道半分占領しつつ鯵を干す 小林一泊
鯵焼いて一汁二菜整ひぬ 遠藤房子
お造りを鯵の骨身に盛り付くる 前北かおる
小鯵干す居酒屋勝手口の前 岡本春子
3頁(鑑賞を入れれば6頁)ほど鯵の句ばかり並ぶ。
こういうのは鯵が食いたくなるので困る。
高橋睦郎の講演「死と仲よく」には《もちろんヨーロッパにも著名な文人や政治家で辞世を残した例はあります。例えば古代ローマで最も偉大な皇帝と言われるハドリアヌスという人が死の数日前に書いた数行の詩、これは本当に傑作です》として、そのテクストが載っているマルグリット・ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』(多田智満子訳)が話の枕に紹介されていたりもし、これも積読のままだったと、こちらも読みたくなる。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。