閑中俳句日記（別館） －関悦史－

「らん」no.49 spring 2010

　「らん」no.49 spring 2010の句から。
　次号予告が出ていて、次号50号は記念号。内容、体裁ともに通常とは全く異なるものとなるらしい。


鼻の奥で記憶は白く匂う　　　五十嵐進

白じらと真綿で絞める死海文書　　　丑丸敬史


　　以上は、テーマ「白」の題詠欄から。


湧く水の泉の中に豆腐あり　　　伊東聖子

白玉が珈琲と逢う四月かな　　　海上晴安

正午です蛤と霊入れかわる　　　金子　彩

雁帰る電話ボックス燈るころ　　　嵯峨根鈴子

チェンバロのどの音かが冬　春遅し　　　高野射手男

そのマスク林檎を食みし歯を隠し　　　中村光三郎

人参とエンジン近し鳥雲に　　　鳴戸奈菜

紅顔の髑髏に触れし蜆蝶　　　藤田守啓

「藍生」2010年5月号

　「藍生」2010年5月号の句から。


梅園を巡る男と下駄の女　　　磯部游子

金泥で継ぎし器にお白酒　　　三好美津子

旧仮名の地図を見てゐる建国日　　　畠山一美

電線の四方八方囀りぬ　　　鐘井寿子

かの子の忌取り壊し初む大正館　　　藤田美江

淡雪の小さき石を囲みをり　　　後藤友子

らんたんを映す春川鯉の列　　　福山和枝

あたたかや放射状なるパリの地図　　　中田知惠子


車椅子青年俳人花浴びよ　　　黒田杏子

死者の数ほどひらきつぐ山櫻

はなびらのひかりことのはのひかりと

「澤」2010年6月号

　「澤」2010年6月号の特集は《角川賞相子智恵と新撰21》。
　相子智恵と師・小澤實の対談《いのちとは何か／「第55回角川俳句賞」受賞作品を読む》にところどころ師弟関係の緊張感が漂う。


われを憎む誰誰死ぬるほととぎす　　　高橋睦郎

床下の鶏に餌雪雫　　　小澤　實

さよりの骨は犬の餌なり残してくれ

打ち上げられ寄居虫しかと砂洲に立つ　　　清水秀男

高齢大学高座古事記や花の冷　　　岸トミ子

花時やカツ丼の蓋閉ぢきらず　　　相子智恵

やどかりの殻に泡つぶ波引きて　　　天野正子

踊り場にピカソの額や赤絨毯　　　湯浅萬里子

荷台には茶摘みがへりの婆五人　　　川上弘美

まんさくや木椅子に啜るカップ麺　　　眞瀬雪延

眼張煮て皿に移すや鍋に目玉　　　結城あき

居酒屋の壁ジャンパーを掛けつらぬ　　　生井敏夫

春塵を付ける眼鏡や星を見る　　　梶　倶認

春風や自転車を漕ぐハイヒール　　　望月とし江