ふらんす堂
2008年
榎本好宏『祭詩』は今年の俳人協会賞受賞句集。
書名『祭詩』は中国唐代の詩人賈島(かとう)が大晦日に己の詩を祭った故事から。賈島は例の「推敲」という熟語の元となった人物で己の詩への執着と苦吟の印象が強い。それを敢えて標題に据えた。石鼎の妖気とはまた別だが、粘着力に富んだ句に印象的なものが多い。
独活食うて世に百尋も後れけり
天山へ春の鷹とし巣立ちけり
幹濡らし竹を撓めて虎が雨
押し黙ることのすがしき桜の実
氷旗太宰入水の日なりけり
煙りては山けぶりては滴りぬ
角切りの鹿の埃や墨買ひに
瓦みな南風(やうづ)光りや日本海
月の出に折り鶴ひとつ適ひけり
春潮の礁乾けば石叩
志功描く釈迦の弟子みな素足にて
欲といふ薄れゆくもの冬帽子
鎌倉の斑雪を谷(やつ)に見上げては
墓ばかり見せらる梅の東慶寺
藍染の藍の流るる霾ぐもり
山菜のくさぐさ姉のやうな人
泡盛の氷よう鳴る大夕焼
酒冷すこともけふまで鰯雲
2008年
榎本好宏『祭詩』は今年の俳人協会賞受賞句集。
書名『祭詩』は中国唐代の詩人賈島(かとう)が大晦日に己の詩を祭った故事から。賈島は例の「推敲」という熟語の元となった人物で己の詩への執着と苦吟の印象が強い。それを敢えて標題に据えた。石鼎の妖気とはまた別だが、粘着力に富んだ句に印象的なものが多い。
独活食うて世に百尋も後れけり
天山へ春の鷹とし巣立ちけり
幹濡らし竹を撓めて虎が雨
押し黙ることのすがしき桜の実
氷旗太宰入水の日なりけり
煙りては山けぶりては滴りぬ
角切りの鹿の埃や墨買ひに
瓦みな南風(やうづ)光りや日本海
月の出に折り鶴ひとつ適ひけり
春潮の礁乾けば石叩
志功描く釈迦の弟子みな素足にて
欲といふ薄れゆくもの冬帽子
鎌倉の斑雪を谷(やつ)に見上げては
墓ばかり見せらる梅の東慶寺
藍染の藍の流るる霾ぐもり
山菜のくさぐさ姉のやうな人
泡盛の氷よう鳴る大夕焼
酒冷すこともけふまで鰯雲
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