同人誌「狼」第32号(2009年12月)から句を抄出する。
「狼」はオオカミではなくロウと読む。
火気厳禁白鷺は炎えている 大沢輝一
頭痛薬なるほど梅雨の明けにけり 岡村知昭
断言や夕立のなか営林署
八月の雨より国の夥し
肩こりのこどもばかりや冷房車
乱読の疲れに枇杷の明りかな 小池弘子
目を開けて夜の新樹が泣いていた 佐孝石画
ジャングルジムで空蝉は溺れてしまう
朝顔はあかりを灯す旅の途中
猫といて秋の裂け目を見ていた
理髪店に時雨を置き忘れてきた
立冬の電線くーんと眠っている
おむすびの中のつめたし八重桜 関戸美智子
流木をひきずっている春の暮
空気澄む大ひまわりへ眼帯す
葛の蔓道が一本また消えた 舘百合子
魚の腸しゃがんでかえす夏の海
滑稽とは悲哀と気付く俺の線路 中内亮玄
潰れた缶ビールの缶を捨てるに捨てられず晩夏
客ひとり中華屋の旗が秋めく 阿木よう子
チベットの蕎麦種一面に開花
熱帯夜葉脈に沿って散歩する 油本麻容子
乾物屋土間に平たい夏の猫
以上通常の五七五の句の他に「実験室 七七の世界」というコーナーがあり、こちらにも同人諸氏のほとんどが出句。
火を焚いている野のひと日終え 小池弘子
母の手縫いのようなこおろぎ 大沢輝一
次の一手や鰯雲ゆく 油本麻容子
長すぎる夜チンパンジー座す 中内亮玄
馬を叱りにしろがねの雨 岡村知昭
ひとくち甘し捥ぎたての柿 関戸美智子
めだかの池に雲流れゆく 舘百合子
蕎麦打つと呼ばれ山へ急ぐ 阿木よう子
特集記事は、《中内亮玄句集「眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ」を読む》で、同人の一人、中内亮玄が2009年5月に発行した第一句集を読む企画。
同人たちの評文の中に引用されている句だけ拾うと
夜長かなふたりの肌の冷たくなる 中内亮玄
かさぶたを桜のようにはがします
山眠るあなたも狐の仲間ですか
雪はたぶん降りたくて振る胎児
雲集め袋いっぱいの独り
彼方まで白線引けば遺書になり
厚いステーキ君を切り分けるように
静けさや一重まぶたの月もある
と若々しい叙情性の句が並び、定型感のゆるやかさと相俟って、今のところ危うさも魅力になり得ている印象。発行狐尽出版、定価1,500円とあるが、ウェブ上ではほとんど情報が見当たらず、入手は難しそう。
「狼」はオオカミではなくロウと読む。
火気厳禁白鷺は炎えている 大沢輝一
頭痛薬なるほど梅雨の明けにけり 岡村知昭
断言や夕立のなか営林署
八月の雨より国の夥し
肩こりのこどもばかりや冷房車
乱読の疲れに枇杷の明りかな 小池弘子
目を開けて夜の新樹が泣いていた 佐孝石画
ジャングルジムで空蝉は溺れてしまう
朝顔はあかりを灯す旅の途中
猫といて秋の裂け目を見ていた
理髪店に時雨を置き忘れてきた
立冬の電線くーんと眠っている
おむすびの中のつめたし八重桜 関戸美智子
流木をひきずっている春の暮
空気澄む大ひまわりへ眼帯す
葛の蔓道が一本また消えた 舘百合子
魚の腸しゃがんでかえす夏の海
滑稽とは悲哀と気付く俺の線路 中内亮玄
潰れた缶ビールの缶を捨てるに捨てられず晩夏
客ひとり中華屋の旗が秋めく 阿木よう子
チベットの蕎麦種一面に開花
熱帯夜葉脈に沿って散歩する 油本麻容子
乾物屋土間に平たい夏の猫
以上通常の五七五の句の他に「実験室 七七の世界」というコーナーがあり、こちらにも同人諸氏のほとんどが出句。
火を焚いている野のひと日終え 小池弘子
母の手縫いのようなこおろぎ 大沢輝一
次の一手や鰯雲ゆく 油本麻容子
長すぎる夜チンパンジー座す 中内亮玄
馬を叱りにしろがねの雨 岡村知昭
ひとくち甘し捥ぎたての柿 関戸美智子
めだかの池に雲流れゆく 舘百合子
蕎麦打つと呼ばれ山へ急ぐ 阿木よう子
特集記事は、《中内亮玄句集「眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ」を読む》で、同人の一人、中内亮玄が2009年5月に発行した第一句集を読む企画。
同人たちの評文の中に引用されている句だけ拾うと
夜長かなふたりの肌の冷たくなる 中内亮玄
かさぶたを桜のようにはがします
山眠るあなたも狐の仲間ですか
雪はたぶん降りたくて振る胎児
雲集め袋いっぱいの独り
彼方まで白線引けば遺書になり
厚いステーキ君を切り分けるように
静けさや一重まぶたの月もある
と若々しい叙情性の句が並び、定型感のゆるやかさと相俟って、今のところ危うさも魅力になり得ている印象。発行狐尽出版、定価1,500円とあるが、ウェブ上ではほとんど情報が見当たらず、入手は難しそう。
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