俳句時評コーナーに「『新撰21』の行方」(渡辺誠一郎)の記事あり。《翻って今回の若い世代の俳句世界を見るに、形式の懐疑性は希薄のように感じられた。(中略)信頼とも違う〈所与〉の存在としての俳句がまずありきの世界のようだ。それはそのままテーマ性の希薄さに繋がっていくように思える》(p.17)。
空腹のどこかに銀杏黄葉散る 高野ムツオ
雪催塩煎餅が割れてより
白菜に橋閒石の匂ひあり 大澤保子
兄の骨さくさく崩る霜柱 青野三重子
綿虫と横光利一の眼鏡かな 阿部菁女
火口湖へ行かうと誘ふ大綿よ 森黄耿
青空が薄刃のやうだ風邪ごこち 渡部州麻子
枯菊の火の粉は星になりたがる 福原栄子
古里は捥ぐ人のなき柿の色 秋元幸治
方位なき海となりたる鯨かな 渡辺誠一郎
運河にて海月げらげら笑ひけり 橘澪子
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