立風書房
1995年
丸谷才一が14年前に出した古希記念句集がたまたま手に入った。丸谷才一は1925年8月27日生まれで現在84歳、三島由紀夫(1925年1月14日)、安部公房(1924年3月7日)などとほぼ同年配にあたる。
ある時期以降、丸谷才一の本というのは出たときは話題になるが残らないという動きが顕著になってきた気がするが、この句集も出たときはそれなりの注目を集めた。
古希の記念に「齢の数だけの句を拾つて知友に配ろうと思ひ立」って大岡信の選句、和田誠の装幀、宗田安正の編集で成ったもので、丸谷才一は中学生のころ現代俳句に熱中し、楸邨と波郷を好んだという。
仮縫で二三歩あるく春着かな
紅梅や顔みな違ふ羅漢たち
この家の雛おほきくて昔顔
永き日や車内のひげの品さだめ
闇に置けば呪文つぶやく蜆かな
蛇の出た穴大きくて武蔵ぶり
新刊のきらきらしさや今年蛇
新潟古町にて
兄いもと違ふ解き方笹団子
晝飯に鮎三匹の長者ぶり
ところてんあの国宝の瀧おもふ
あぢさゐを提げて家移り坂の下
犬たちも頭かゆかろ梅雨のまち
神保町喫茶店所見
ばさばさと股間につかふ扇かな
オクスフォードの旅宿にて
長き夜をかたみに聞かすいびき哉
夕もみぢからはじまりし宴かな
礼状に添へて
半ぜんは茶づけに加賀の今年米
しぐるるやだらだら坂の黒光り
買つて来いスパイ小説風邪薬
恵比寿にて
餅つきの杵をよけるや坂の道
五列目にて芝居を見て
討入やいろはにほまで雪の中
枕もとに本積めばこれ宝船
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