「努」(発行:小山森生)第141号(2017年12月)から。
この号から代表が小山森生に変わった。
前代表・吉井幸子死去を受けて、緊急幹事会が開かれ、次期代表を打診された小山森生が後を継いだという経緯らしい。どちらも岡井省二門下ではあるが、吉井幸子と小山森生の間には師弟関係はなかった模様。
爽やかな女盗賊のまま去れり 加藤哲也(追悼句)
大阪の月懐かしき蘆の花 小山森生(追悼句)
秋めいて影の大きな二階建 小松洋子
FMは昭和の歌を熱帯夜 木全富子
ガラス皿青紫蘇刻み新豆腐 速水如水
「里」(編集:中山奈々、副編集:小鳥遊栄樹、田中惣一郎、同人会長:仲寒蝉、発行:島田牙城)2018年1月号から
。
今日爪を切ろうと思う冬の雨 男波弘志
肉食の口のやうなる冬の橋 脇坂拓海
雪山の見えるバス停「市役所前」 小林苑を
肉親のてざはりのある炬燵かな 青本瑞季
脱がしてくれ腕が焚火のままかたい 青本柚紀
海に二人なぜといふのに冬の雲 上田信治
またも恋冬の星座をまなじりに 佐藤文香
マフラーに埋めて唇がすぐ乾く 小鳥遊栄樹
カンチョーといふ子の遊び枯芝に 島田牙城
「絵空」vol.22(2018年1月)から。
山崎祐子、茅根知子、土肥あき子、中田尚子の4人の同人誌。
霜晴の地におろされて鬼瓦 山崎祐子
白い壁はさんで咳が聞こえ来る 茅根知子
鳴き交すやうに汽笛や年暮るる 土肥あき子
水平線だけが明るし神無月 中田尚子
「らん」(発行:鳴戸奈菜、編集:五十嵐進、皆川燈、結城万)No.80(2018年1月)から。
地球儀の破片散らばり寒卵 M・M
月は西刃物は水に沈みけり 岡田一実
Googleを大きく廻し鳥渡る 片山タケ子
雨が降る赤たうがらし青たうがらし 嵯峨根鈴子
半島の白磁の壺や冬遠音 月犬
清潔な蛇を飼い居る美青年 鳴戸奈菜
鳥堕ちて炎の記憶枯野原 腐川雅明
春や春月下老人どこからか 三池 泉
シャワー熱し神かと思う巨大蜘蛛 皆川 燈
作家泰淳短編凍る深夜なり 矢田 鏃
「晴」(編集発行:樋口由紀子)vol.1(2018年1月)から。
「川柳カード」「MANO」終刊後、樋口由紀子が新たに創刊した川柳雑誌。
観覧車止まる天使の発情期 きゅういち
方舟に薄く聴こえる佐渡おけさ
暗喩には椿が五六輪欲しい 松永千秋
種明かししてる輪切りにされた人 月波与生
ぶよぶよは相当深いところまで 広瀬ちえみ
生きている気がするから怖い 水本石華
蓮根によく似たものに近づきたい 樋口由紀子
「花鳥」(発行:坊城俊樹)2018年1月号から。
山紅葉散り青空を甍へと 坊城俊樹
はな子てふ皺の記憶に降る落葉
松手入済みし梯子の長く延び 坊城中子
大樹ゆゑ切らるるといふ栗を炊く 四宮慶月
秋果盛るアルチンボルドになりきつて 岩原磁利
2018年1月邑書林
『御意』は黄土眠兎(1960 - )の第1句集。帯文:小川軽舟。
作者は「鷹」同人、「里」会員。
寒雷に原野目覚めてまた眠る
冬帽をかぶり棺の底なりき
ものの芽の一つに卓のヒヤシンス
春の人箱階段を上りけり
遠足の列に行きあふ爆心地
うかうかとジャグジーにゐる春の暮
夏兆す木工ボンド透明に
リラ冷えのシベリアへ向く鶏冠かな
笛方を待ちかねてゐる青葉かな
金魚田の金魚や泥に潜りたがる
アマリリス御意とメールを返しおく
蜘蛛の囲にかかつてばかりゐる人よ
菊人形肩より枯れてゆきにけり
秋深しギリシャ数字の置時計
さびしからずや南極の火消壺
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
2017年9月マルコボ.コム
『サヨク』は未貫(1954 - )の第1句集。
小雨ならマフラーだけで突つ走る
空つ風をぢさん横に傾いて
パルコ出て義仲寺捜す初しぐれ
雪吊りを二つ遠くに國旗かな
冬帽をかぶりて母の完成す
体より大きな若布広げる子
永き日を笑つて過ごす遺影かな
解体の終はり紫陽花淋しいか
涼しさやトライアングル打つ間合ひ
タッキーと呼ばれてみたき那智の滝
迎火の酒屋の角を曲りけり
死を前におしやべりしよう秋の夜
着替中の札も楽しや菊人形
どんぐりを握り勇気のやうなもの
水やれば蕾首振る桔梗かな
2017年12月文學の森
『鴨』は西村麒麟(1983 - )の第2句集。
作者は「古志」所属。
宝船ひらひらさせてみたりけり
平たくて大きな家や飾臼
ささやかな雪合戦がすぐ後ろ
栃木かな春の焚火を七つ見て
紫陽花や傘盗人に不幸あれ
捻れては又戻り行く蠅取紙
鰻重を真つ直ぐ伸びてゆく光
白玉にひたと触れゐて白玉よ
大いなる遅刻が一人日の盛
鴨引くや五十冊づつ本を捨て
ブータンに綺麗な王や籠枕
蘭鋳の子が水中をよぢ登る
鈴虫は鈴虫を踏み茄子を踏み
穭田の千葉が広々ありにけり
金沢の見るべきは見て燗熱し
2017年12月28~29日
撮影はK.Onomura
最近のコメント