閑中俳句日記（別館） －関悦史－

【十五句抄出】田中葉月句集『子音』

2018年7月
ふらんす堂

 

　『子音』は田中葉月（1955 - ）の第1句集。序文：秦夕美。

　著者は「豈」同人。

 

 

春あられレゴブロックの街に住み

 

白れんや空の付箋を剥がしつつ

 

大陸のゆつくりうごく春のキリン

 

白蓮や大地は胎児差し出しぬ

 

山姥の大化け小化け桜東風

 

春の海ガラスの向かうのワンピース

 

鍵穴を無数の蝶の飛び立ちぬ

 

未来世へ誘ふきらやなめくぢり

 

骨壺のガタガタ言ひぬ濃紫陽花

 

この星の老人と犬風知草

 

古本に賽の河原の明け易し

 

片時も離さぬミニカー秋の暮

 

コスモスやもうにんげんにもどれない

 

マスクしてみな美しき手術台

 

風花す銀紙ほどのやさしさに

 

 

 

※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

【十五句抄出】赤野四羽句集『夜蟻』

2018年7月
邑書林

 

　『夜蟻』は赤野四羽（1977 - ）の第1句集。

　著者は現代俳句新人賞受賞、無所属。

 

 

 

選ばれぬものの王宮花は葉に

 

巨大なラーメン並ぶ国道の雪晴

 

ゆっくりと心臓のなる蒲団かな

 

僕らしだい蛇衣はふとそう言った

 

Ｔシャツを汚した王とごろ寝する

 

三味線や白い鰻のおとむらい

 

せーのーで生贄決めて秋の風

 

世界最大の蝶あおく磔のへや

 

帝国の夢の赤貝喰いきれず

 

身の内に永劫巡らせて栄螺

 

海辺まで呼んで貝合わせの終り

 

隊列は進む蝸牛を夢みては

 

紫陽花のような自画像描くおとこ

 

乾いた袋から水が漏れる人よ

 

巨樹巨樹巨樹どこにも郵便局がない

 

 

 

※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

「港」2018年7月号

　「港」（発行：大牧広、編集：折原あきの）2018年7月号から。

 

 

おふくろの焼きし目刺しに遂に会へず　　　大牧　広

 

広告の減りゆく車内鳥ぐもり　　　衣川次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢座」第178号（2018年5月）

　「夢座」（発行人・渡邉樹音）第178号（2018年5月）から。

 

 

面伏せて摘みゐる魔界の彼岸花　　　齋藤愼爾（追悼・石牟礼道子から）

 

さみしくて深傷(ふかで)の天掃く箒草

 

墓地にひとつ大きな時計がほしい春　　　佐藤榮市

 

無人駅さるすべりの砂丘で燐寸擦る　　　森　英利

 

箸置きは青いビードロ夏兆す　　　渡邉樹音

 

 

 

 

 

「左庭」39号（2018年4月）

　詩誌「左庭」（編集発行：山口賀代子）39号（2018年4月）から。

 

 

海行かな湿疹消えぬ父連れて　　　江里昭彦

 

大陸の糞尿父にまだ臭う

 

長旅の夕餉はいつも卵焼

 

 

 

 

 

 

「ぶるうまりん」36号（2018年6月）

　「ぶるうまりん」（編集発行：山田千里）36号（2018年6月）から。

 

 

 

狐火を追いかけている深夜バス　　　生駒清治

 

深まきマフラー少年未来を吸う　　　及川木栄子

 

数列を一瞬に記憶風光る　　　齋藤　泉

 

 

 

 

 

 

 

 

【告知】「俳都松山×俳句ポスト50周年 ～秋高し俳句ポストの五十年～」（松山市民会館）

　9月29日に松山市で、また俳句対局に出ます。観覧者募集中。

 

　対戦するのは高野ムツオ、坊城俊樹、岸本尚毅、関悦史、北大路翼の5人。

 

　以下、松山市HPから。

 

　　　＊

 

　松山市では、俳都松山の俳句文化に親しんでもらうため、「俳都松山俳句ポスト」を設置しています。
　今から50年前の昭和43年、松山城長者ヶ平（ちょうじゃがなる）に第1号を設置し、現在は市内をはじめ、県外や海外など109カ所に広まっています。
　今年の俳句ポスト設置50周年を記念し、俳句ポストの歩みを紹介するトークイベントや、俳句ポストをテーマにした一対一の句合わせ対決「俳句対局」を開催します。
　観覧者を募集しています。たくさんの御応募をお待ちしています。

 

応募締切

平成30年7月23日（月曜日）（消印有効）まで
※先着順です。定員になり次第締め切ります。受付後、8月下旬に入場整理券を発送します

 

申込方法

ハガキまたはeメール（いずれもお一人様1通限り）に（1）郵便番号（2）住所（3）氏名（4）電話番号（5）申し込み人数（2名まで）を記入し、文化・ことば課までお申し込みください。
※電話での申し込みは受け付けていません
申込専用メールアドレスl：[email protected]

 

開催日時

平成30年9月29日（土曜日）　13時00分～16時00分（12時00分開場）
※開場時間は当日の準備状況等により前後する可能性がありますので、予め御了承ください

 

場所

松山市民会館　中ホール（松山市堀之内）
※駐車場が少ないため、なるべく公共の交通機関を御利用ください

 

内容

第一部　「50周年記念　俳句ポストーク！」
　出演：俳句ポスト選者・「櫟（くぬぎ）」副主宰の櫛部天思さん、俳都松山大使の夏井いつきさん

第二部　「50周年記念　俳句対局」
　俳句ポストにちなんだ題で、一対一の句合わせ対決を行います。
　解説：夏井いつきさん、進行：家藤正人（いえふじ　まさと）さん
　出演：高野ムツオ（たかの　むつお）さん、坊城俊樹（ぼうじょう　としき）さん、岸本尚毅（きしもと　なおき）さん、関悦史（せき　えつし）さん、北大路翼(きたおおじ　つばさ）さん　ほか

 

募集定員

500名

 

入場料金

無料　※入場整理券が必要です

 

 

 

 

 

 

「秋草」2018年7月号

　「秋草」（発行編集：山口昭男）2018年7月号から。

 

 

河内より人の来てをり杜若　　　山口昭男

 

山腹の甍明りや田を植うる

 

剥製の死なぬ眼や五月雨　　　三輪小春

 

考へる人の三角筋に蝶　　　丸山せんかう

 

木の家に傷の多くて夕朧　　　野名紅里

 

 

 

 

 

 

「努」第144号（2018年7月）

　「努」（発行：小山森生）第141号（2017年12月）から。

 

 

ならべ干す雨傘ふたつ花は葉に　　　小山森生

 

春霖や戦時もんぺの江戸小紋　　　木全富子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「塵風」第7号（2018年7月）

　「塵風」（発行：斉田仁）第7号（2018年7月）から。

 

 

月蝕の街に佇むひとりひとり　　　啞々砂

 

美女の骨組み老女の骨組み盆踊り　　　井口　栞

 

春月に産卵をする腐女子たち　　　伊豫

 

雪曲り来るリムジンの長さかな　　　笠井亞子

 

蛤に翅あるそんな日もありぬ　　　ことり

 

春空やシーツが遠くまで飛んで　　　小林苑を

 

眼底を女医に覗かれいて余寒　　　斉田　仁

 

玄関へ来て一対の田螺鳴く　　　佐山哲郎

 

東京タワー桃は尻から熟れはじむ　　　長谷川裕

 

いろいろの国にカレーのある朧　　　村田　篠

 

 

 

　「ことり」氏については「六花」2011年11月号が追悼特集を組んでいるのだが、同名異人か。