古本市で入手してしまったものを消化していたので、今月も娯楽小説ばかりになっている。
装幀で懐かしいのはソノラマ文庫の加納一朗(祐天寺三郎)、やサンリオSF文庫のロイド・ビッグル Jr.『沈黙は死の匂い』(加藤直之)、ドナルド・バーセルミ『口に出せない習慣、奇妙な行為』(篠田昌三)、角川文庫の片岡義男3点(装幀は竹原宏・大谷勲、竹原宏・佐藤秀明、佐藤秀明とかぶりながらもバラバラ)、筒井康隆の2点、朝日出版社のエピステーメー叢書(ル・クレジオとプーレ、装幀に使われたのはそれぞれ駒井哲郎とギュスターヴ・モロー)など。
石川英輔『如意幻術師』講談社ノベルス・1994年
《中国旅行の添乗員をしていた中国語専攻の元学生がふとしたきっかけで引き入れられた秘境――中国には古来、法術・妖術という世界がある。まじない、祈祷、おはらい、錬金術等々。斎戒沐浴・精進潔斎して秘密の解説書『如意宝冊』に従って修業を続けるうち、摩訶不思議な世界に、徐々に引き込まれていった――。》
阿佐田哲也『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝』講談社ノベルス・1986年
《殺し殺され騙し討ち、ここは地獄の一丁目。ヤバ市ヤバ町、鬼が棲む。泣いてる奴はもっと泣け、泣かしたあいつもすぐに泣く。笑う雀鬼は俺一人――。雀プロ、医者、僧侶、女ソープ経営者、ドラ大学生、警官などが繰りひろげるギャンブル・デスマッチ。スリル満点のエンターテイメント、長編新麻雀小説!》
阿佐田哲也『ヤバ市ヤバ町雀鬼伝2』講談社ノベルス・1987年
《羊がいなくて狼ばかり。悪とワルとのぶつかりあい。もひとつ上行く鬼が勝つ。ここはヤバ市ヤバ町鬼ヶ島。日ごと夜ごとのデスマッチ。鬼が泣いたらカモになる。流した涙の数だけ負ける――ますます快調! ハードボイルド新麻雀小説! お待たせしました、スリルとサスペンスの包装でお届けの長編第2弾!》
豊田有恒『大友の皇子東下り』講談社文庫・1994年
《大友の皇子は生きていた! 戦乱の近江京を逃れ、勇猛な影武者達を従えて東へ向かっていた――古代日本を震撼させた壬申の乱で、大海人の皇子と皇位を争い敗れ、自殺したとされる悲劇の皇子の最期に潜む数々の謎……。古代史通作家が「日本書紀」の記述の矛盾を衝き、大胆な推理と構想で描く会心の歴史ロマン。》
開高健『食卓は笑う』新潮文庫・1986年
《笑いは消化を助ける。胃散より遥かに効く。(カント)もし汝が賢ければ、笑え。(マルティアリス)――このせちがらいご時世、せめて食卓やお酒の席は楽しくいきたいものです。テーブルを盛り上げるために開高健秘蔵のジョークのスパイスを用意なさってはいかがでしょうか。マイルドから超辛口まで、特選銘柄をそろえたジョーク・ア・ラ・カルト。〔内外の漫画多数、7話に英訳つき〕》
アポリネール『虐殺された詩人』講談社文庫・1977年
《多淫な女マカレは、ある日、旅芸人と戯れその胤を宿し、やがて男児を産む。その子は母の死、養父の死にあい、長じて詩人として身を立てる。バルリネット(モデルはマリー・ローランサン)との熱烈な恋、同棲生活、破綻、最後には反詩人運動家たちの迫害により殉死するという波瀾に富んだ詩人の人生を描く表題作ほか、14籍の怪奇幻想小説。
栗城偲『stand up, please!』ガッシュ文庫・2016年
《AV会社に所属し性器修正に従事するモザイク職人の創丙は、多忙で食にも睡眠にも無頓着。しかも勃たなくなって久しい。そんな折、友人の保証人になり借金取りに追われるハメになった青年・覚馬をなりゆきでかくまうことになる。覚馬はゲイ向けの元AV男優で、映像の中ではSキャラだったのに実は真面目な好青年。同居するうち創丙の面倒をあれこれ見てくれるようになるが、ある日「本当に勃たないか、俺と試してみます?」と下半身の世話までされ…!?》
月東湊『甘やかな褥~琥珀色の秘密~』B‐PRINCE文庫・2015年
《出会いは最悪だった。生まれながらに生えていた尻尾のせいで、不幸を呼ぶ獣子として人間扱いされずに育ったルルは、領主の三男エストラーダに、夜伽の相手として領城に連れ込まれてしまう。
この尻尾を見られたら殺される……! だが、獣子と知ってもエストはルルを殺さなかった。慈しむ笑顔、優しい言葉、抱きしめる熱い腕。エストに出会い初めて幸せを知ったルルだったが、ルルの秘密がエストを不幸にしてしまい!?》
片岡義男『友よ、また逢おう』角川文庫・1981年
《ビリー・ザ・キッドがいた町のすぐ外にある荒野の夜は、西部開拓時代とまったくおなじです。底なしの濃紺の夜空よりも星のほうが多いという、圧倒的な自然がのしかかってきます。その空の下に立つことから、百年前に生きたひとりの青年の物語が生まれました。》
片岡義男『町からはじめて、旅へ』角川文庫・1981年
《「あの人はどこにいても旅なのではないかしら」と言った女性がいます。あの人、とはこのエッセイ集の著者のことです。そしてその著者は、小説を書くとき、登場人物がひとつところにとどまっていると非常に書きにくい、と言います。動くこと、つまり旅のなかに、すべてはあるのです。》
片岡義男『夕陽に赤い帆』角川文庫・1981年
《鍛えられた視線は、よけいなものいっさいを削り落とします。トレーニングされた感性は素晴しい一瞬を見逃さず、言葉による映像に定着させます。透明な陽射しのなかで乾いている抒情を中心に、ハードボイルドをこえるハード・ボイルドからセクシーな情話まで、この視線と感性の持主が描くファンタジーは、限りなく広がります。》
豊田有恒『地球の汚名』集英社文庫・1978年
《時は地球の紀元2700年――。地球の英知を集め、7年の歳月をかけた人工惑星で、いま恒星系連合の大会議が開かれようとしていた。だが仇敵ザミーン惑星の陰謀にかかり、テラは占領統治となり、盟主は処刑された。今は亡き主君の仇討ちを誓うテラ星人たち……。痛快無比! 気宇壮大なSF版“忠臣蔵”! ハードSFを代表する傑作長篇。
解説・武蔵野次郎》
筒井康隆『欠陥大百科』河出書房新社・1970年
《SF界の第一人者が限りないユーモアとナンセンス魂で繰りひろげるエンサイクロペディア風エッセイ集――善意と叡知に満ちた百科辞典的常識に敢然と挑戦する狂気の書。》
ロイド・ビッグル Jr.『沈黙は死の匂い』サンリオSF文庫・1982年
《銀河統合体の情報部員が20名も惑星カムで失踪した。どうも未知の殺人光線の餌食になったらしい。しかし、カムのように原始的な技術水準の惑星で、そんな兵器が作れるだろうか? そもそも彼らは、どうしてそんな兵器が必要なのか? ダーゼックの任務は、殺人光線パズールの謎を解き、消えた部員を救助することだった。そこで手術でカムの香料商人に変装して、不気味な世界へと出発した。カムの住人は耳がなく、指話で話をする沈黙の惑星だった。しかし風変りな色彩や臭いが重要な要素である。驚くほど錯綜した文化に適合していくにつれて、ダーゼックは魅力さえ感じはじめていった。やがて、陰惨な対立をくりかえす貴族や僧侶の政治配置も知りはじめ、伝説的なカムの死神である有翼獣に対する信仰を知るに及んで、ようやく全銀河系を恐怖に陥入れている兵器の謎も明らかになろうとしていた。だが、沈黙の惑星では、誰も恐怖の叫びを耳にすることはない……》
司馬遼太郎『国盗り物語(一)』新潮文庫・1971年
《世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「智恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を“国盗り”の拠点と定めた! 戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編。》
司馬遼太郎『国盗り物語(二)』新潮文庫・1971年
《気運が来るまで気長く待ちつつ準備する者が智者。気運が来るや、それをつかんでひと息に駆けあがる者が英雄。――それが庄九郎の信念であった。そして庄九郎こそ、智者であり英雄だった。内紛と侵略に明け暮れる美濃ノ国には英雄の出現は翹望する気運が満ちていた。“蝮”の異名にふさわしく、周到に執拗に自らの勢力を拡大し、ついに美濃の太守となった斎藤道三の生涯。》
司馬遼太郎『国盗り物語(三)』新潮文庫・1971年
《美濃を征服した斎藤道三は義理の子義龍の反乱に倒れたが、自らの天下統一の夢を女婿織田信長に託していた。今川義元を奇襲して鋭鋒を示した信長は、義父道三の仇を打つべく、賢臣木下藤吉郎、竹中半兵衛の智略を得て美濃を攻略した。上洛を志す信長はさらに畿内制覇の準備工作を進めてゆく……。信長の革命的戦術と人間操縦、その強烈な野性を、智将明智光秀を配して描く怒濤編。》
司馬遼太郎『国盗り物語(四)』新潮文庫・1971年
《すさまじい進撃を続けた織田信長は上洛を遂げ、将軍に足利義昭を擁立して、天下布武の理想を実行に移し始めた。しかし信長とその重臣明智光秀との間には越えられぬ深い溝が生じていた。外向する激情と内向し鬱結する繊細な感受性――共に斎藤道三の愛顧を受け、互いの資質を重んじつつも相容れぬ二つの強烈な個性を現代的な感覚で描き、「本能寺の変」の真因をそこに捉えた完結編。》
筒井康隆『狂気の沙汰も金次第』新潮文庫・1976年
《確固とした日常に支えられたこの地平を超えて遙か向うを眺めれば、果しなく自由で華麗なる狂気の世界が拡がる――著者は、あたかもささやかな身辺雑記を綴るかのごとく筆を進めながら、実はあなたをアイロニカルな現代批評と潜在的狂気の発掘へと導いてくれるのです。随筆のパロディとも言えるユニークなエッセイ118編は、山藤章二の傑作イラストとコンビを組んでいます。》
横田順彌『ふぁん太爺さんほら吹き夜話』集英社文庫・1986年
《「さぁて、今晩はどんな話をしようかの? そうそう、あれはわしが日本の総理大臣をしていた頃……。いや銀河を旅する宇宙商人じゃったかな……」未来、未来を自在に飛び、小説家、私立探偵、人体の秘密諜報員、はてまた天気の予想屋と様々な姿に身をかえて登場する経験豊かなふぁん太爺さん。民話や戦記、怪談、古典落語に材を得て、洒落が洒落を呼ぶ、奇想天外ハチャハチャ夜話。 解説・堀晃》
加納一朗『透明少年』ソノラマ文庫・1975年
《修平君は、ある日、留守番の最中に、台所の調味料をいたずらしているうちに、透明になる薬をつくりあげてしまった。これには、当の修平君もびっくり。しかし、それからが大変だった。空や海に、ハラハラドキドキわくわくびくびくの大冒険、大珍事が始まったのだ。》
加納一朗『ほらふき大追跡』ソノラマ文庫・1976年
《無人島に漂着仕様が、奴隷に売られようが、食人種に捕まりフライにされようが、降りかかる苦難はすべてほらで吹き飛ばせ! 夜空にゴムボートを浮かべ、東京タワーのてっぺんから電波にのって逃走した怪盗五百面相を追って、迷探偵・大江山金太郎と助手の三平がくりひろげる、世界一周にナンセンス旅行!》
坂井朱生『奇跡のバランス』ダリア文庫・2013年
《少しやんちゃな高校生の克貴は予想以上の雪に襲われ遭難していた。その窮地を何でも拾ってしまう『拾い癖』のあるイケメン・菱川に助けられる。看病される中、好みだと口説かれ、抱きしめられ、キスされてしまう。戸惑いつつも強引だが優しい菱川を意識するが、男同士なことが引っかかり気持ちを認められない克貴。そんな中、菱川に改めて告白され期限付きでつきあうことになり……。》
椹野道流『僕に雨傘、君に長靴―右手にメス、左手に花束7』シャレード文庫・2009年
《法医学教室助手の篤臣と、消化器外科医の江南。恋人同士のいつもの夕食で、珍しくかしこまった江南がきり出したのは、二人にとって因縁の温泉旅行の提案だった。強姦まがいに犯され、篤臣にとってトラウマとなった場所。そして、江南にとっても消えぬ罪を思い起こさせる場所。あんときのこと、もっぺん仕切り直させてくれへんか?――江南の真摯な言葉に、篤臣は過去と向き合うため、その誘いを受け入れるのだが…。篤臣&江南の温泉旅行編「旅に出よう」ほか、楢崎と江南の合コン編「愛と嫉妬と鰺フライ」の二本立て! おまけの巻末キャラクター座談会つき。》
丸谷才一『思考のレッスン』文春文庫・2002年
《思考の達人・丸谷さんが「どうすればいい考えが浮かぶか」のテクニックを伝授します。「仮説は大胆不敵に」「ひいきの学者をつくれ」「ホーム・グラウンドを持て」「文章は最後のマルまで考えて書け」……。究極の読書法、文章を書く極意、アイデアを生むコツが満載。レポートや論文を書く時に必携の名講義です。 解説・鹿島 茂》
新堂奈槻『君に会えてよかった1』ディアプラス文庫・1998年
《有名な「霊感少年」佐倉有希は、噂を聞きつけた後輩の荻幸弘に追いかけ回され困っていた。実は有希は霊が視えるどころか、その存在に気づいた途端眠ってしまう厄介な体質の持ち主。そうとは知らない荻は、あろうことか有希に熱烈なベロチューをかまし、それをネタに脅迫してきたのだった……! 表題シリーズ二篇と、書き下ろし番外篇「よく晴れた日の空に」を収録した、ブランニュー・ラヴ・ストーリー第一弾!》
新堂奈槻『君に会えてよかった2』ディアプラス文庫・2000年
《佐倉有希は、霊に気づいた途端眠ってしまう厄介な体質の持ち主。フォロー役の後輩・荻とはキスされたりしたりの微妙な関係が続いている。そんな有希につきまとう、元いじめっこの河野。根負けして彼に「霊感少年」の力を貸すことにした有希はそのせいで己の記憶にない衝撃の過去と、姉の朝霞と荻がそれを隠蔽していた事実を知ってしまい……!? 大人気シリーズ、第二弾!! 荻の妹初登場♡の、書き下ろしも収録!》
新堂奈槻『君に会えてよかった3』ディアプラス文庫・1998年
《霊に気づいた途端、眠ってしまう体質はまだ改善されないけれど――佐倉有希は、フォロー役の後輩・荻と、晴れて恋人同士になりました! 早速ふたりでペンションに行く事に! ……ただし、荻の妹・ちひろに頼まれた、ペンション内に出るという幽霊を確認するためだけど。そこで出会った喰えない霊能者・人見に、助けられたり邪魔されたりな中、ふたりは初エッチできるのか!? 後日談「たとえば。」も収録した第三弾!》
平島二郎『世界建築史の旅』中公文庫・1992年
《国際人としての会話に建築の話題は欠かせない。また、その国が誇りとしている建物についての知識があると、海外旅行もだんぜん面白くなる。世界四七ヵ国を旅行した建築家が、人類共通の遺産である歴史的建造物をはじめ、庶民生活と家屋との関わり等を、わが国との対比をまじえ生きいきと語った一冊。建築設計に興味を持つ人にとっては、恰好の入門書でもある。》
F・W・クロフツ『フレンチ警部と紫色の鎌』創元推理文庫・1972年
《映画館の切符売りをしている若い女性がロンドン警視庁のフレンチ警部のもとに助けを求めてやって来た。たまたま通勤電車の中で知り合った女から誘われ、ついつい賭け事に深入りして大きな借りをつくり、その返済のために、あやしげな提案をのまざるをえなくなったというのである。ところが、相手の男の手首に鎌のような紫色の傷あとをみたとき、彼女の脳裏には、事故死をしたとみられている知り合いの女性のことがよみがえってきた……。映画館の切符売り子の連続怪死事件の裏にひそむ陰謀の正体は何か?》
ジョン・スラデック『見えないグリーン』ハヤカワ文庫・1985年
《名探偵サッカレイ・フィンは、我が目を疑った。内側から鍵をかけられた、窓ひとつない狭いトイレの中で、老人が奇怪な死を遂げているのだ。なにものかが、老人の弱った心臓にショックを与え、死に追いやったのは明白だった。だが、フィン自らも見張っていた完全な密室でどうやって――? 老人を皮切りに、三十五年前の〈素人探偵会〉のメンバーを次次に襲う姿なき殺人者。探偵の推理を嘲笑うかのように、不可能とも思える犯行が繰り返されるが……鬼才が現代の密室不可能犯罪に挑戦する意欲作。本格ファンを唸らせる奇想天外のトリックとは?》
ドナルド・バーセルミ『口に出せない習慣、奇妙な行為』サンリオSF文庫・1981年
《「インディアンの蜂起」では現代都市がコマンチ族に攻撃され、征服される。「バルーン」では巨人の水ぶくれのような気球がマンハッタンを覆いつくし、地上の人々の自己満足気な反応をユーモラスに描いている。「まぬけ」に登場する作家志望の男は、重要な歴史的挿話から凝りに凝った話をでっちあげる。「ロバート・ケネディ、溺死寸前に救助される」は、新聞の三面記事や架空のインタビューや事件の寄せ集めで組み立てられた戯画的人物研究である。「報告」では、アメリカ軍がヴェトナムで使用するのを人道的見地からひかえている武器――小屋が縮む化学薬品とか睾丸が不能になる電報――が列挙されている。バーセルミは、借り物のアイデアやイメージの断片、粥状の言葉のざわめきから聖なるコミック、ゲタゲタ笑いの悲劇といった不協和音を創り出し、笑いを呼び起こし、戦慄させることによって文学形式と言葉そのものの限界を拡大させている。》
収録作品=インディアンの蜂起/バルーン/ここにあるこの新聞/ロバート・ケネディ、溺死寸前に救助される/報告/まぬけ/警察音楽隊/エドワードとピーア/しばしの眠りと目覚め/おしゃべりできるか/ゲーム/アリス/戦争の絵物語/大統領/月が見えるだろ?
赤江瀑『春泥歌』講談社文庫・1990年
《祖母に懐き、祖母なくしては一日も過ごせないほどのわたし。祖母から聞いた話――椿の花の咲き乱れる断崖上の六歳の男児、連れ立っていた盲目の母の姿はなく、その子の手の先で金剛鈴が鳴っていた――以来、わたしに取りついた恐ろしい夢……凄艶な情念、迸る詩情。表題作のほか美と幻想の九短編を収録。》
収録作品=春泥歌/砂の眠り/春眠/オオマツヨイクサよ/春の寵児/朝の廊下/平家の桜/耳飾る風/虚空の馬/金襴抄
リルケ『フィレンツェだより』筑摩書房・1970年
《イタリアの古都フィレンツェを訪れ、はじめてルネサンスの息吹にふれた若き日の詩人リルケは、その感動を生涯の星ルー・サロメに書き送った。15世紀の輝かしい芸術の春を典雅な筆致で描き、芸術家の創造と孤独と苦悩に思いを馳せ、都市の深みを幻視する書簡体エセーを、この作品と衝撃的な出会いをもった森有正氏渾身の清冽な名訳でおくる。》
ル・クレジオ『来るべきロートレアモン』朝日出版社・1980年
《何かしら緊急なもの、想像界の共同の場、あらゆる創造の、つまりは人間の生の原点のようなもの。/私はこの場こそ、日本の読者が『マルドロールの歌』においてただちに、誤まつことなく出会うことのできる場だと信じています。》(「日本の読者へ」より)
G・プーレ『炸裂する詩―あるいはボードレール/ランボー』朝日出版社・1981年
《彼らを結びつける共通点に気付くことよりも、彼らの間の際立った相違を理解することが肝心なのです。》(「日本の読者へ」より)
若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国(上)』集英社文庫・2008年(大佛次郎賞)
《十六世紀の大航海時代、キリスト教の世界布教にともない、宣教師が日本にもやってきた。開明的なイエズス会士ヴァリニャーノは、西欧とは異なる高度な文化を日本に認め、時のキリシタン大名に日本人信徒をヨーロッパに派遣する計画をもちかける。後世に名高い「天正少年使節」の四少年である。戦国末期の日本と帝国化する世界との邂逅を東西の史料を駆使し詳細に描く、大佛次郎賞受賞の傑作。》
若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国(下)』集英社文庫・2008年(大佛次郎賞)
《四人の少年は、二年の歳月を経てヨーロッパへ到着する。ラテン語を話す東洋の聡明な若者たちはスペイン、イタリア各地で歓待され、教皇グレゴリオ十三世との謁見を果たす。しかし、栄光と共に帰国した彼らを待ち受けていたのは、使節を派遣した権力者たちの死とキリシタンへの未曾有の迫害であった。巨大な歴史の波に翻弄されながら鮮烈に生きる少年たちを通して、日本のあるべき姿が見えてくる。》
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