東北若手作品集「むじな」（発行人：浅川芳直・工藤玲音、2017年11月）から。
夏井いつきの序文、神野紗希を迎えた座談会等を掲載した単発の冊子。
水眼鏡ひかりの帯の流れけり 浅川芳直
繰りかへしあをぞらひらく燕の巣 紆余曲雪
若者の尻の小さき菊日和 及川真梨子
憎きものなし素麺を湯へ放つ 工藤玲音
明日までが遠い静まる夏座敷 佐々木もなみ
夏や街中のマンホールの蓋剥がしたい 佐藤 廉
青空は異界の水面冬紅葉 一関なつみ
日焼け子の静かに打てるオセロかな 工藤凱門
殺人を済ませたように隙間風 谷村行海
山羊の母鳴き続けおり夏の月 千倉由穂
「蒸しプリン会議」（2017年秋冬）から。
参加6人が各5句を発表。
嚔その刹那アルハンブラを見た 西原天気
こがらしの子らに硝子のゆがみあり 鴇田智哉
向日葵の描きかけてある炬燵かな 太田うさぎ
死化粧してきりたんぽ屋に向かふ 小津夜景
「オルガン」（編集：宮本佳世乃、発行：鴇田智哉）11号（2017年11月）から。
浅沼璞×柳本々々の往復書簡第2回あり。
特集は《福田若之『自生地』》で対中いずみ、青本柚紀、田島健一、鴇田智哉、宮﨑莉々香、宮本佳世乃による句集評。
座談会は宮﨑莉々香からの質問状に基づく「句集って」。
自然薯の蔓やけむりだらけの村 宮本佳世乃
暴動の結末ひよどりの容姿 田島健一
人形のすすむはやさを流れ星 鴇田智哉
町にまつむし見かけの多様性やなんかが必要とされてさ 福田若之
すあまくれた子へちまが似合ふゆらぎつづける 宮﨑莉々香
開成学園俳句部の部誌「紫雁」第15号（2017年9月）から。
第20回俳句甲子園のレポート「俳句甲子園奮闘記「両翼」、顧問の俳句等も掲載。
以下、高三の作品。
湖へ向く心地障子を貼り終へて 山下真詩
月天心倉庫はあかあかと飢ゑて 筏井 遙
ランナーの万の心臓雲の峰 板倉ケンタ
爆心地橋は無数の汗を覚え 秋庭左右太
脊椎はさびしき塔よ大西日 岩田 奎
以下、高二の作品。
丼の縁あをあをと土用波 渡辺 光
望の夜や秤は零をさせずゐる 郡司章太
標札の消えゆく町や冬薔薇 折井森音
榾の宿影すみずみにゆきわたる 横内 深
月光に外階段はピアノめく 須藤凪斗
以上、各人一句ずつ引いた。この後、高一から中一までの作品が並ぶが略。高二と高一の間でひとつ大きな差がある気がする。
「韻」（発行：後藤昌治、編集：永井江美子、小笠原靖和、前野砥水）第25号（2017年8月）から。
選ばれぬものの王宮花は葉に 赤野四羽（招待俳句）
月を聴く三半規管めく木耳 片山洋子
乾きつつアサリは売られ海遠し 金子ユリ
踏切の孤高の時間霾れり 後藤昌治
いつもうしろに母立つてゐる夏雀 小笠原靖和
「船団」（代表：坪内稔典）第114号（2017年9月）から。
特集は「現代俳人論」。岸本尚毅（木村和也）、夏井いつき（工藤惠）、櫂未知子（藤井なお子）、長谷川櫂（久留島元）、稲畑廣太郎（塩見恵介）、小川軽舟（田中俊弥）、神野紗希（若林武史）の7本の作家論を掲載。
スプーンに逆さの私チョコアイス 山本純子
大型犬入学式に出たそうな 林田麻裕（第9回船団賞受賞作から）
山百合をばさっと置いた麿赤児 ねじめ正一（第9回船団賞候補作から）
「小熊座」（発行：高野ムツオ）2017年9月号から。
第10回佐藤鬼房顕彰全国俳句シンポジウム「鬼房俳句と軽みについて」を掲載。パネラー：関悦史、栗林浩、関根かな、司会：神野紗希。
地獄ゆえかく開きしか白牡丹 高野ムツオ
万緑のひかりを遺書に閉ぢ込める 土見敬志郎
冷蔵庫の奥の奥には誰かいる 渡辺誠一郎
できあがるまで重たしやしやぼん玉 中井洋子
カステラは雲の切端夏蔵王 佐藤成之
「鷹」（発行：小川軽舟）2017年9月号から。
口絵写真付きの連続インタビュー「俳人を作ったもの」第11回は「関悦史氏に聞く／異界としての現世」。聞き手・髙柳克弘。「鷹」ホームページでも販売しているとのこと。
消してまた黒板広し南風 小川軽舟
エロは好きだと空華が言つた蚊帳の中 星野石雀
しろじろと姥のにほひの梅雨茸 奥坂まや
陶枕に覚めてアジアの端の端 岩永佐保
鬱勃と縄文土器や夏の暮 兼城 雄
婚礼や橋へ吹かるる蛇の衣 竹岡一郎
光るものほそくあやつり蜘蛛若し 南十二国
「連衆」（編集：谷口慎也）No.78（2017年9月）から。
蟹と蟹向き合つて二葉亭四迷かな 柿本多映（招待作家）
三人にキャラメル五粒星月夜 松下カロ（招待作家）
人間を買って立ち去る椿かな 高橋修宏（特別作品）
日本語の暗がりを抜けぼくは蛸 普川 洋
迷宮の地下に書庫車庫保安室 夏木 久
ギヤマンの気泡の熟す流れ星 小倉斑女
バッタ跳ぶロボット研の帰りかな 谷口慎也（特別作品）
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