「鷹」(発行:小川軽舟)2016年4月号から。
第10回五人会賞発表あり。
銀食器光り挨拶春めきぬ 小川軽舟
蒲鉾も源平競ふ梅見かな
空映す駅舎の鏡春浅し 岸 孝信
らーめんにバター一塊受験終ふ 黒澤あき緒
クリスマスソング捨傘束ねられ 髙柳克弘
はくれんが散るさやうならさやうなら 市川 葉
初旅や大き時計の下に寝て 永島靖子
干潟より生れし神なり田に祀り 竹岡一郎
「陸」(発行:中村和弘)2016年4月号から。
第14回陸賞発表あり。
木乃伊(みいら)の陰(ほと)覆いし布に黄沙染む 中村和弘
隕石孔地球にあまた桜咲く
斑鳩の宮に大きな落し角
しあはせの貌の鮟鱇吊し切り 小菅白藤
俗謡の路地を抜け出て手套嵌む 稲村茂樹
ティシュ配りの石になりたる寒暮かな 岩崎嘉子
冬の猿レタスサンドが薄すぎる 瀬間陽子
赤き魚ほぐし地吹雪腹で聞く 佐々木貴子
「紫」(発行:山﨑十生)2016年4月号から。
第63回紫賞発表あり。
凍星に身体髪膚占めらるる 山﨑十生
雲を研ぐ坑儒の丘の冬木立 若林波留美
張合いは隙間風あってのことかしら 岡 純子
セーターをくぐり抜けると森がある 鳥海美智子
「澤」(発行:小澤實、編集:望月とし江)2016年4月号から。
トーストの薄焦春の立ちにけり 小澤 實
海峡の水の揺れをるわらびかな
十年後人類ありや蕗の薹
花冷や鏡の中の貌づくり 高橋睦郎(季語練習帖)
ワイングラスに大吟醸や女正月 髙取恒子
わし摑みに牡蠣をのせたりお好み焼き 美倉かんな
インフルエンザ接種子は踏張るも引きずらる 高橋まり子
料理記事切り抜く父やどてら着て 川上弘美
汝が古日記に吾知らぬハートマーク 榮 猿丸
葉牡丹やアラブの女児の目の澄める シシオ澤ガイ
寒柝の音の過ぎ行くラブホテル 林 雅樹
跪き子の鼻拭くや桃の花 相子智恵
息白く国籍を訊く手には銃 堀田季何
浮遊霊ぽこぽこ居りぬ日向ぼこ 山口珠央
不発弾処理十八屯や年終る 東徳門百合子
死神が侘助生ける午前二時 浅蜊
「小熊座」(発行:高野ムツオ)2016年4月号から。
栗林浩「昭和・平成を読む(9)」は大串章インタビュー前編。
争える鶴が望遠鏡の中 高野ムツオ
鶴万羽数えて人も滅ぶなり
凍裂の木となり土方巽待つ
戦争や葱いっせいに匂い出す
全身をたましいとして蛇眠る
大寒や机上にアイヌ古謡集 阿部菁女
春の雨他人の傘が濡れてゐる 津髙里永子
山眠る夢のまにまに烽火上ぐ 渡辺誠一郎
生きるとは影おとすこと冬田道 鯉沼桂子
半身はむささびなりし夜の山 上野まさい
「秋草」(発行編集:山口昭男)2016年4月号から。
草つらら水音遠くより来たる 山口昭男
水漬く枝に鳥ののりたる寒さかな 石崎圭太
春寒の畳に傾ぐ紙の鶴 三輪小春
物枯るる中に医院の立看板 橋本石火
踊り場に春といふもの十五才 横内正人
「香天」(編集発行:岡田耕治)2016年4月号から。
クラクション長く響かせ雪女 岡田耕治
理科室に集まってくる春愁
春深し象舎に戻る象の影 杉山久子(招待作品)
飴玉の微かなる罅春の虹 金子 敦(招待作品)
マフラーの編み目から出るさびしい指 石井 冴(特別作品)
触れられぬ輝きのあり雛飾 谷川すみれ
「遊牧」(代表:塩野谷仁)2016年4月号から。
金箔を透かせば加賀の花野かな 栗林 浩
絵ろうそく朧に解けてゆく肉声 矢野千代子
河豚料理屋は“まっつぐ”と大川のホームレス 中村かつら
じゃがいもに芽幾何学はむずかしい 高橋公子
次の間の椿が声をあげており 坂間恒子
別人格が夫に棲みつく冬の蜂 中村かつら
大畑等氏へ「いい酒があるよ」はるかな初松籟 堀之内長一
スカイツリー春青天を広めたる 吉野 精
君は自死だった桃つぼみ膨らむ日 伊藤 幸
誰からも撃たるる予感冬干潟 植原安治
煮凝りや世界金融混沌と 内海康男
「円座」(発行:武藤紀子、編集:小川もも子)2016年4月号から。
関悦史「平成の名句集を読む」第10回は、田中裕明句集『夜の客人』について。
初しぐれ雀に眉のありぬべし 武藤紀子
餡か蜜かうつほぐさよりあふるるは 中田 剛
人はふり夜を狐火の奥の村 近藤茂子
ファンファーレ振る精悍なブーレーズ石切り場 二宮真弓
元朝や日当たりて海青くなる 髙木ひかる
鏡張りのダンススタジオ山は雪 辻まさ野
煮こごりや人体解剖図の妙味 片山洋子
ネットプリント誌「セレネッラ」第6号(2015年12月)から。
参加3人の各6句と短文「それぞれの《クリスマス》」を掲載(短文にも反歌的な句がついているので1人計7句になる)。
寒波来るカレーの福神漬真つ赤 金子 敦 梟のまなこのなかの夜に眠れ 中山奈々 ラジカセの捨てられてあり冬の浜 中島葱男
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