『雨畑硯』は武藤紀子(1949 - )の第5句集。全句自註付き。
著者は「円座」主宰。
雪だるまほのかに杉の匂ひして
魚はみな素顔で泳ぐチェホフ忌
思ひあふれてふくらむ封書竹の春
木の瘤を翁とおもふ初しぐれ
闇といふ美しき文字青葉木菟
綿虫が消えて一人になりにけり
竹ばうき桃のはなびらついてゐし
皓々と十三夜月逝かれたる
縄跳びの子が影となる憂国忌
稲の花見て来しまなこ澄みにけり
白玉となりて眠りぬ神の蛇
先生の庭のまむしはもう出たか
棺の中に白桃のやうなひと
ときをりは鳥の影さす円座かな
ふるさとは井戸と大きな秋の蚊と
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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