古本市で古い日本SFを何冊かまとめて入手した。
海東セラ『薔薇とひかがみ』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
中上健次『風景の向こうへ』冬樹社・1983年
《風景の彼方に草木一本だに見つけられぬ熱砂があるのか、地の果てにはあの名づけられぬ森羅万象の空洞があるのか
中上健次 待望久しいエッセイ集》
山口瞳『どこ吹く風』集英社文庫・1982年
《嵐もあれば、風も吹く。出世、恋愛、離別、停年。微妙な屈折や挫折にも耐えに耐え、傷つきながらも志高く、我が道をひたすら生き抜くマジメ人間。世間の荒波にたちむかう泣き笑い人生の深淵をユーモアとペーソスをおりまぜて綴る。連作小説十九篇を収録。 解説・高橋呉郎》
山折哲雄『教えること、裏切られること―師弟関係の本質』講談社現代新書・2003年
《いかに学び、いかに師を乗りこえるか。柳田・折口の確執、棟方志功の師殺し、親鸞・道元等の情知渦巻く世界。》
陣内秀信『南イタリアへ!―地中海都市と文化の旅』講談社現代新書・1999年
《小高い丘、明るい斜面に営まれる古くて深くて豊かな町。街路は劇場、中庭は生活の場となる。カラー版・地中海都市の魅力ガイド。》
海東セラ『薔薇とひかがみ』思潮社・2024年
《いのちのタペストリー
ひそやかにあまく
ふるえる花のかげで
わたしたちは決行する
(「すみれのテロル」)
草叢では絶えず交換がなされ、時計の砂は静かに流れ落ちる。ひとりともうひとりが、交差し、ささめく、透きとおった刻22篇。》
草川隆『SF 学園魔女伝説』秋元文庫・1979年
《「こんなにかわいい子供たちを、文化が私たちより何世紀も遅れている未知の惑星(地球)に置いてきぽりにするなんて……私、とてもできないり!!」
宇宙船内のハンモックには三人の姉妹(ヨウ、マコ、ミチ)がぐっすり眠っていた。その子たちに目を注ぎながら、母親のルルが夫に抗議した。
「何度言ったらわかるんだ。いいか、エネルギータンクの故障は修理できた。しかし、そのために貴重な燃料の多くを失ってしまった。もし、子供たちをこのまま船内においておけば、重みが加算されて、宇宙船は母星に帰るまでにエネルギーは使い果たしてしまうんだ」
こうしてやむなく地球で暮らす事になった陽子(ヨウ)魔子(マコ)未知子(ミチ)の三姉妹は、それぞれ別々の家に娘として入り、通学する中学校・高校で超能力を発揮する事になる。
さて、この三姉妹の上にどんな運命が待ちかまえていることか………。》
菅原有一『その学園をマークしろ』秋元文庫・1979年
《佐竹文彦と井上千代子は、東京の東馬中学二年A組の学級委員である。
ある日、朝礼のときクラスメイトの木村が、とつぜん立ちくらみでもしたように、よろめいて倒れた。それが、この中学校に不思議な出来事が次々とおこる前ぶれとは、だれも気がつかなかった。
木村は失神した日を境にして、おどろくほど勉強ができるようになった。数学でも、理科でも、英語でも、先生に質問されると、てきぱきと正確に答えた。これがあの頭の回転がおそく、動作のにぶかった木村と同一人物とは誰にも信じられなかった。
しかもこの現象は、次々とクラスメートの上にもあらわれるようになった。
果して誰が、なんの目的で?この謎に文彦、千代子、そして担任の島田先生の三人が挑戦する。》
塩谷隆志『エスパー・オートバイ対ベム』ソノラマ文庫・1980年
《長年の夢がかなって750ccの単車を手に入れた俊一が、ご機嫌に国道一号線を飛ばしていた時、前方上空に冴えない色と形のUFOが現れた。UFOはまるで俊一を誘導するように低空飛行を続け、米軍通信隊基地の広大な空き地に出ると、エメラルド・グリーンの強烈な光を発して宇宙人を吐き出した。宇宙人は《生け捕りカーライト》と名乗り、テレキネシスで俊一を捕虜にしようとしたが、いつの間に現れたのか、朱色の巨大な単車インデアン・チーフ1300ccが強力な妨害念波を発していた。――痛快SF《エスパー・オートバイ》シリーズ第3弾!!》
加太こうじ『下町の民俗学』PHP研究所・1980年
《サーカス小屋、見世物小屋の立つ原っぱ、紙芝居屋、糝粉細工屋のいる街角、チンドン屋の音が哀しく響く東京下町の風景。そして、その風景を通り過ぎた不況、失業、頽廃の時代――昭和初期に少年時代を過した著者が、往時の風俗とその歴史を綴る異色の文化論。》
若桜木虔『ムーの白鯨―アトラティスの襲来』ポケットメイツ・1980年
《ムー帝国との戦いに敗れて三万年。地球上から没していたアトランティス帝国は、今、その眠りから覚め、復讐を期して故郷地球へと攻撃を開始した。迎え撃つのは皇帝ムーの化身たる巨大白鯨と、不思議な魔力をもつ少女マドーラによってイースター島に召集された白銀剣ら若きムーの戦士たち。彼らはアトランティス軍と魔の石オリハルコン争奪戦をくりひろげながら、全地球の危機に起ち向うべく、いざ、敵王の要塞コンドルヘと発つ。》
つかこうへい『ハゲ・デブ殺人事件』角川文庫・1985年
《この事件は起こるべくして起きたのです。理由も明らかです。「私」がこんな私であり、こんな「私」が、あんなつか田さんと出会ってしまったからなのです。つか田さんというのは、たとえば――「ほっとけ。女は情をかけると不幸になる。あの女は幸薄いから幸せなんだ」と、ごく自然に言い放つヒトなのです。そのつか田さんに魂をそっくりかっさられたところから、「私」の幸福と、過ちが始まったのです。
容疑者・高野の愛しい女たちへの叫びを通して、「人間世界」の断面・残酷を描いた長編! 発表時から、「怖るべきエンターテインメント」と話題をまいた問題作。》
海野弘『酒場の文化史―ドリンカーたちの華麗な足跡』サントリー博物館文庫・1983年
《酒場、この人間くさい魅力の空間。チョーサー、シェイクスピア、ロートレック………同時代の文学や絵画からヨーロッパの酒場空間の変遷を鮮かに描く。洞窟時代からジャズエイジまで。これは新しいスタイルの文化史であり都市論でもある。》
デイヴィッド・ジェロルド『ムーンスター・オデッセイ』サンリオSF文庫・1979年
《サトリンは、入植者がやってきて観測のすえ、何千という氷の小惑星を荒涼たる地表に射ち込んで大気と海を作り出すまで生物も棲息しない惑星だった。さらに磁気シールドを上空に設置して昼と夜を統制し、人間の定住がはじまったのである。サトリン人は、性のモラトリアム期を経て13歳で赤らみを迎える。すると男と女の両方のセックスを体験したのち、どちらかの性を選択しなければならないのだ。なによりも「ロノとルリクの伝説」で悲劇的な事情でく人とも男となった恋人同士が互いの腕の中で死ぬというラブ・ストーリーから「すべての命は、はかないものです。だから愛があるのです――命に意味を与えるため」と作者が教訓を引き出すとき、幻想的なムーンスターの光景、主人公の性の目覚めへの遍歴とともにカルフォルニア・ゼネレーションが目指した開かれた感性への革命が嫋やかな発想と稠密な構成力で試みられていることに驚嘆せざるをえないのだ。》
若桜木虔『パラレルワールド大混戦』集英社文庫コバルトシリーズ・1983年
《幸代と竜介は幼なじみ、二人は学校をサボって、モーター・ボートで天草灘へ出た。ふざけあって泳いでいた二人の周囲に濃霧が発生したかと思うと、突然恐竜が襲ってきた。二人は必死で逃げた。運よく釣りにきていた同級生の理恵と信昭に、二人は助けられた。四人が港へ戻ろうとしたとき、警備艇が近づいてきて、領海侵犯で追捕されてしまった。長崎県だというのに……何か起こったのだ!?》
若桜木虔『パラレルワールド大脱走』集英社文庫コバルトシリーズ・1984年
《一難去って、また一難――次元の壁を抜けた幸代と竜介とが紛れこんだのは、またしてもパラレルワールドだった。そこはなんと第二次世界大戦に勝利をおさめて軍事大国となっている大日本帝国!! 中国の破壊工作員と疑われた二人は、日本への忠誠心を証明するために極秘任務を命じられることになった。鮫形水中スクーターでアメリカに密航し、一千万有余の日系人移民を救出せよというのだ!!》
中上健次『軽蔑』集英社文庫・1999年
《「これから高飛びだぜ」男らしくて自信に溢れたカズさんの言葉は踊り子の真知子の心を強く揺さぶった。鏡張りのカウンターの上からここではないどこかへ。田舎の資産家の一人息子で暴走族上がりのカズさん。真知子はその危険な誘いに戸惑いながらも店を飛び出す。自分とカズさんは相思相愛の五分と五分の男と女。自らの信じた愛を貫こうとする二人の過酷なまでの運命を描く傑作長編。》
遠藤周作『侍』新潮文庫・1986年(野間文芸賞)
《藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。野心的な宣教師ベラスコを案内人に、メキシコ、スペインと苦難の旅は続き、ローマでは、お役目達成のために受洗を迫られる。七年に及ぶ旅の果て、キリシタン禁制、鎖国となった故国へもどった「侍」を待っていたものは――。政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の“生”を通して、人生と信仰の意味を問う。》
眉村卓『ねじれた町』角川文庫・1981年
《そんな馬鹿な! 引っ越してきたQ市の迷い込んだ街角で行夫が見たのは、人力車に昔のポスト…、周囲にあるのは何十年も過去に遡ったような光景だった。
それからこのQ市では、奇怪なことばかり起こった。以前、行夫が出したハガキが、明治13年に投函されたことになっていたり、鬼・妖怪が出るという噂が広がったり…。 しかも奇怪なのは、この町の人々にとっては、それが日常茶飯事になっていることだった…。
狂ったこの町で、行夫たちが体験する恐怖の世界。眉村SFジュヴナイルの名作。》
眉村卓『ショート・ショート ふつうの家族』角川文庫・1984年
《父、母、そして大学生の兄と、中学三年生で受験生の信夫――こんなごくありきたりの家族なのに、周囲で起きるのは変な出来事ばっかり……。
宇宙人からのお礼の話、成績が上がるか、さもなくば死ぬかという薬の話。窓の下が異次元だった話……いったいぜんたい世の中どうなってんの? 何か天変地異の前ぶれか、それとも夢でも見ているの? ひょっとしたら、もう明日という日はないのかも……。
眉村卓が、ふつうの家庭の周囲を舞台にショート・ショートで描く、ちょっぴり危険で魅力的な全67話。》
収録作品=雨の夜/教卓ジャック/すごい薬/電車を待てば/変な役所/酷使のあと/変な箱/おばけ/訓練/柔道/工事/お礼/警官/みぞれ/仕返し/車内/赤い車/母の姿/ぬいぐるみ/瞬間移動/かん詰め/テレビの調整/スケッチ/切符/居眠り/ポスター/空き地/釣りに行こう/見世物/鉛筆/洗濯物/転落/救出(1)/救出(2)/変なこと/日野青年/なめくじ/告白/おもての子供たち/祈り屋/続おもての子供たち/波/盆踊り/火事のあと/台風来/夢のけむり/椅子の山から/無礼な来訪者(1)/無礼な来訪者(2)/無礼な来訪者(3)/隔離(1)/隔離(2)/隔離(3)/隔離(4)/隔離(5)/隔離(6)/隔離(7)/隔離(8)/隔離(9)/隔離(10)/先行テレビ/錠/五里霧中(1)/五里霧中(2)/五里霧中(3)/五里霧中(4)/五里霧中(5)/雨の夜
柳田国男『小さき者の声』角川文庫・1960年
《曇りのない子供の目にうつる大人の生活を、彼らは独特の判断をもって自分たちの世界に再現しようとする。古い遊戯やわらべ歌。日常なにげなく使っている言葉や、形式だけ残っている子供の行事が、遠い祖先の生活・思想を解明する鍵となる。本書は児童の言葉や遊戯を民俗学的にとりあげ、その果たしている役割について論証する。》
柳田国男『こども風土記』角川文庫・1960年
《“母といた日の悦楽は、老いたる私にさえよみがえってくる”と感慨する幼年の日々。哀しいまでのやさしさをこめて、すたれつつある児童遊戯とその周辺とを語る本書は、“発見の小箱”というにふさわしく、なにげない日常の諸相の中から幾多の問題意識と解明の手段とをさぐりだす柳田民俗学独自の方法を知るための平易な入門書ともなっている。見すごされがちな小さい世界に大切な文化の歴史を探る好著。》
宮本常一『ふるさとの生活』講談社学術文庫・1986年
《著者は若き日の小学教師の経験を通し、ふるさとに関する知識や理解を深めることが子どもの人間形成にとっていかに大切であるかを生涯にわたって主張した。本書は日本人の生活の歴史を子どもたちに伝えるため、戦中戦後の約十年間、日本各地を歩きながら村の成り立ちや暮らし、古い習俗や子どもを中心とした年中行事等を丹念に掘りおこして、これを詳細にまとめた貴重な記録である。民俗調査のありかたを教示して話題を呼んだ好著。》
若桑みどり『女性画家列伝』岩波新書・1985年
《女には偉大な芸術家がいない、女は「創造的な天分」を持たぬからだ、という断定に真実があるだろうか。女性の「限界」を語るには、その本質を云々するのではなく、おかれてきた状況をこそ問題にしなければならないのではないか。才能の開花を妨げる多くの障害を越えて芸術家となった女性たちの苦闘を、作品を通して語る。》
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