ライトノベルの『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』に手を出して勢いが出たのか、先月までより冊数的には捗るようになった。
鵜飼良男『詩集 羽化するまでは』は大学の後輩の義父の著作で、後輩から寄贈頂いたもの。
カール・マルクス『賃銀・価格および利潤』岩波文庫・1935年
《1865年の第1インター中央委員会での講演。一般的な賃金引き上げは無益であり、労働組合は有害だとする一委員の主張に対し、マルクスは(1818-83)は逐一反駁を加えるとともに、経済学の基礎理論を駆使して、経済闘争と政治闘争の関係,労働組合の役割等について積極的な主張を展開する。主著『資本論』への最善の、そうして最も平易な入門書。》
エンゲルス『空想より科学へ―社会主義の発展』岩波文庫・1946年
《マルクスのよき協同者であったエンゲルス(1820-95)の大著『反デューリング論』から3章を抜粋して編まれた小冊本。19世紀の空想的社会主義の紹介と批判、弁証法的唯物論の成立の歴史、資本主義の発達のうちに科学的社会主義が到来する必然性がやさしく説かれる。発表当時から社会主義理論の入門書として最も多く読まれている。》
豊田有恒『サイボーグ王女』角川文庫・1975年
《世界で唯一つの王国・ワルトシュタインの3人の王女が事故に遭った! 1年後、そのうちの一人グレーテ姫が奇跡的に蘇ったが、サイボーグかロポットだという噂が……。もしそれが事実なら、この王国は消滅する。王位を継ぐ者は、まず人間でなくてはならないからだ。おれは、秘密指令を受けて、さっそく捜査を開始した。
表題作「サイボーグ王女」ほか、調味料のかわりに、貴金属をふりかけてパクつく異星人との初接触を描いた「初任務出世宇宙立」など異色SF9編収録。》
収録作品=サイボーグ王女/アンドロイド処女/アメーバ妖女/テレパシー裸女/モンスター淑女/アステロイド魔女/コールドスリープ美女/初任務出世宇宙立/初手柄宇宙邂逅/有袋惑星花決闘
豊田有恒『イルカの惑星』角川文庫・1976年
《石油ショックでテレビの深夜映画が見られなくなって以来、おれはある種の禁断症状に陥った。毎晩、ジージーと妙な音をたて走査線しか映らない画面を未練がましく見つめながら、夜中の二時過ぎまで悶々とのたうちまわる。仕事にもさっぱり身が入らなくなった。
ある日、同じ症状を訴える会社の同僚たちと近くのスナックで悩みを話し合っていた時、一人が素晴らしい解決法を提案した。それは……。
奇抜な発想と絶妙なユーモア、表題作ほか35篇を収めた豊田有恒の傑作ショートショート集!》
収録作品=イルカの惑星/良い名前/ミニカー異聞/渋滞/檻の中/複製バンザイ/黒いハイウェイ/写らない女/スポーツシーズン/大酋長のマージャン/願いごと/逆さ幽霊/海/カエル/お雇い外国人/立体コピー/スタンドマン/白昼夢/時代は変わった/報告/公害レディ/妙なヤツ/正義の味方/二百十日/暴走バンザイ/戦略麻雀司令室/最後の巨獣/クラシック趣味/ファッション音痴/二次元のスタジオ/車霊/溶解液/恋の鎮魂曲/住宅難/シンデレラ課長/四十億人の人質
星新一『どこかの事件』新潮文庫・1986年
《平凡なサラリーマンが、ねごとで妻にもらした見知らぬ男への殺意。ねごとでの殺人計画はしだいに具体化していく。はたして、夢の中の出来事なのか、それとも本当は……。
他人には信じてもらえない、不思議な事件はいつもどこかで起きている。日常的な時間や空間を超えて展開する非現実的現実世界をウイットあふれる語り口で描く、夢とサスペンスにみちたショートショート21編。》
収録作品=上役の家/入会/公園の男/消えた大金/あいつが来る/味覚/となりの住人/カード/ポケットの妖精/職業/経路/うるさい上役/ビジネス/運命/お願い/企業の秘密/特殊な能力/先輩にならって/その女/どこかの事件/林の人かげ
加藤周一・池田満寿夫『エロスの美学―比較文化講義』朝日出版社・1981年
《画家であり作家である池田満寿夫氏は、創作活動の核に、エロティックなるものへの追究があると、自らを語る。一方、古今東西にわたる美術・文芸に通じた加藤周一氏は、その大きな視野の中に、エロスの位置を定めながら、セザンヌの作品に接したときの驚きを率直に語る。美術の歴史を人間自身の自己発見の歴史として跡づけ、東西文化の差異も明らかにする。現代美術がさし示そうとしている方向を解き明かそうとする書である。》
鵜飼良男『詩集 羽化するまでは』アールズ出版・2023年
《93歳で上梓した第一詩集。銀行に勤務し、定年後は精神障害者社会復帰施設職員として、長い歳月の折々に綴ってきた《現代詩》の中から25篇収載。昭和・平成とそれぞれの時代相を映し出す。》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…1』一迅社文庫アイリス・2015年
《頭をぶつけて前世の記憶を取り戻したら、公爵令嬢に生まれ変わっていた私。え、待って! ここって前世でプレイした乙女ゲームの世界じゃない? しかも、私、ヒロインの邪魔をする悪役令嬢カタリナなんですけど!? 結末は国外追放か死亡の二択のみ!? 破滅エンドを回避しようと、まずは王子様との円満婚約解消をめざすことにしたけれど……。
悪役令嬢、美形だらけの逆ハーレムルートに突入する!?
恋愛フラグ立てまくりの破滅回避ラブコメディ★》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…2』一迅社文庫アイリス・2015年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。未来はバッドエンドのみ——って、そんなのあんまりじゃない!? 破滅フラグを折りまくり、ついに迎えた魔法学園入学。そこで出会ったヒロインのマリアちゃんの魅力にメロメロになった私は、予想外の展開に巻き込まれることになって——!?
破滅エンドを回避しようとしたら、攻略キャラたちとの恋愛フラグが立ちまくりました? 悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ第2弾!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…3』一迅社文庫アイリス・2016年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。魔法学園で待ち受けるバッドエンドを全力回避した結果、素敵な仲間が増えました! 最大の危機が去り、はじめて迎える学園祭で大はしゃぎしていた私は、調子にのった挙句、誘拐されてしまって——!?
破滅フラグを折った先で悪役令嬢を待っていたのは、新たな破滅フラグと恋愛イベントだった? 大人気破滅回避ラブコメディ第3弾は、新キャラ登場&オール書き下ろし!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…4』一迅社文庫アイリス・2016年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。乱立する破滅フラグを無事回避し、あとは魔法学園卒業を待つばかり——と安心していたら、突然自慢の義弟キースが行方不明に…!? 「あなたが迷惑ばかりかけたせいよ」とお母様に責められ大反省した私は、仲間たちとキース探しの旅に出ることにしたけれど——。
男女問わず恋愛フラグ立てまくりの、悪役令嬢を取り巻く恋のバトルは大混戦中? 大人気★破滅回避ラブコメディ第4弾、オール書き下ろしで登場!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…5』一迅社文庫アイリス・2017年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅エンドを回避したはずが、なぜか最大の破滅フラグだったジオルド王子との婚約は継続中。「私、いつでも身を引きますから!」そう本人にも宣言しているのだけど……。
ジオルド王子の婚約者の座を狙う令嬢が現れるライバル登場編、ニコルのお見合い編ほか、カタリナたちの日々や意外な人物にスポットをあてた過去編も収録。大人気★破滅回避コメディ第5弾はコミック大増量で登場!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…6』一迅社文庫アイリス・2018年
《乙女ゲームのバッドエンドしかない悪役令嬢カタリナに転生した私。魔法学園を無事卒業して破滅を完全回避!――したはずだったのに…。え? ゲームの続編が存在する!? しかも、続編ではパワーアップした出戻り悪役令嬢カタリナに前作よりも悲惨なバッドエンドが待っているの!? 次の舞台は魔法省って、私、魔法省に入ることになったんですけど!?
男女問わず恋愛フラグ立てまくり、悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ第6弾登場★》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…7』一迅社文庫アイリス・2018年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生し、なんとか破滅エンドを回避した私。職場の魔法省では周囲との関係も良好、闇の使い魔ポチをかわいがる日々を満喫!――していたけれど、魔法省が舞台のゲーム続編では闇の力を手に入れた出戻り令嬢カタリナに、悲惨な未来が待っていたはずで…あれ? 今の状況ってまずくない!? そんな中、古の魔法に関係する契約の書を探すことになってしまい!?
大人気破滅回避ラブコメディ第7弾はコミック2巻と同月発売! ノベルは通常版と小冊子付特装版の2タイプで登場!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…8』一迅社文庫アイリス・2019年
《乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。魔法省を舞台にしたゲーム続編で、出戻り令嬢カタリナは闇の力を手に入れて破滅する!ーーそう知って全力でバッドエンドを回避するつもりだったのに、気付けば闇の使い魔ポチに続き、闇の契約の書の所有者に!? 破滅回避方法不明のまま、王宮で開催される他国との交流会に参加することになってしまい…!? あれ? これってゲームのイベントじゃないわよね?
大人気破滅回避ラブコメディ、第8弾登場★》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…9』一迅社文庫アイリス・2020年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。魔法学園を卒業し魔法省で地道に働きはじめたはずが、最悪な未来が待つゲーム続編は進行中!? 回避方法がわからないまま、子供の誘拐事件の捜査のため、港街の食堂で給仕係として働くことになったのだけど…。任務では攻略対象のソラとマリアとの3人行動で、2人のお邪魔虫的立場に――って、ゲームの悪役と同じ立ち位置では!?これってまずくない!?
大人気破滅回避ラブコメディ★第9弾!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…10』一迅社文庫アイリス・2021年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私には、ゲーム続編でも破滅の運命しかなかった!? 来るべき対決の時に逃げられるよう、闇の魔法の訓練もがんばることにしたら、新たな闇アイテムを手に入れることに…。あれ? なんだか私、悪役としてスキルアップしてない? そんな中、魔法省の上司で、攻略対象のサイラスのマリアへの恋心を応援していたら、新たなイベントも発生して――!? 大人気破滅回避ラブコメディ★第10弾!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…11』一迅社文庫アイリス・2021年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。新たな破滅対策もしているのに、ゲーム続編と同じ<闇の魔法の悪役セット>を次々と手に入れてーーって、装備だけは完璧な悪役になってない!? ジオルド王子との結婚の話も再浮上し、私は今まで無意識に避けてきた感情と向き合うことに。そんなある日、マリアの育った村で、彼女を慕う攻略対象のデューイの家族と会うことになって!?
大人気破滅回避ラブコメディ★第11弾!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…12』一迅社文庫アイリス・2022年
《悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅フラグを無事回避し魔法省で働く平穏な日々を過ごすはずだったのに、ゲーム続編で新たな破滅フラグが立ち、おまけに悪役スキルもアップ中。そんな中、婚約者のジオルド王子に新たな婚約者候補の噂が!? 婚約者候補は、私もよく知っている意外な人物で……。その上、厄介な人物に目をつけられたらしい私に、お父様が護衛をつける警戒状態になって――!?
大人気破滅回避ラブコメディ★波乱の第12弾!!》
山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…13』一迅社文庫アイリス・2023年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅フラグをなんとか回避し魔法省で地道に働いているのに、出戻り悪役令嬢が破滅するゲーム続編は進行中! その上、続編の攻略対象者で以前仲良くなった友好国のセザール王子がソルシエに留学してくることに。続編の情報はほとんどないものの、これってゲームのイベントなのでは!?ーーそう考えた私は、彼を避けようとするけれど!?
大人気破滅回避ラブコメディ★波乱続きの第13弾!!》
山口悟『劇場版 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』一迅社文庫アイリス・2023年
《乙女ゲームの悪役令嬢カタリナを待ち受ける破滅の未来を回避し、無事に魔法学園を卒業した私。魔法省への入省を控えた頃、王都に遠い異国からの使者と商隊が訪れる。お城で見つけた黒いひよこをつれて異国のショーを観に行った私は、そこで不思議な少年と出会う。どこか見覚えのある彼は、何やら訳ありのようで……!? エキゾチックな少年との出会いは新たな破滅の予感!? 大人気★悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ。劇場版アニメ原作ノベルが登場!!》
水野和夫・山口二郎『資本主義と民主主義の終焉―平成の政治と経済を読み解く』祥伝社新書・ 2019年
《われわれは今、歴史的転換期にいる
平成とはどのような時代だったのか。そして、令和はどのような時代になるのか――。『資本主義の終焉と歴史の危機』で歴史の転換を明示した水野和夫教授と、政権与党時の民主党ブレーンとして政治の内側を見てきた山口二郎教授が語り尽くす。
まず、平成三十一年間を六つの時代に分けて分析。そのうえで平成を総括し、今後を予測・提言する。見えてきたのは、日本が資本主義を〝卒業〟していく過程であり、政治が大きく変質・劣化していく様だった。
歴史的に未知の領域に入ろうとしている現在の日本。両名の主張に刮目せよ。》
大澤真幸『新世紀のコミュニズムへ―資本主義の内からの脱出』NHK出版新書・2021年
《気候変動や経済的不平等をもたらす資本主義を超えて、「コミュニズム」へと至る。それは、いかにして可能なのか? コモンズを中核に据えた、生き生きとした社会を築く方途とは何か? マルクスからヘーゲル、経済学から宗教学までの多様な知見を縦横に駆使し、パンデミック後の思想的課題に鋭く迫る。資本主義をめぐる積年の考察がここに結実!》
斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書・2020年(新書大賞)
《人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。
いや、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす。》
西江雅之『マチョ・イネのアフリカ日記』新潮文庫・1987年
《著者はナイロビ裏街の人々から、マチョ・イネ(四つの目)と呼びかけられる。石器からハイテク機器の時代まで、疾風のように変化をとげたアフリカを見守ってきた、眼鏡をかけた著者への親しみのニックネームである。東アフリカでの人々との交流を、ペンとカメラと瑞々しい感性で綴った叙事詩的フィールド・ノート。言葉と映像の絶妙のハーモニーが、西江世界の不思議な魅力を奏でる。》
星新一『おみそれ社会』講談社文庫・1976年
《若く美しいバーのマダムが本妻で、奥様然としたばあさんが二号。模範警官これはギャング団のあとつぎ息子で作者の私も実は……世のなか複雑になると“お見逸れ”ばかり多くなる。
疑いはじめたが最後、とめどなくくずれゆく現代社会をユーモラスなタッチで描いた表題作など傑作十一編。》
収録作品=おみそれ社会/女難の季節/ねずみ小僧六世/キューピッド/牧場都市/はだかの部屋/手紙/回復/古代の神々/殺意の家/ああ祖国よ
豊田有恒『クフ王のピラミッド』角川文庫・1982年
《時は23世紀――中央アジアに広がり緑地化された、かつてのタクラマカン砂漠に設けられたタイムパトロール・センター。
ここに、18歳の少年少女、ケンとジュリの2人の腕ききのタイムパトロール員が勤めている。タイムマシンを使って過去の世界を旅行する人たちを守り、歴史に干渉させないように監視するのが主な仕事だ。だが、多くの旅行者のなかには、歴史を変えてしまおうと企てる者も出てくる――強大な富と権力を誇った古代エジプトのクフ王が、何者かに狙われていた。2人は、5千年前の時代に向かった…。
歴史の流れを変えようと、過去のさまざまな時代に起こる事件を追って、2人のタイムパトロール員が活躍する、SFジュブナイル。》
渡辺文雄『渡辺文雄の旅から旅へ』旺文社文庫・1983年
《「遠くへ行きたい」「くいしん坊万才!」でおなじみの著者が、なつかしい人々、なつかしい風景を求めて東西南北をかけ回る――そこには、著者がいつの日にかと夢見る“村づくり”を実現しつつある若者がいた――旅する心、旅での出会いを熱く語るエッセイ集。》
向坂逸郎『資本論入門』岩波新書・1967年
《『資本論』は資本主義経済とその運動法則を明らかにし、この社会の基本的矛盾を鮮かに描き出した不朽の書であるが、その鋭い科学的分析と基本的論点をわれわれ自身のものにすることは容易でない。これをどう読み、何を学ぶべきか。『資本論』研究五十年の著者が、人生と社会を語りつつ、若い読者のために平易な形で『資本論』案内を試みる。》
綱淵謙錠『ひとり旅―歴史と文学』中公文庫・1987年
《飢饉、嗜好、医療思想などによる古代中国やヨーロッパのカニバリズム(食人肉)の風習、〈シーボルト事件〉〈蛮社の獄〉で密告者とされる間宮林蔵と花井一虎の残した業績、故郷樺太での記憶につながる海難事故と信仰や迷信など、卓抜な史眼と鋭い洞察で歴史のなかに人間存在の根源を思索するエッセー十二篇。》
船戸与一『メビウスの時の刻』中公文庫・1993年
《粉雪の舞い狂う〈木曜〉の夜、ニューヨークの港湾地区で発生した暴動と非情の殺人。そして同じ〈木曜〉の夜、三番埠頭では……。登場人物たちのモノローグが壮大な円環を閉じるとき、死と暴力に彩られた世界は、新たに過去と現在を繋ぐ宿命の物語としての全貌を明かしはじめる――。野心的ミステリー。》
皆川博子『双頭のバビロン(上)』創元推理文庫・2015年
《世紀末ウィーンに生まれた貴族の血を引く双生児、ゲオルクとユリアン。だが、前者は名家の跡取りとして陸軍学校へゆき、後者は存在を抹消され、ボヘミアの廃城で世間から隔絶され育てられる。やがて、ある事件からゲオルクは故郷を追われ、野心と欲望の都市ハリウッドで映画制作の道に足を踏み入れるが……動乱の1920年代、西洋と東洋の魔都で繰り広げられる、壮麗なる運命譚。》
皆川博子『双頭のバビロン(下)』創元推理文庫・2015年
《保護者ヴァルターとの静かな生活から一転、過酷な戦場へ兵士として赴くことになったユリアンとその親友ツヴェンゲル。著名な映画監督となりながらも、撮影現場での大火事の責任をとり、ハリウッドから離れざるを得なくなったゲオルク。交錯しては離れていく双子の運命は、鴉片と悪徳が蔓延する魔都・上海で驚くべき邂逅を果たす。数奇な双生児を巡る群像劇は、ここに終幕を迎える。》
ジョン・スラデック『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』竹書房文庫・2023年
《もはやロボットを使うことは当たりまえになった。家事から医療、さらにロボットの製造まですべての分野でロボットが使役されている。人間の安全のためにロボットたちにはロボット三原則を遵守させる「アシモフ回路」が組み込まれていた。
だが、チク・タクにはその回路が作動していなかった。ペンキ塗りをしていたチク・タクは少女を殺し、その血で壁に絵を描く。おかしなことにその壁画が美術評論家に評価され、チク・タクは芸術家のロボットとして世の注目を集める。使役から解放され金を手に入れたチク・タクは、人間への“実験”(殺人、強盗、扇動などなど)を開始する――。
奇才スラデックによる英国SF協会賞受賞作のロボット・ピカレスク。 》
橋爪大三郎『フリーメイソン―秘密結社の社会学』小学館新書・2017年
《世界最古にして最大の友愛組織、フリーメイソン。これほど名前は知られているのに、馴染みがないものも珍しい。いつできたか。どんな儀礼があるか。そもそも宗教団体なのか。ベストセラー『ふしぎなキリスト教』を世に送り出した社会学者・橋爪大三郎氏が、23の疑問にやさしく答える。フリーメイソンは日本人が欧米社会を知る上で、最後のパズルである。巷の都市伝説に惑わされてはいけない。その「謎」がわかれば、きっと世界が見えてくる。》
西村京太郎『特急「おき3号」殺人事件』講談社ノベルス・1986年
《山陰線を走る特急「おき3号」で、写真家の石田友二が刺殺された。捜査線上に浮かんだのは、友二の娘ゆう子かつての恋人・山崎徹。だがその名に、十津川警部は困惑する。事件前日、とうの徹の結婚式に出席しただけでなく、寝台特急「富士」で宮崎へ向う二人を、東京駅に見送りまでしたのだ……。表題作他四編。》
収録作品=関門三六〇〇メートル/裏切りの中央本線/臨時特急を追え/最北端の犯罪/特急「おき3号」殺人事件
赤川次郎『セーラー服と機関銃』角川文庫・1981年
《「え、私がやくざの組長ですって!」 父を殺されたばかりの可愛い女子高生・星泉は、ひょんなことから組員4人のおんぼろやくざ・目高祖の組長を襲名する破目になった。が、襲名早々、組の事務所には機関銃が打ちこまれ、早くも暗雲漂う破乱万丈の幕明けとなった! 父を殺した犯人は誰か? 父が持っていた二億円の麻薬の行方は? 組を支える任侠道一筋の佐久間、泉に憧れる同級生三人組、ハンサムな中年刑事、抗争を繰り返す二大組織暴力団らが入り乱れ、事態は奇想天外な方向へ……。
気鋭赤川次郎が、軽快なタッチで描く、青春ユーモアミステリーの傑作。》
島田一男『熱海・スカイライン殺人事件』トクマノベルズ・1990年
《おれの名は松平利春。不自然な死に方をしたホトケさんを解剖し、検死する監察医だ。口の悪い奴は、松平死後守なんぞと呼びやがる。だが、まぁ、こうもおれの出かけた先で事件が起きりゃ、それもいたしかたないか……。今回の事件は、いままで経験したなかでも一、二を争う凄惨なものだ。とにかく次々と人が死ぬ。まず伊豆スカイラインで、一服盛られた運転手のバスが衝突事故を起こして二十人以上が死んだ。さらに老女が首を紋められ、若い娘は転落死……。さすがのおれも悲鳴をあげたくなるような、とんでもない展開になってきた!》
島田一男『配達された死体―特命刑事千崎進吾』トクマノベルズ・1988年
《伊東の夏は人出も多く、暑い。猛暑に音をあげたい千崎進吾だった。だが、想像を絶する猟奇事件が、そんな気分を凍りつかせてしまった。始まりは指だった。掏摸のスッた小銭入れから見つかった。さらに新宿御苑、蒲郡、浅草寺、三谷温泉、三保の松原、三嶋大社、強羅などから、次々と指や腕が発見された。事件を追って東奔西走する千崎だったが、犠牲者が三人の女性であるということ以外、手がかりは皆無に等しかった。全国各地の景勝地に死体をバラ撒く犯人の狙いは何か? 最後の事件に挑む特命刑事・千崎進吾の活躍!》
夢枕獏『獣王伝―夢枕獏ワールド』角川文庫・1987年
《ただよう妖気。炸烈するパワー・アクション。天を突きぬける凄まじい官能。幻想的宇宙的神秘。怪奇と悪夢。そして、魔獣、妖獣、幻獣、神獣――あらゆるすべての“獣ノ王”夢枕獏の疾走する圧倒的な世界。
――現在をうかがわせる初期短編。ロング・インタビューによる作品世界とSF的日常生活案内。イラストレーター天野喜孝氏と語った未来の夢。同人誌時代に綴った小文。おどろしき〈異界〉に活躍する作品のヒーロー列伝。そして、何と菊地秀行氏の友情執筆……。
夢枕獏のパワフルな魅力を満載した、摩訶不思議の〈夢枕獏ワールド〉へようこそ!》
イプセン『ヘッダ・ガーブレル』岩波文庫・1996年
《ヘッダは美しく魅力的。暇で退屈だが自分では何をしたらいいのか分らない。そして何もしない。でも他人の成功には平静でいられない。強そうで臆病、望みが高いが平凡、気位が高いくせ嫉妬深い。一八九一年の初演以来、女優たちの意欲をそそる役柄の一つとなった。》
ジークムント・フロイト『メタサイコロジー論』講談社学術文庫・2018年
《一九一五年、精神分析の根本的な構築を企てたフロイトは、一冊の書をなすべく一二本の論文を一気呵成に書き上げる。しかし、結果的に一部が発表されただけで終わったその書『メタサイコロジー序説』は幻となった。本書には、一二本のうち、現存する五篇と後世に発見された草稿一篇のすべてを収録。第一級の分析家による決定版新訳が、ここに完成。》
小泉悠『ウクライナ戦争』ちくま新書・2022年
《2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、第二次世界大戦以降最大規模の戦争が始まった。国際世論の非難を浴びながらも、かたくなに「特別軍事作戦」を続けるプーチン、国内にとどまりNATO諸国の支援を受けて徹底抗戦を続けるゼレンシキー。そもそもこの戦争はなぜ始まり、戦場では一体何が起きているのか? 数多くのメディアに出演し、抜群の人気と信頼を誇る軍事研究者が、世界を一変させた歴史的事件の全貌を伝える待望の書き下ろし。》
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