角川文庫の大藪春彦と梶山季之の古本がまとめて手に入ったので、装幀辰巳四郎率が上がった。
橘上+松村翔子+山田亮太『TEXT BY NO TEXT』(全4冊セット)は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
長山靖生『近代日本の紋章学』青弓社・1992年
《モダンな幾何学的思考と邪悪なる精神。乱歩、虫太郎から小酒井不木、海野十三まで、ユートピアと戦争の時代を駆け抜けた冒険者達の夢見る眼差しを通し、近代日本の場所を検証する精神の系譜学。》
高杉良『広報室沈黙す(上)』講談社文庫・1987年
《東京・新宿にある損保界名門の世紀火災海上保険は、大揺れに揺れていた。経済誌『中央経済』に、一年も前の大蔵省監査に絡んで、社内の恥部がデカデカと掲載されたのだ。「こんな記事を書かせていいのか」「なんのための広報課だ」――上層部からの理不尽な圧力に、広報課長木戸徹太郎の悩みは深まる。》
高杉良『広報室沈黙す(下)』講談社文庫・1987年
《権力に執着しつづける会長、その会長に追従するしか能のない、そのくせ会長を煙たがっている社長、その社長を無視して独断専行に走る常務、面子を潰された復讐心も手伝って、異常なまでにシビアな監査を行う大蔵省――。どこか何かが狂っている企業の中で問われるミドルのビヘイビアを鮮烈に描く問題作!》
高杉良『大逆転!―小説 三菱・第一銀行合併事件』講談社文庫・1983年
《三菱銀行・田実渉、第一銀行・長谷川重三郎、二人の頭取の間で秘かに進められていた合併工作。しかし巨大すぎる相手はいずれこちらを呑み込む……第一銀行の消滅を阻むべく、たった一人反乱に立ち上がった常務・島村道康の苦悩と闘争、勝利への日々を描き、企業に身を挺して尽くす“使命”とは何かを鮮烈に問いかけた、企業小説の記念碑的傑作。》
横田順彌『奇想展覧会』双葉文庫・1990年
《「ショート・ショート」32本一挙大公開!! 横田順彌氏の奇才、いや鬼才横溢ぶりをとくとご覧じろ。よくまあ、こんなストーリーが作れるものだ、とあきれながらも、思わずひきずり込まれること請合い。なにしろ「荘戸翔人氏の短い人生」と題して、アッという間に9篇のショート・ショートを作ってしまう達人なのです。さあ、覚悟をきめてお読み下さい。》
収録作品=シルバーシート/ママの身の上ばなし/老婦人の悩み/クラス会の夜/宇宙間結婚/「釈迦伝」抄/長寿世界一/娘の嫁ぐ日/地球強奪略奪作戦/カエルの目/ピーマンと少年/たったひとつの用途/桃太郎殺人事件/へたな鉄砲/うそつき弥次郎・海外篇/D-51物語/幸せな男/女と男/だるまさんがクローンだ/魔法のランプ/鍼治療/羅生門の鬼/人喰い人種/膨張する宇宙/満月・人間・狼/死神/外来患者/悪魔との契約/キリマンジャロの雪※/左甚五郎秘聞/荘戸翔人氏の短い人生
横田順彌『天使の惑星』新潮文庫・1985年
《天使そっくりの姿形をした人たちが住む惑星エンジェル。インフルエンザの特効薬を届けた俺に、すべての人が、陽気で親切だった。そして、怪我で入院した俺の前にあらわれた白衣の大使そのままの美人看護婦。ところか彼らはその天使のような姿とは逆に、根っからの悪党だったのだ……。表題作をはじめ、奇想天外なアイデアと溢れるユーモアで描く抱腹絶倒の13編を収めるSF傑作集。》
収録作品=犬たちの時代/天使の惑星/ある変身譚/屋台にいた男/非常着陸/大混戦“ロボット・ウォーズ”/泣く女/日本発熱/許可証/ゲーム/海野君の場合/使途不明/医師との遭遇
赤川次郎・横田順彌『二人だけの競奏曲』講談社文庫・1987年
《この連載を終えたときは、長い長いトンネルを出たような気分だった。ただ、同じテーマで、どう違う発想が出るかを毎回見るのは楽しみだった。機会があったら……二度とやるまいと思っている! ――赤川次郎
むずかしいテーマの連続で、毎回死ぬ思いをしたが、どうにかがんばり通すことができたのは、赤川さんという好パートナーのおかげだ。機会があったら……また、やってみたい。――横田順彌》
収録作品=アパートの貴婦人(赤川次郎)/死臭(横田順彌)/密室(赤川次郎)/追う男(横田順彌)/絶筆(赤川次郎)/『雪国』(横田順彌)/桃太郎の最期(赤川次郎)/異説・桃太郎(横田順彌)/雪女(赤川次郎)/幽霊の正体見たり……(横田順彌)/ちょっとした賭け(赤川次郎)/魔界のギャンブラー(横田順彌)/星を見る人(赤川次郎)/遅刻(横田順彌)/卒業式(赤川次郎)/卒業制作(横田順彌)/白鳥の歌(赤川次郎)/音痴のカエル(横田順彌)/余裕(赤川次郎)/たいくつしのぎ(横田順彌)/幻の恐竜(赤川次郎)/秘薬(横田順彌)/妻の味(赤川次郎)/訓練(横田順彌)/お札くずし(赤川次郎)/半端者(横田順彌)/昼下りの魔法使い(赤川次郎)/父と娘(横田順彌)/明日の〈あとがき〉(赤川次郎)/存在理由(横田順彌)
和辻哲郎『桂離宮―様式の背後を探る』中公文庫・1991年
《道長・忠通ら藤原氏ゆかりの地に、古今集の風景観をイメージして造られたという、桂離宮。簡素で調和のとれた建築・庭園の美は、ブルーノ・タウトを初め、グロピウス等の世界屈指の建築家を感動させた。
この美術史上の偉業をなしとげた、後陽成天皇御弟・八条宮とその周囲の人びと、江戸教養人の美意識、制作過程など、本書は様式の背後を克明にさぐる。豊かな学識と鋭く繊細な感性、そして流麗な文章。日本の美の極致を捉えた注目の美術論考。》
大藪春彦『沈黙の刺客』角川文庫・1979年
《鋭い光を放つ錐刀、そして特製のベレッタ・ピューマを武器に、信原邦夫は単身香港に潜入した。任務は、日本の銀行から20億もの大金を横領して逃亡した男たちをつきとめ、その金を奪い返すことだった。報酬は3億、信原にとっては悪くない仕事のはずだった。
が、娼窟とアヘンがはびこり、金と暴力とが支配する暗黒の街・香港で、信原の孤独の闘いが凄絶を極めるのは必然であった。……
ハーバード大学を卒業し、各国語に通じた一匹狼のインテリ刺客のアクションを描くホット・ノベル!》
大藪春彦『唇に微笑 心に拳銃(前編)』角川文庫・1978年
《秩序などはくそくらえ、俺は太く短く生きてやる――若林誠・29歳。女たちを痺れさせる頼りなさげな甘いマスクに、奥深い瞳に宿る不屈の光。彼は一介のサラリーマンから抜け出すために、射撃の腕を磨き拳法を習ってきたのだ。
そして今、ついに彼は現金輸送車を襲い、四人を殺して一千数百万円を手に入れた。だが、こんなはした金では満足できない。次の獲物は金持が脱税で貯め込んだ6億円だ。どうせ後には引けないのだ!
見事なガンさばきと、強烈なパワーでのし上がってゆく、若き豹を描く大藪春彦のアクション巨編。》
大藪春彦『唇に微笑 心に拳銃(後編)』角川文庫・1978年
《ついに目的を果たし、数億の金を手に若林はサラリーマンを辞めた。そして、女に会社を経営させ、札束に囲まれた優稚な生活を始めた。
が、彼の暗い野望はますます広がるばかりだった。彼は、菱和銀行から日銀に送られる30億の現ナマに目をつけたのだ。
その日、ウインチェスターが炸裂、オースチンが唸りを上げた。だが、陰でCIA仕込みのプロフェッショナルたち四人が、なぜか彼の犯行を注視していた。若林の宿命は……?
パラダイスを夢見る男たちの野望が交錯する、大藪春彦のアクション巨編。》
A・v・フォイエルバッハ『カスパー・ハウザー』福武文庫・1991年
《1828年、聖霊降誕祭のさなか、奇妙な野良着姿の少年がニュルンベルクの町に忽然と現れた。歩くのもままならず、満足に話すこともできない、その特異な言動は様々な憶測をよぶ――。“近代刑法学の父”が生涯最後に遺した、謎に満ちた観察記録は、ヨーロッパ中の関心を引き起こし、今日まで二千以上の文献を生んだ。原著からの本邦初完訳。》
柳田國男『なぞとことわざ』講談社学術文庫・1976年
《民俗学でやっている採集の綱目をあげてみると、あなたの生活ともつながりのある綱目がいくつも見出されるでしょう。ことに、いなかで育って、お年寄や親類などに取りまかれて生活をした人には、身辺に民俗学のたねが、ごろごろしているような気がするかもしれません(中略)あなたが協力できる学問があるということ──それを知ってもらいたいこともまた、この本を編集するときの1つの希望でもあったのです。(高藤武馬氏の解説より。)》
高木彬光『悪魔の嘲笑』角川文庫・1984年
《弁護士と自称する一人の男が、東洋新聞の編集部に特ダネを待ち込んできた。
だが記者が応待に出てみると、男は突然苦しみ出し死んでしまった。毒を飲んだらしいのだ。
しかも絶命する寸前、男は既に死刑判決を受けている殺人犯は白だ、と叫んで。
四年前、世にも奇怪な物語と世間を騒がせた「美宝堂事件」が、いまよみがえるのか。
混乱する捜査陣を嘲笑うかのようにもう一件殺人が――。
悪魔の知恵を持つ犯人に、名探偵神津恭介が挑む傑作推理。》
清水一行『処刑教師』角川文庫・1986年
《“卒業式の日に処刑する”――定規を当てたような奇妙な文字が、笠原のクラスの黒板に大書されていた。ツッパリ・グループにいじめられていた生徒が自殺したことで、いま三河島中学は大揺れに揺れていた。
自殺した生徒の担任であっただけに笠原の苦悩は大きかった。そしてそれに輪をかけてショッキングな事件が起きた。ツッパリの一人が、何者かに刺殺されたのだ。
そうした矢先の“処刑予告”だった。だが笠原より先に犠牲者が出た。ツッパリ少年のもう一人が校庭で惨殺されたのだ。そしてその夜、笠原も失踪した――ショッキングな展開のなかに、教育の荒廃、少年非行の果てに起こるものを追求した問題作。》
梶山季之『野望の青春(上)』角川文庫・1981年
《「帝都ホテル観光」は、二代目の牛塚太郎が社長になってから、大発展を続けている。彼は、若い頃は“のっそり太郎”と渾名されていたが、ある時、配下の一料理人の意見を聞き入れて、スキー場にロッジを建設、経営一切をその料理人に任せたら、これが大繁盛! 牛塚流の人材抜擢主義が功を奏し、これは従業員にも大きな魅力であった。
牛塚は奇想天外なことをする。今日の入社試験の最終面接テストも 一風変わっていて、受験生たちは全員“サウナ風呂”に招集されたのだった!
学生時代から“飲む・打つ・買う”の三拍子そろった白川英一。剣道三段の秀才タイプ、俳優にしたいほどの新発田雄二郎。豪放磊落で成績上位、三味線・太鼓をあつかう特技をもった中山豪三。彼ら同窓の三羽烏は、意想外のなりゆきにとまどうのだった……。
著者会心の長編痛快小説の決定版。》
梶山季之『野望の青春(下)』角川文庫・1981年
《資本金72億円、従業員は海外支店を含めると5000人の「帝都ホテル観光」の株価が、最近暴騰している。幹事証券会社に問い合わせても、原因がさっぱりわからないらしい。
ところが、社長の牛塚太郎や新入社員の中山豪三たちは、世界的なホテル王の息子・スリーJが来日しているという情報を聞いて、色めきたった。その外人は、ラスベガスではギャングを使ってホテルを乗っ取ったとか、ニースでは狙ったホテルの従業員――コックとか支配人、給仕頭などをごっそり引き抜いて、経営不振に陥らせてから買収にかかったとかいう凄腕の事業家だったからだ。株価の値上がりの原因は彼の来日に関係があるのか、早速、豪三たち三羽烏の奔放な活躍がはじまった! 長編痛快小説の最高傑作。》
花田清輝『新編映画的思考』未来社・1962年
《「映画的思考」とはなにか? 常に新しく鮮鋭な精神――19世紀末の象徴主義者の音楽的思考が、20世紀前半期における超現実主義者や抽象芸術家の絵画的思考や幾何学的思考に席をゆずったとすれば……。アヴァンギャルド芸術の否定の上に立つ、新しいレアリストは、映画的思考の持主かもしれません。「映画」やその周辺を語ることにより、真に新しい思考を導く、常にインターナショナルである著者の、鮮鋭な名エッセイ。》(講談社文芸文庫版内容紹介)
山室静『聖書物語』現代教養文庫・1968年
《聖書は西洋文明を支えるキリスト教の聖典であり、人類最大の古典といわれている。旧約聖書はユダヤの古代史であるが、そこには、神話や感動的な人間の記録や素朴な小説があり、また美しい詩歌が生き生きとうたわれている。キリストの一生とその教えを説いた新約聖書にも、キリストばかりでなく、様々な人間像が浮彫りにされ、深い感銘を与えると共に、慈愛に満ちた教えが身近な人生教訓となっている。
本書はこれらを物語風に記した親しみやすい聖書への手引書である。》
宮崎市定『史記を語る』岩波文庫・1996年
《司馬遷の著した中国最初の正史『史記』は、古代中国の社会と人間を生きいきと描きだし、日本でも広く親しまれてきた。中国史研究に多大な業績をのこした著者が60年にわたる『史記』研究にもとづき、『史記』の成り立ちと構造の全容の解明を試みた名著。『史記』の世界への格好の入門書。「『史記』の中の女性」を併収。(解説=吉川忠夫)》
ブライアン・M・ステイブルフォード『ハルシオン・ローレライ―宇宙飛行士グレンジャーの冒険』サンリオSF文庫・1980年
《暗黒星雲ハルシオン・ドリフトの周辺で遭難して二年、グレンジャーは、精神寄生体〈風〉に乗り移られ、木の葉や鼠で飢えをしのいでいた。ようやく救助されて地球に帰ったのもつかのま、船が回り道をした莫大な費用を請求された。むろん、彼にそんな金はない。折からそれを肩代りしようとの申し出があった。代償は? 財宝を積んだままドリフトのどこかから遭難信号を送りつづけている伝説的なロスト・スター号の捜索だった。だが、その周りは空間が歪んでおり、放射能を舎む塵が充満していた。そのため海図もない。自殺を勧めるようなものだった。それも〈かんむり白鳥〉を見て彼の気は変わった。しなやかな船体は関節と敏感な神経網を備え、パイロットと船が一体化して鳥のように飛べる超光速宇宙船なのだ。こうして彼の内部に巣食ってとかく余計なロ出しをする〈風〉と俄仕立てに集められた乗組員ともども発信源不明のローレライに誘われて飛び立っていくのだった。》
緒言(福永武彦) 詩人としてのボードレール(福永武彦) ボードレール年譜(福永武彦) 悪の華(初版)(福永武彦訳) 悪の華(再版)(福永武彦訳) 新・悪の華(福永武彦訳) 初期詩篇(阿部良雄訳) 拾遺詩篇(阿部良雄訳) 詩草稿(断片)(福永武彦訳) エピローグ草稿(断片)(福永武彦訳) 「悪の華」序文草稿(高畠正明訳) 弁護士のためのノートと資料(高畠正明訳) パリの憂愁(小散文詩)(福永武彦訳) 散文詩草案(阿部良雄訳)
橘上+松村翔子+山田亮太『TEXT BY NO TEXT』いぬのせなか座・2023年
《[いぬのせなか座叢書第5弾]
詩人にしてバンド「うるせぇよ。」のヴォーカルとしても活動する橘上が、2016年より続けるパフォーマンス「NO TEXT」。
読みあげる書物も付き従う戯曲も持たず、身一つで舞台に立ち、言葉を即興かつ高速に発し続けるその試みは、「朗読」や「(即興)演劇」といった既存の枠を超え、限界まで同期させられた思考と発語が新たに生み出す肉体/時間/言葉の存在を、奇妙なユーモアの奔出とともに雄弁に示してきた。
今回、いぬのせなか座が叢書第5弾として同時刊行する『TEXT BY NO TEXT』は、2018年に行なわれた「NO TEXT」3公演を引き受け制作される、4つの書物から成る。
ヴァーバル・アート・ユニット「TOLTA」のメンバーにして多数のインスタレーション・パフォーマンスにも関わる詩人・山田亮太が、「上演/記録」をテーマに組み上げる新詩集『XT Note』。
演劇ユニット「モメラス」の主宰・劇作・演出であり、俳優としても多数の作品で活躍する松村翔子が、実際の事件をモチーフに母と子、障害と虐待を描く渾身の戯曲『渇求』。
激しく空転する独白が言葉と意味を脱臼し、代え難いユーモアと切実さを放つ詩集『複雑骨折』などで知られる橘上が、「NO TEXT」での言葉の氾濫に自ら向き合い、その声と批評性を純化、増幅することで成立させた、6年ぶり待望の新詩集『SUPREME has come』。
さらに、企画の発端=素材となった「NO TEXT」3公演をテキ スト化し、「いぬのせなか座」主宰の山本浩貴がレイアウト、3公演の記録映像が視聴できるURLや本企画に関わる橘上のエッセイも複数収録する『NO TEXT Dub』。
「戯曲から上演へ」ではなく「上演から戯曲へ」。あるいは幾つかの即興を素材にして新たに書かれる思考と発語の所在――。
自由と従属のリミックスをめぐる4つのプロセスが、次なる上演に向けてここに隣接される。》
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