『丈夫な紙』は山岸由佳(1977 - )の第1句集。栞文:石寒太。
著者は「炎環」同人、「豆の木」参加。
汗ひいてゆき百年のシャンデリア
こゑ消えてプールに映る誰かの家
百合の花覗けば青き屍かな
鳥のやうに止まる絵の前春寒し
蟋蟀に呑み込まれたる小学校
鳥雲に入る階段をたなびかせ
白き蛾は夜景をはがれゆき北へ
うらみつらみつらつら椿柵の向う
アップルパイ雲海のなか分け合つて
包装紙ひらく一輪草の夜の
誕生日つめたき指の選ぶ本
魚の骨くづれ障子の向うがは
猫が来てゐる朧夜の浴槽
蛍の夜小さき体のまま老いる
手から手へ硬貨ながるる蛍の夜
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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