『天獄書』は安井浩司(1936 - 2022)の第18句集(遺句集)。監修:酒巻英一郎。
創世記這い出で来たる蛇女
七十(ななそじ)を過ぎれば人から貘の道
第七星としての地球を仰がんや
われ行けば躍る姿の大犬座
宇宙塵浴びつつ最後の性交を
名を呼んで引けば無尽のさなだむし
ドーヴァー海峡鮫に咬まれて波おんな
汝が詩(うた)をタルタル・ソースで戴かん
蟾蜍棄てても戻る膝の上
森の端に真火現われるスピノザよ
大熊座より転落の御祖父(じい)さま
双手入れ火を食うエトナ山の穴
天心はまた荒れはじむ月日貝
老母負い会いたき大谷の石ぼとけ
幻日めざす手綱付きのいるかもて
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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