装幀重視で、わざわざ古い版で読んでいる(というよりも中身に強い興味がない本は古い版でないと買わない)ので、赤川次郎『おやすみ、テディ・ベア』で作者に付けられたフレーズが「ミステリー界の若きエース」になっていたりする。
柳田邦男『空白の天気図』も新潮文庫版があったので読んだ。後に復刊された文春文庫版は標題のフォントが暑苦しくなっていた。
日原正彦『詩集 はやく来て―子どもの詩』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
川村湊『増補新版 牛頭天王と蘇民将来伝説――消された異神たち』作品社・2021年
《「疫病退散」の霊験ゆえに今も各地に伝わる民間信仰=蘇民将来の子孫とは。
近代天皇制下に圧殺された牛頭天王の由来をたどり日本人の魂の源泉を探る。
第59回「読売文学賞受賞」の秀作を新訂増補!》
日原正彦『詩集 はやく来て―子どもの詩』土曜美術社出版販売・2022年
近藤富枝『本郷菊富士ホテル』中公文庫・1983年
《谷崎潤一郎、宇野浩二、広津和郎、尾崎士郎、宇野千代、坂口安吾、竹久夢二など数多くの作家・芸術家が止宿し、そこから数々の名作を生み出した本郷菊富士ホテルー――綿密な取材で作家たちの交流と生活を鮮やかに描く大正文学側面史。》
生出寿『反戦大将 井上成美』徳間文庫・1987年
《開戦以来一貫して日米戦の非を唱えてきた井上成美中将は、昭和十九年八月海軍次官に就任した。井上は直ちに海軍大臣米内光政と共に終戦工作に乗り出す。米内・井上にとって終戦とは降伏を意味し、そしてそれは国土壊滅という未曾有の危機を救う難事業であった。海軍の中で、“非戦派”というよりもむしろ“反戦”の立場を貫き、終戦工作の立役者として活躍した最後の海軍大将の生涯。》
小森健太朗『大相撲殺人事件』文春文庫・2008年
《ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった! 立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司……本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。解説・奥泉光》
クラリッセ・リスペクトル『星の時』河出書房新社・2021年(日本翻訳大賞)
《地方からリオのスラム街にやってきた、コーラとホットドッグが好きなタイピストは、自分が不幸であることを知らなかった――。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」による、ある女への大いなる祈りの物語。
23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠が生んだ奇跡の文学。
「20世紀のもっとも謎めいた作家のひとり」(オルハン・パムク)
「カフカやジョイスと同じ正殿に属する」(エドマンド・ホワイト)
「オブライエン、ボルヘス、ペソアと並ぶ20世紀の隠れた天才」(コルム・トビーン)
「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
荒野からやってきた北東部の女・マカベーアの人生を語る、作家のロドリーゴ・S・M。リオのスラム街でタイピストとして暮らし、映画スターに憧れ、コカコーラとホットドッグが好きで、「不幸であることを知らない」ひとりの女の物語は、栄光の瞬間へと導かれてゆく――。》
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
西村京太郎『夜の探偵』集英社文庫・1985年
《前科者の烙印を捺され出所したばかりの元興信所の調査員・矢代に仕事の依頼がきた。成功報酬は500万円。写真の女性は売れっ子歌手だったが、矢代が惚れ、いま失踪中の浩子にあまりにも酷似していた。その上、依頼主の弁護士は手掛りを何も与えてくれない。プロダクション側も世間体をつくろい隠密裡に行動をとる。さらには、連続殺人事件へと発展し矢代の単独探索行はつづく……。スピーディな展開のハードボイルド調サスペンスの傑作! 解説・中島河太郎》
眉村卓『ショートショート ぼくの砂時計』講談社文庫・1976年
《世のなか全てが白か黒か、というわけにはいかない。ふたつの色のあいだに茫漠と拡がり、時が奇妙にたゆとう灰色の世界を、砂時計のなかで落ちつづける砂を見つめるような眼差しで、さりげなく、しかし残酷に描く、ハイブロウなショートショート66篇。現代人の孤独と倦怠。そのエッセンスをいま、あなたに……。》
収録作品=歩行者天国/屋上/さまよい/階段をあがると……/定年後/奇妙な家/実験用人形/週休二日/夢/公園/暁/山/雪国育ち/探しあぐねて……/美人/覗き見/怪獣/風呂/味/ディスク・ジョッキー/コーヒー/性格改造/悲しい男の話/催眠術/女房め/直感/あのころを……/注文どおり/「レース中」/交通渋滞/イチャモン屋/“自動”車/混線映話/高層アパート/虫/午後の部屋で/幸福の花/海底の人魚/地下街の女神/キューピッドの矢/応対/おかしな旅行/ある一日/私のカチカチ山/車/正念場/妙案/囲碁部員/読心力?/理論家たち/助けてくれ/ありそうな話/良心回路/取材/笑顔/突然の帰宅/いたずら/新公式/二十四時間時代/執念/オペレーター/整理マン/身元引受証明/入所命令/第九分店/社員
筒井康隆『ウィークエンド・シャッフル』講談社・1974年
《ウィークエンドには筒井康隆の本を!
血も凍る怪奇と血が騒ぐドタバタ喜劇
知的なユーモアと破廉恥なグロテスク趣味
しゃれたセンスのナンセンス
黒い笑い満ちた真っ赤なフィクション総結集》
収録作品=佇むひと/如菩薩団/「蝶」の硫黄島/ジャップ鳥/旗色不鮮明/弁天さま/モダン・シュニッツラー/その情報は暗号/生きている脳/碧い底/犬の町/さなぎ/ウィークエンド・シャッフル
赤川次郎『おやすみ、テディ・ベア』カッパ・ノベルス・1982年
《「探してくれ、熊のぬいぐるみを! 爆弾が入っているんだ!」――アパートで爆死した大学生・中原の部屋から、小さな女の子がテティ・ベアを持ち逃げしてしまった。しかし、その少女は中年の変質者に殺され、ぬいぐるみは主婦の浜本静枝の手へ。その彼女も、日ごろ冷酷な夫の仕打ちに耐えかねて夫を撲殺。ぬいぐるみをかかえた五歳の娘を残して自殺を……。ぬいぐるみは、また“死”を運命づけられた別の人間の手へ……。悲劇と不幸を呼びこむテディ・ベアの最後は!? 人間悲喜劇の種々相を鮮烈にえぐり、ミステリー界の若きエースが新境地を拓くユーモア・サスペンスの傑作!》
《一つの品物がさまざまな人の手を渡っていくうちに、いくつかの人生を垣開見る――こういう形式はオムニバスといづて、かつてフランス映画によく見られた。
それをサスペンスとユーモア仕立てでやってみたのがこの作品である。爆弾を縫い込まれた熊のぬいぐるみが、どんな悲喜劇にまき込まれるか、それを追いかける女子大生の冒険と、淡い恋心と……。
読者の心のスクリーンに、それぞれのエピソードが映し出されることを願っている。
「著者のことば」》
《赤川次郎が小説を書くきっかけとなったのが漫画であることは意外に知られていない。現在も活躍している手塚治虫や、横山光輝にあこがれ、漫画作りに熱中したこともある,絵に自信があれば続けていたかもしれない、と笑う。ユーモアとサスペンスとが渾然一体となった作風もその経験が影響しているのかもしれない。》
廣野由美子『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』中公新書・2005年
《批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。》
アレホ・カルペンティエール『エクエ・ヤンバ・オー』水声社・2021年
《キューバ黒人の日常に浸透する呪術的な信仰
サトウキビ畑で生まれ育ち、人妻と恋におち、殺人未遂をおこすが、ヴードゥー教と繋がった秘密結社に入り、結社間の抗争にまきこまれてゆく青年メネヒルドの運命。
どんな出来事も魔術的な性格をおびているキューバの黒人社会を躍動的に描いたデビュー作。》
アドルフォ・ビオイ・カサーレス『英雄たちの夢』水声社・2021年
《1927年、カーニバルに沸くブエノスアイレスの夜、主人公のエミリオ・ガウナは仲間たちとどんちゃん騒ぎをしたすえに意識もおぼろのまま《仮面の女》と邂逅する。女はいつのまにか消えてしまうが、疲労感のうちに人生の頂点をなす瞬間を経験する。あの夢のような体験をもう一度生きなおすべく主人公は3年後、ふたたび仲間たちを引き連れてカーニバルの夜にくり出すのだが……
ラプラタ幻想文学の旗手ビオイ・カサーレスによる,ボルヘスが《世界で一番美しい物語》と評した傑作。》
牧眞司『JUST IN SF』本の雑誌社・2016年
《“SF夏の時代”におくる最新最強ガイドブック誕生!
これが2010年代のSFだ!
"SF夏の時代"を彩る必読100作を徹底ガイド。一目でわかるジャンルマーク&次に読む本、詳細な著者情報付き!》
角田房子『墓標なき八万の死者―満蒙開拓団の壊滅』中公文庫・1976年
《五族協和を理想として教えられ、国のためと信じて大陸に生涯を捧げる決心で故郷の地を離れた満蒙開拓団――しかしその最期はあまりにも悲惨であった。綿密な調査にもとづく実録は、この悲劇の根源がどこにあるかを訴える。》
角田房子『甘粕大尉』中公文庫・1979年
《大杉栄殺害犯人、“王道楽土”満洲国の陰の立役者。悪人の名を冠せられた伝説の男甘粕正彦の波瀾の生涯を、綿密な取材で克明に描き、実像を据り起した伝記文学の傑作長篇》
長山靖生『日本SF精神史【完全版】』河出書房新社・2018年
《幕末・明治から現代まで、〈未来〉はどう思い描かれ、〈もうひとつの世界〉はいかに空想されてきたか。日本的想像力の系譜を辿る画期的通史。日本SF大賞・星雲賞ダブル受賞作の完全版。》
美郷ほのか『暴君のプロポーズ』ショコラノベルスHYPER・2009年
《海野商事に勤める雪村馨は、ラクロア王国の第二皇子が社長をしているL・R・コーポレーションとの商談のために、上司と共にラクロア王国を訪れた。だが、商談相手として現れたのは、パブリックスクールに在学していた七年前に、ある言葉とキスを残して消えたかつてのルームメイト、フランツ・エメリッヒだった。この再会が偶然ではないことを知って戸惑う馨に、フランツは当然のように「愛してる」と囁きキスを仕掛けてくる。そんなフランツの意図がわからず、冷たく拒んだ馨は閉じ込められてしまい――。》
森田季節『ウタカイ 異能短歌遊戯』ハヤカワ文庫・2019年
《短歌によって周囲の環境を変える異能「歌垣」を互いにぶつけあうスポーツ、「歌会」。歌聖高校に通う一年生の登尾伊勢は、最大のライバルであり先輩の朝良木鏡霞への燃える恋心をウタに乗せて、歌会の全国高校選抜トーナメントに挑む。個性派揃いの他校の少女たちとの試合を経て、伊勢の心に芽吹く鏡霞への新たな想いとは? コミック百合姫発・青春百合SFの傑作が、特別篇「幻と憎しみのマリネ」を加えて待望の文庫化!》
エリック・S・ラブキン『幻想と文学』東京創元社・1989年
《幻想とは何か。その本質を古今の文学に索めて,あるいはルイス・キャロルの不思議の国を逍遙し、あるいはボルヘスの八岐の園を彷徨し、幻想こそ人間の栄光の証しであると喝破する。》
角田房子『いっさい夢にござ候―本間雅晴中将伝』中公文庫・1975年
《「バターン死の行進」の責任を負い、昭和二十一年四月、戦犯としてフィリピンに果てた悲劇の将軍の武と愛の軌跡を克明に描き、人間本間雅晴像を浮彫りにする。》
井上ひさし『ことばを読む』中公文庫・1985年
《最も現代的な小説から、ノンフィクション、劇画、歌謡曲、そして辞典まで、多彩なことばを誠実に読みこみ、現代文学の拡がりと深みを明らかにする。スリルと愉しさいっぱいのひさし流書物探検記》
神坂次郎『熊野まんだら街道』新潮文庫・2000年
《聖なる冥府、熊野。その深く険しい山谷は、天皇や公家が救いを求め、名も無き衆生が浄土を目指して歩いた道である。「浄不浄、貴賤、男女を問わず」包み込む、熊野大権現の懐に抱かれる再生の旅である。西行も、南方熊楠も、斎藤茂吉も歩いたその道を、堺から高野山を経て、熊野三社をめぐり白浜に至るまで、全百五十八話の多彩なエピソードで綴る、現代版・熊野古道完全ガイド。》
柳田邦男『空白の天気図』新潮文庫・1981年
《昭和二十年九月、敗戦後間もない日本を未曾有の暴風雨が襲った。その名も枕崎台風。「齎した被害亦広島県の死傷行方不明三○六六名をはじめとし……」なぜ広島で……。人類最初の原爆による惨禍からわずか一カ月。廃墟の街で人々はどのような災害に巻き込まれたのか。気象台は何をしていたのか。綿密な取材によって明かされる、天気図の空白に秘められた知られざる真実。》
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