丹羽文雄『蓮如』全8巻(中公文庫)を古本屋で揃いで見つけ、高校の帰りに寄っていた神立ブックセンターにあったななどと思いながら買ってしまったら、史料の古文漢文がほぼルビ無しで頻繁に引用される文体で、思いのほか時間を食った。その後はまた体調を崩して何も読めずにいる。
ブルーノ・エルンスト『エッシャーの宇宙』も高校がらみで、図書室に買ってもらったものの再読。
装幀的に懐かしいのはサンリオ文庫のレッシング『シカスタ(上・下)』でシュルレアリスティックなカバー絵は山田維史。
上田信治『成分表』、北畑光男編『村上昭夫著作集(下)』、鈴木比佐雄『詩集 千年後のあなたへ』、加賀乙彦/鈴木比佐雄・宮川達二編『散文詩集 虚無から魂の洞察へ』は著者または版元から寄贈頂きました。
ブルーノ・エルンスト『エッシャーの宇宙』朝日新聞出版・1983年
《オランダの不思議な版画家M・C・エッシャーに魅了される人は彼の死後、ますます増加している。彼の代表作をほとんど収録し、生前の聞き取りや多くの下絵とともに、作品の謎を解き明かしたエッシャー研究の代表的文献。》
上田信治『成分表』素粒社・2022年
《有名漫画『あたしンち』の共作者にして俳人、漫画家のオットでもある著者による、初のエッセイ本。
漫画のネタを考え、俳句を書き・読みつづけてきた日々の暮らしから抽出された、この世界の「成分」。
いくつものディテールをみつめる、愉快な日常と思索の数々――
こんな書き手が、まだいたんだ。》
北畑光男編『村上昭夫著作集(下)未発表詩95篇・『動物哀歌』初版本・英訳詩37篇』コールサック社・2020年
《村上昭夫『動物哀歌』には後半の詩篇が割愛されていた!半世紀の眠りから覚めた新発見の95篇を収録。詩「サナトリウム」には宮沢賢治達との魂の対話が記される。(帯文より)》
鈴木比佐雄『詩集 千年後のあなたへ―福島・広島・長崎・沖縄・アジアの水辺から』コールサック社・2021年
《この詩集の中で最も古いものは一九九五年の詩「桃源郷と核兵器」だが、南太平洋でフランスが核実験したことに対して感じたことが記されている。そのあたりから私は原爆と原発について自らの最も重要なテーマとして考え始めた。その二十五年の歩みがこの詩集で一つの形になったようにも感じている。ただⅣ章には海を通して東北やアジアとの水辺のつながりを感じたこともあり、七篇ほど沖縄本島・石垣島に関する詩を収録した。(あとがきより)》
加賀乙彦/鈴木比佐雄・宮川達二編『散文詩集 虚無から魂の洞察へ―長編小説『宣告』『湿原』抄』コールサック社・2021年
《加賀乙彦氏は他家雄の内面を描く際にキリスト教の神父が避けていた「虚無」に向き合いその問いを深めていく。それはある意味でニーチェのニヒリズムの哲学への激烈な問いと重なっているかのようだ。しかし加賀氏は神の死ではなく神の再生を熱烈に「宣告」しようと願ったのだろう。国家は死刑囚に「宣告」をして死刑を継続しているが、他家雄を含めた死刑囚の悲劇的な経験から学ぶべきことは数多くあると告げる。鈴木比佐雄(解説より)》
隆慶一郎『かくれさと苦界行』新潮文庫・1990年
《徳川家康より与えられた「神君御免状」をめぐる裏柳生との争いに勝ち、松永誠一郎は色里・吉原の惣名主となった。だが、一度は敗れながら、なお執拗に御免状を狙う裏柳生の総帥・柳生義仙の邪剣が再び誠一郎に迫る。加えて吉原を潰すべく岡場所が各所に乱立し、さらに柳生の守護神・荒木又右衛門も江戸に現れた。ついに吉原と裏柳生全面対決の時が――。圧倒的迫力で描く時代長編。》
井伏鱒二『川釣り』岩波文庫・1990年
《人も知る釣りの名手井伏鱒二氏は、たんに技術にすぐれ獲物の量を誇るだけの名手ではない。釣竿を手に、伊豆の山、甲州の川へと分け入る氏が、自分の釣り場を思い出しながら書いた随筆や短篇小説を集めたこの一冊は、釣りの世界を語りつつ、人生の諸相をあたたかいユーモアにつつんで巧みに描きだす。(解説 飯田龍太)》
生島治郎『汗血流るる果てに』集英社文庫・1977年
《マフィアと香港暗黒街のボスを手玉にとる一匹狼の殺し屋ギルバート・スキャフィーノを、極秘理に調査していた国際犯罪捜査官の筧は、単身彼等の組織に潜入、イラン王室宝物館襲撃計画を摑んだ。荒涼たるシスタン地方の砂漠、香港、東京を結んでくり広げる男対男の血みどろの闘争の冒険ロマン。 解説・青木雨彦》
水野忠夫『ロシア文化ノート』南雲堂フェニックス・2001年
《文化のフィルターを透して、混迷する政治や経済の状況を読み取りたいと考え、書いてきたロシアに関するあれこれをまとめる。ロシアの文化の力を信じたいという思いを込めた一冊。》(「MARC」データベースより)
阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界』ちくま文庫・1988年
《《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立するきっかけとなった記念碑的作品。》
並河萬里『パレスチナ―砂に沈む太陽』中公文庫・1991年
《ペルシア、シルクロード、ボロブドゥール、マヤ・アステカなど、世界の遺跡、文化財を三十八年間にわたって撮りつづけてきた著者が、パレスチナとその周囲のアラブ諸国を旅しながら、一日本人として、観察し、経験したままを率直に書き記す。
取材中、第三次中東戦争にまきこまれ負傷するなど、国際カメラマンとして世評高い氏の原点ともいえる中東の、古代から現代までの臨場感溢れる歴史紀行。》
生島治郎『白いパスポート』集英社文庫・1977年
《過激派の爆弾で、婚約者伊都子を失った三友商社のエリート社員日疋は、犯人ダループを追ってベイルートヘ飛ぶ。そこで血まみれの戦いの場を利用して、利潤追求のためヘロインの密売を行なう企業上部の実体を知った。大量の麻薬をめぐって、武装集団との息づまる争奪戦がヨーロッパを舞台に展開される。 解説・尾崎秀樹》
亀山郁夫『終末と革命のロシア・ルネサンス』岩波書店・1993年
《ベールイ,スクリャービン,マヤコフスキー……ロシア的精神の天空を焦がした言語とイメージの革命.「ロシアの再生」の夢をかけた,その超近代的祝祭が現代に黙示するものとは.》
ドリス・レッシング『シカスタ―アルゴ座のカノープス(上)』サンリオ文庫・1986年
《その星はかつて「多産」や「繁茂」を意味する「ロウハンダ」と名づけられ、様々な生物が調和して生息し、アルゴ座のカノープスのコロニー中いちばん豊かで繁栄していた。
それがどういうわけか、エネルギーのバランスが狂い、生物が互いに殺戮しあう野蛮な星となって、「痛めつけられ、損傷を受け、傷ついたもの」を意味する「シカスタ」と呼ばれるようになった。
カノープスからシカスタヘ多くの使者が送られ、この堕落した星の再生がはかられる。その使者のうち最も重要な使命を帯びていたのは、ジョホーア(ジョージ・シヤーバン)だった。
「アルゴ座のカノープス」連作の第一巻『シカスタ』は、このジョホーアの報告書を中心に、シカスタの繁栄から没落が描かれる。》
ドリス・レッシング『シカスタ―アルゴ座のカノープス(下)』サンリオ文庫・1986年
《『シカスタ』は「アルゴ座のカノープス」連作の第一巻として、1979年に発表された。現代の英国文壇を代表する女流作家レッシングが、SF的な枠組を借りて、宇宙的視座から地球を描いた本書は、発表と同時に激しい賛否両論の渦に巻き込まれ、特にSFサイドからは強い批判が寄せられた。
しかし、もちろん本書はSFあるいはファンタジーといったジャンルに属する小説ではなく、一つの寓話あるいは神話として読まれるべきものである。
本書を含む浩瀚な五部作は、全体として、旧約聖書的な壮大な叙事詩となっている。》
丹羽文雄『蓮如(一)覚信尼の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《政変・争乱・飢餓に揺れる室町の世に、平安を求める庶民とともに生き、本願寺教団繁栄の礎を築いた中興の祖蓮如の生涯とその時代を描く丹羽文学の代表的歴史大作。蒙古襲来のころ誕生した新仏教親鸞の教義は、娘覚信尼、その孫の覚如にうけつがれていった。》
丹羽文雄『蓮如(二)覚如と存覚の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《北条氏滅亡の血なまぐさい時代を背景に、宗祖親鸞の教義を軸として組織化を夢みる覚知・存覚父子の間に、次第に確執が深まり、ついに、存覚義絶にまでその傷口はひろがっていった。大谷廟はその嵐の中で細々と守られていた。》
丹羽文雄『蓮如(三)本願寺衰退の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《南北両朝と足利将軍家の内紛は絶えなかった。宗祖親鸞の曽孫覚如は子の存覚を義絶していたが、妻の死後も心を許すことなく、組織化の夢を果たせず寂しく逝った。》
丹羽文雄『蓮如(四)蓮如誕生の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《関東では親鸞の高弟らによる高田専修寺派が進出した。人影もとだえがちの小さな大谷廟所は、これら関東の門徒に支えられていた。ここに八世蓮如は誕生した。》
丹羽文雄『蓮如(五)蓮如妻帯の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《父存如が没し、妻帯した蓮如は門徒の期待を背負って八代目住持となった。大飢饉が生じ、京の町には難民と餓死者が溢れた。こうした中で親鸞二百回忌が挙行された。》
丹羽文雄『蓮如(六)最初の一向一揆の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《戦乱あいつぎ、京は焦土と化した。隆盛期をむかえた本願寺が叡山によって破却されると、蓮如は北陸吉崎に別院を建てた。やがて一向一揆の嵐が吹きすさぶことになる。》
丹羽文雄『蓮如(七)山科御坊の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《北陸の農民門徒らによる一向一揆は、蓮如の説得、制止の努力もむなしく遂に起った。一揆鎮静を願い、やむなく吉崎を退去した蓮如は、山科の地に本願寺を再興した。》
丹羽文雄『蓮如(八)蓮如遷化の巻』中公文庫・1985年(野間文芸賞)
《本願寺住持職を五男実如に譲って大阪御坊に隠居した蓮如は、明応八年三月、親鸞思想の伝道者であり浄土真宗中興の祖としての八十五年の波瀾の生涯を山科に閉じた。》
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