『俳句詞華集 多行形式 百人一句』は林桂編著のアンソロジー。450部限定。
荻原井泉水
潦に残る夕日
繪本擴げをる露店
*
片平涙花子
小鳥がぢつと
雲のくづれる音をきいてゐる
*
富澤赤黄男
火を噴く山ははるかにて
………
草の芽
*
楠本憲吉
胸の都 ただれ
だれか 駆け抜け
夢の輪 くずれ
*
三好行雄
炎ゆる 琥珀の
神の
掌(て)の 襞
ひらけば
開く
歴史の 喪章
*
南日耿平
月魄 の
磁場 の
はじけた水銀の
微粒子の
あなた
の
微笑
の
冷たさ
*
岡田利作
死刑執行人ノ
正確キワマル
靴ノ音
*
下野博志
海鳴り や
闇に
ぶらさげられし肉
*
瓜生宏司
殻のない卵の群れて
だれかの
不眠
*
川名 大
甕沈む
万の禱りの
万の水甕
*
西野理郎
芽ぶく 球根
夜 は
恍惚 と
母ら 透き
*
江里昭彦
百里隔てて
あに
おとうとに
潮のみちひき
*
玉川 満
経絡や
昼の進軍
夜の交配
*
吉村毬子
爪ばかり
ところどころの
桃の時間
*
上田 玄
撃チテシ止マム
父ヲ
父ハ
*
※本書は編著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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