『さくらさくら』は伊藤晴子(1940 - )の第1句集。跋文:小倉英男。
著者は「春嶺」主宰。
おほむらさき翅をたためる石の上
木の実落ちムンクの月のくだけけり
麻布十番釣瓶落しの交差点
春の藁塚くづれひよこの孵る村
鳥獣戯画秋水のごと展べられし
雪の夜を灯して磨く蒔絵膳
光点となる一片のさくらかな
大年の闇がうごいてくるやうな
森ひとつ動き出したる霧の中
白ふくろふ貌をひらたく眠りをり
水母浮遊すうれしきかさみしきか
猫と老人さくら紅葉のあかるさに
木枯や皿沈みゆく夜の厨
兄の亡き不思議雪道歩き出す
繭ごもるやうに人老いほととぎす
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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