漫然としかししつこく体調が悪く、悪夢のなかでもがいているようで読めた冊数は随分減った。
読めたものも昔のSFの再読が多い。
造本装幀の懐かしさで新たに買ったのはカネッティ『マラケシュの声』くらい。以前図書館で読んだ『眩暈』も旧装幀版が欲しい。
日原正彦『詩集 はなやかな追伸』は著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
星新一訳『竹取物語』角川文庫・1987年
《『竹取物語』の大筋については、ほとんどの日本人が知っている。それほどポピュラーなこの物語が、世界で最も古い「SF」ではないかといわれている。アポロ宇宙船が月に到達して、人類が初めて地球以外の地に立ったのは、ついこの前のことだ。それよりも、何と1000年以上も前の日本に、月からやって来た美しい人がいた――という発想にはあらためて驚かされる。
SF界の第一人者が、わかり易い文章で、忠実に「古典」の現代語訳にいどんだ名訳! 章の終わりごとに書き加えられた訳者の“ちょっと、ひと息”が、この物語の味わいを、いっそう引きたてている。》
眉村卓『ショートショート ぼくの砂時計』講談社文庫・1976年
《世のなか全てが白か黒か、というわけにはいかない。ふたつの色のあいだに茫漠と拡がり、時が奇妙にたゆとう灰色の世界を、砂時計のなかで落ちつづける砂を見つめるような眼差しで、さりげなく、しかし残酷に描く、ハイブロウなショートショート66篇。現代人の孤独と倦怠。そのエッセンスをいま、あなたに……。》
収録作品=歩行者天国/屋上/さまよい/階段をあがると……/定年後/奇妙な家/実験用人形/週休二日/夢/公園/暁/山/雪国育ち/探しあぐねて……/美人/覗き見/怪獣/風呂/味/ディスク・ジョッキー/コーヒー/性格改造/悲しい男の話/催眠術/女房め/直感/あのころを……/注文どおり/「レース中」/交通渋滞/イチャモン屋/“自動”車/混線映話/高層アパート/虫/午後の部屋で/幸福の花/海底の人魚/地下街の女神/キューピッドの矢/応対/おかしな旅行/ある一日/私のカチカチ山/車/正念場/妙案/囲碁部員/読心力?/理論家たち/助けてくれ/ありそうな話/良心回路/取材/笑顔/突然の帰宅/いたずら/新公式/二十四時間時代/執念/オペレーター/整理マン/身元引受証明/入所命令/第九分店/社員
眉村卓『午後の楽隊』集英社文庫・1984年
《別に、何の変哲もないネクタイである。しかし、それを締めると人生が突然にバラ色に輝き、幸運ばかりがめぐってくるという。はて、それを買ったものかどうか……。平凡なサラリーマンの夢を描く「特権ネクタイ」ほか、未来社会や宇宙人がにぎやかに登場する笑いと不安のSFショート・ショート傑作選。 解説・影山 勲》
収録作品=知りつくした町/透明妻/図々しい客/空港を出ると…/鍵束の中に…/時間銀行/特権ネクタイ/窓の外/湖岸/伝説的社員/深夜のトラック/からくりとスケッチ/マジメ派/風鈴/駐車場/酔ったらいこう!/家庭設備診断員/むこうの機械/TS用ロボット/評価者/だいじな体/よくあること/社員証/四対三/T市民/移動機/何が?/通告/研究発表/海と月/だれも知らない味/かわいい個人用農園/飛び入り社員/泊めて下さい/やりすぎですなァ/本当の食通/特別訓練中/森山さんのパーティ
司馬遼太郎『歴史の中の日本』中公文庫・1994年
《司馬史観という言葉がある。歴史小説の世界に革命的な変化をもたらした著者が、圧倒的に読者をひきつけてやまないものは何か。それを人は司馬史観と呼ぶ。研ぎすまされた歴史観と豊かな創造力は、激動する歴史の流れと、その中に浮沈する多彩な人間像をみごとにとらえ、それをわれわれ現代人自身の問題として明快に解き明かす。》
呉座勇一『応仁の乱―戦国時代を生んだ大乱』中公新書・2016年
《室町後期、諸大名が東西両軍に分かれ、京都市街を主戦場として戦った応仁の乱(一四六七~七七)。細川勝元、山名宗全という時の実力者の対立に、将軍後継問題や管領家畠山・斯波両氏の家督争いが絡んで起きたとされる。戦国乱世の序曲とも評されるが、高い知名度とは対照的に、実態は十分知られていない。いかなる原因で勃発し、どう終結に至ったか。なぜあれほど長期化したのか――。日本史上屈指の大乱を読み解く意欲作。》
保坂和志『読書実録』河出書房新社・2019年
《詩人に教えられ、筆写をはじめた私。文が書かれる瞬間の流動性に身を委ねると、筆写は小説へと飛翔していきーー。権力の、そして自由の発生点にふれる、アナキズム小説の誕生。》
エリアス・カネッティ『マラケシュの声―ある旅のあとの断想』法政大学出版局・1973年
《モロッコの古都マラケシュの人びとの心に深く旅し、その話し言葉・叫び・呟やき・歌などの神話的・呪術的に響きあう聴覚上の世界に、失われた《原初の言葉の顕現》と《魂の始原の郷国》を探る。作者カネッティの死の意識の風景の中に、《マラケシュの内的現実》を鮮明に浮彫りにしたユニークな紀行文学的文明論。》
遠藤周作『口笛をふく時』講談社文庫・1979年
《汗くさい中学生小津と平目、そして彼等のアイドルの女学生愛子。稚ない青春を彩った日々も、戦争がすべてを変え、愛子の夫も平目も死んだ……。野心に燃える青年医師小津の息子は、新薬の人体実験に手を染め、それは皮肉にも愛子の死をもたらす……。麗しい過ぎ去った歳月と、親子を通して世代のズレを巧みに描いた感動の長編。》
井上靖『四角な船』新潮文庫・1977年
《人類絶滅の大洪水が襲来する日、ハコ船によって、救い出されるのは誰か? 大洪水を信じ、琵琶湖の畔りで、密かにハコ船の建造を開始したひとりの男がいる。深い学識の持主で、山中の旧い館に住む彼は、心を許す船大工に設計建造をまかせ、自分はその船に乗るべき人を捜す旅に出る……。奇妙な人物をめぐるユーモラスな物語のなかに、現代社会への鋭い風刺をこめた長編。》
遠藤周作『楽天大将』講談社文庫・1978年
《修道女を志す若い保母朝吹志乃は、自ら園児の身代りとなって誘拐犯人金山と逃避行をつづける。しかし、その金山は、白血病の宣告を受ける……。金山を、なんとかして人間の荒地から脱出させ、再生させようとする志乃の献身も、殆んど空しかった。錯綜する人間関係の中に、無償の愛に生きる女性の姿を鮮烈に描いた感動長編小説。》
武智鉄二『性の『花伝書』―秘すれば花――性愛の奥儀を求めて』ノン・ブック・1985年
《世界に比類のない「性の指南書」〈著者からのメッセージ〉
『花伝書』といえば、世阿弥が著した至高の能楽書であるばかりでなく、あらゆる日本の伝統芸術が手本としてきた「古典中の古典」です。そこには、年齢に応じた芸道修業の方法論や芸の本質である「花」を追究する精髄などが、薫り高く書かれています。
ところで私は、かつて、この『花伝書』の“能”の一字を“性”に置き換えると、そのまま世界に比類のない「性の指南書」となることに気づき、驚嘆したことがあります。たとえば、有名な「序破急」は、そのまま卓越した性の演出法となるのです。しかも、それは欧米の性科字書に見るような“単なる技術論”と違い、深い人間洞察に基づいているため、セックスを“心の融合”と捉えたとき、これに勝る教科書はない、とさえ言えるのです。
“バイブル”がもう一つ殖えた 俳優 佐藤 慶
芸に対する興味もさることながら、性についても人並みに好奇心の強かった私が、齢五十を過ぎて武智さんの“白日夢”によって、まさに性芸一如ともいうべき境地を体現させられた。
本書には、その時の私の苦闘ぶりも活写されていてキマリわるいが、ご白身の赤裸々な「イタ・セクスアリス」をはじめ、中国古代の性典『医心方・房内篇』の紹介、科学的には性交時の男・女呼吸法の違いなど、あらためて眼を開かれる“性”の深遠さが、勿体無いぐらいに詰め込まれている。世阿弥の『花伝書』は、古くから私たち演ずる者のバイブルとされてきたが、今日からはそれにもうひとつ、この『性の花伝書』を付け加えなければなるまい。
“性”に花を咲かせる秘伝の書 観世流・能楽師 観世栄夫
僕の二十代、僕らは武智さんの評論に目を見張らされた。古典芸能にたずさわる者にとって、自分の進むべき道を教えられ、勇気づけられた。武智さんは、性というものの、人間の行動・意識を動かす力というものを早い時期から見据え、分析されており、それが、演出の面で、さまぎまな形となって花を咲かせた。
花といえば、『花伝書』をはじめ『花鏡』などの世阿弥の芸論も、武智さんにとっては自家薬籠中の書である。そして、その芸論にそって、今回、性の秘伝書を書かれた。
「面白さと珍らしさと花は同じ心だ」と世阿弥はいっている。
どうして、この書が、花を咲かせぬわけがあろう。》
柳美里『JR上野駅公園口』河出文庫・2017年(全米図書賞)
《一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。
高度経済成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして日本の光と闇……。
「帰る場所を失くしてしまったすべての人たち」へ柳美里が贈る傑作小説。 解説=原武史》
光瀬龍/大橋博之編『光瀬龍ジュヴナイルSF未収録作品集』盛林堂ミステリアス文庫・2021年
《日本SFを代表する星新一・小松左京・筒井康隆らとともに、多くのSF作品を世に残した光瀬龍。作風は幅広く、宇宙SFをはじめとして、架空戦記を含めた歴史改変ものを中心とする歴史小説・時代小説との積極的融合をはかった SF作品や、ジュヴナイルSF、青春小説、時代小説、歴史エッセイ、科学エッセイ、漫画作品の原作など多岐にわたっています。しかし、全ての作品が書籍化・単行本化されているわけではなく、現在気軽に手に取って読める状況ではありません。
本書は、単行本未収録作の中から、ジュヴナイルSFを中心に収録し、その面白さを改めて多くの方々に感じて頂きたく、『光瀬龍SF作家の曳航』(2009年、ラピュータ)を執筆された大橋博之氏の監修の下、刊行致します。》
収録作品=第2部夕映え作戦 指令 B―3 を追え/ダッシュ9.9/花冠作戦/作戦図 C を開け!/生き残る道-地球破滅の日-/とりかえたセーター/胸に火が燃えるとき/待っていた人/小鳥は夜うたう/月見草で待ち伏せ/なぜに呼ぶ/夜を追え!/時間旅行者をたおせ!/脱出への道
光瀬龍『ちょっと待ちな有平糖』徳間書店・1994年
《お江戸をにぎわす怪事件。菓子のようには甘くはないが腕には少々覚え有り。痛快、大江戸捕り物始末。》
収録作品=ちょっと待ちな有平糖/しょるとけく始末/金太郎飴はささやいた/揚麺膨の勝にて候/鯛焼の始まり/春色川浚え/輪夫留始末
三方行成『流れよわが涙、と孔明は言った』ハヤカワ文庫・2019年
《孔明は泣いたが、馬謖の首は斬れなかった。誰もが息を呑んだその理由とは――名軍師のがんばりが並行宇宙論へ飛躍していく表題作のほか、異種族の共存する世界でドラゴンカーセックスをテーマに繰り広げられる感動ファンタジイ「竜とダイヤモンド」、書き下ろしのアルキメデス×太宰治な寓話「走れメデス」など、『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』の著者が贈る、笑えて泣けて度肝を抜かれる奇想SF全5篇!》
収録作品=流れよわが涙、と孔明は言った/折り紙食堂/走れメデス/闇/竜とダイヤモンド
岡本太郎『青春ピカソ』新潮文庫・2000年
《二十世紀の巨匠・ピカソに、日本を代表する天才・岡本太郎が挑む! フランス留学時におけるピカソ絵画との衝撃的な出会いを冒頭に、スペイン時代から青の時代、キュービスム、そして「ゲルニカ」に到る、作品的変遷を辿りながら、その芸術の本質に迫る。さらに南仏ヴァロリスのアトリエを訪ね、ピカソ本人と創作について語り合う。熱い愛を込めてピカソを超える、戦う芸術論。》
伊藤穰一、アンドレー・ウール『教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン』NHK出版新書・2018年
《AIやロボットは人間の「労働」を奪うのか? 仮想通貨は「国家」をどう変えるのか? ブロックチェーンがもたらす「金融・経済」への影響は? 世界大学ランキング6年連続1位(英クアクアレリ・シモンズによる)の米国マサチューセッツ工科大学(MIT)でメディアラボ所長を務める伊藤穰一が「経済」「社会」「日本」の3つの視点で未来を見抜く。》
水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望 世界経済の真実』集英社新書・2010年
《現在の世界経済危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、四百年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。
資本主義の歴史的な構造変化を大胆に描いてきた異色のエコノミストと国家への深い洞察にもとづいて理論的考察をくりひろげる哲学者が、経済学者には見えない世界経済の本質を描く意欲的な対論。》
光瀬龍『アンドロメダ・シティ』ハヤカワ文庫・1980年
《絶対的に非人間的な空間――宇宙。そこに乗り出していった人類が、いや一人一人の男たちが出会う非情な運命を、透徹した筆致で描ききる作家、光瀬龍。そして、光瀬龍の放った記念碑的名作「表われた都市の記録」を生む母体となった一連の作品群〈都市〉シリーズ完結篇、幻の名作といわれた「アンドロメダ・シティ」がついに登場する。全宇宙の運命、そして個の運命の交錯を詩情豊かに記した表題作他、「出帆旗、宜候」、「西キャナル市2703年」、「宇宙飛行士たち」などの宇宙小説、また、時代小説作家の力量を示す「化仏往生」などを収める。》
収録作品=アンドロメダ・シティ/出帆旗、宜候!/宇宙飛行士たち/西キャナル市2703年/化仏往生
水野和夫『株式会社の終焉』ディスカヴァー・トゥエンティワン・2016年
《「より速く、より遠くに、より合理的に」から、「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」に。これを株式会社に当てはめれば、減益計画で十分だということ。現金配当をやめること。過剰な内部留保金を国庫に戻すこと。『資本主義の終焉と歴史の危機』を継ぐ著者渾身の書き下ろし。》
木村尚三郎『パリ―世界の都市の物語』文春文庫・1998年
《政治に文化に世界をリードしてきた都市パリは、いま二十一世紀に向けて新たに大きな変貌を遂げようとしている。その変化の五つの柱は、芸術、科学技術、歴史、スポーツ、コミュニケーションである。著者とともに、パリの街角を逍遙しつつ、歴史と文化の旅をし、この街の近未来を見据える。時代を超えた世界都市・パリの総合ガイド。》
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