あっという間に6月も過ぎてしまって、相変わらず不調とデスマ(月の後半だけ)で一向に積読本が片付かず。
松本清張『西海道談綺』は全8巻を全4巻に再編した新装版も同じ文春文庫から90年に出ているが、そちらだったら多分出てきても買わなかった。
新潮文庫のヘッセも新装版に大分切り替わっているらしい。もはや本屋が身近にないので検索しない限りあまり見かけることもないが。
関中子『誰何』は著者より寄贈いただきました。記して感謝します。
ラフカディオ・ハーン『日本の面影』角川文庫・1958年
《ギリシアの血とアイルランドの血をうけたハーンは、東洋の孤島に放浪の足を止め、「日本の魂の発見者」となった。この神秘的な浪漫詩人は、印象的な筆致で物珍しい生活と美と心を描いた。「盆おどり」など二十三篇収録。》
北杜夫『さびしい王様』新潮文庫・1981年
《役にも立たない帝王学だけ教え込まれて育ち、恋も政治も知らぬ幼児のような王様ストンコロリーン28世。オッパイを見ては、「あ、オレンジ!」などと呟いていたおく手な彼が、私腹を肥やす悪辣な総理大臣への反感からおこった革命の渦中で、すこしずつ人間の喜怒哀楽に目ざめ、純真な恋を感じ始める……。ペーソスとナンセンスの横溢する、おとなとこどものための童話シリーズ第一作。》
ヘッセ『荒野のおおかみ』新潮文庫・1971年
《物質の過剰に陶酔している現代社会で、それと同調して市民的に生きることのできない放浪者ハリー・ハラーを“荒野のおおかみ”に擬し、自己の内部と、自己と世界との間の二重の分裂に苦悩するアウトサイダーの魂の苦しみを描く。本書は、同時に機械文明の発達に幻惑されて無反省に惰性的に生きている同時代に対する痛烈な文明批判を試みた、詩人五十歳の記念的作品である。》
司馬遼太郎『土地と日本人―対談集』中公文庫・1980年
《〈戦後社会は、倫理をもふくめて土地問題によって崩壊するだろう〉この状況を憂える著者が、各界五人の識者と、日本人と土との関わり、土地所有意識と公有化の問題などを語り、解決の指針を提示する。土地という視点から見た卓抜な日本人論にまで及ぶ注目の対談集。》
ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』岩波文庫・1989年
《インド帝国の警察官としてビルマに勤務したあとオーウェル(1903-50)は1927年から3年にわたって自らに窮乏生活を課す。その体験をもとにパリ貧民街のさまざまな人間模様やロンドンの浮浪者の世界を描いたのがこのデビュー作である。人間らしさとは何かと生涯問いつづけた作家の出発にふさわしいルポルタージュ文学の傑作。》
小林久三『闇刑事』集英社文庫・1987年
《東京を舞台に熾烈な諜報戦が展開されているさなか、事件を追う警視庁の敏腕刑事・土岐功が何者かとすり替っているらしい!? 濃密な心理戦をくり返しながら事件は徐々に核心に迫ってゆく。闇が闇をおおう世界にとりこまれた男達の確執を描く、バイオレンス・ミステリーの極限値。 解説・権田萬治》
宮田律『中東イスラーム民族史―競合するアラブ、イラン、トルコ』中公新書・2006年
《アラブ・イスラームの正統な後継を自任し、イラク戦争後の新秩序を模索するイラク、サーサーン朝以来の繊細華麗な文化を誇り、核開発を巡って西欧諸国との対立を深めるイラン、多様性を内包し、EU加盟を目指してヨーロッパとアジアの境界を問うトルコ――。イスラームを共通の基盤としつつ、競合と協調を繰り返してきた三民族の歴史を辿り、米、欧、露、イスラエルを巻き込んで展開される地域のダイナミズムを描く。》
実吉捷郎訳『トオマス・マン短篇集』岩波文庫・1979年
《人間的な苦悩を芸術的情熱の火で浄めてゆくシラーの姿を浮き彫りにした「悩みのひととき」。精神的には優れたものを持ちながら、実生活の上ではみじめな馬鹿おどりをしているにすぎぬ「道化者」。その他「幻滅」「幸福への意志」「予言者の家で」など清新な創造意欲の息吹きにみちたマン(1875‐1955)の初期短篇から17篇を収録。》
収録作品=幻滅/墓地へゆく道/道化者/トリスタン/小フリイデマン氏/幸福への意志/トビアス・ミンデルニッケル/ルイスヒェン/餓えた人々/衣裳戸棚/神の剣/ある幸福/予言者の家で/悩みのひととき/なぐり合い/神童/鉄道事故
ピエトロ・アレティーノ『ラジオナメンティ』角川文庫・1979年
《ローマに住む中年女ナンナは、娘ビッパが年頃になったので身のふり方を考えなければならない。修道女にするか、結婚させるか、それとも娼婦に仕立てるか。じつはナンナ自身、この三つの世界を経てきているのだが、どれとも決めかねる。思い余って仲よしの女友達アントニアに、自分の体験談を話し相談に乗って貰うのだが……。
ポルノグラフィーの元祖アレティーノの代表作ともいうべきこの作品は、機智と風刺に溢れ、イタリア・ルネッサンス期の男女のけた外れの淫乱ぶりがあけすけに語られている。“デカメロン”と双璧をなすポルノの「幻の書」遂に翻訳なる。》
後藤久美子『ゴクミ語録』角川文庫・1987年
《ゴクミ(後藤久美子)は特別の存在だ。アイドルになる以前に、もうスターだった。
その自由奔放な発言には、現在の子供達みんながもっている、目に見えない新しいセンサーが、ふんだんに働いている。
その生な魅力をキャッチすることが、この本の目的だった。
取材のために過した数週間、編集チームはゴクミにふり回されっぱなしだった。
皆さんもどうか、ゴクミの刺激的な感性を、篠山紀信氏のスルドイ写真たちと一緒に充分楽しんで下さい。
プロデューサー 坂本龍一》
海野十三『太平洋魔城』少年倶楽部文庫・1976年
《魔の海域! しきりに海難がつづく太平洋上の一地点。そこには海魔がいるという。若い海洋学者太刀川時夫は探査におもむくが、航空機は謎の海上に墜落し彼は海底の大構築物中に虜になった。彼がそこで見た怪力線砲、恐竜型潜水艦は何をめざす? 血わき肉おどる冒険科学小説の力作。》
丸山俊一、NHK「欲望の時代の哲学」制作班『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』NHK出版新書・2018年
《話題沸騰! 若き天才哲学者の思想に触れる格好の入門書
著書が日本で異例の売れ行きを見せている“哲学界の新星”、マルクス・ガブリエル。2018年6月の来日時の滞在記録をまとめて大反響となったNHK番組「欲望の時代の哲学」を待望の書籍化。あのガブリエルが、誰にでも分かる言葉で「戦後史」から「日本」までを語りつくす! 世界的ロボット工学者・石黒浩氏とのスリリングな対論も収録。》
木村敏『あいだ』弘文堂思想選書・1988年
《人間は他の生物とともにしか生きられず、自己は他者を介してしか自己を形成しえない。
本書はこの根本的事実から出発し、これまでの精神医学的観点を一歩踏み出し、生物学的・生理学的観点から追求する。》
松本清張『西海道談綺(一)』文春文庫・1981年
《妻と密通した上司を斬り、妻をも廃坑につき落して逐電した伊丹恵之助。勝山からのがれる道すがら、お茶壺騒動にまきこまれて、北条宗全と名のる奇妙な実力者と知りあい江戸へ出てゆく。宗全の計らいにより養子縁組で直参旗本に変身し、名も太田恵之助と改め、密命をおびて、西国郡代手附として日田へ向うことになった……。》
松本清張『西海道談綺(二)』文春文庫・1981年
《太田恵之助はねんごろの仲になったおえんに、三年間待つよう別れをつげ、西国郡代手附として嘉助をつれて日田へ赴いた。彼の任務は隠し鉱山の銅の流失探査であった。前任者・鈴木九郎右衛門につづき、書役の村上平八もまた死体となって発見された。不審な山伏の集団、宇佐石体権現。恵之助は早くも任務の重大さを感じる……》
松本清張『西海道談綺(三)』文春文庫・1981年
《代官所の役人二人まで殺された現場近くの村で、太田恵之助が見つけた鏈石は、振矩師甚兵衛の調べで金を多く含んだ価値ある鉱石と分った。さらに津江筋の山崩れで多数の死者が出ていることに疑惑をいだいた恵之助は、浅からぬ因縁の甚兵衛と若党嘉助を頼りとし、山中の探索にのりだしたが、早くもさまざまの困難に遭遇する。》
松本清張『西海道談綺(四)』文春文庫・1981年
《江戸から太田恵之助を追ってきた柳橋芸者おえんは、湯山の宿で振矩師甚兵衛のつれていた白髪女お島のめんどうをみていた。が、宇佐石体権現の先達筒井秀観にみつかり、二人とも囚われの身になってしまった。さらに不審な行動をしていた代官所役人向井平三郎、若党の嘉助までも山伏たちにとらわれ洞窟にとじこめられてしまう。》
松本清張『西海道談綺(五)』文春文庫・1981年
《太田恵之助は、おえんたちを救出するため、単身山中に乗りこむ決心だった。手代浜島がこれに加勢し、山火事をおこして山伏たちを追いつめた。一方、山伏一味と通じて山中にあった代官所の向井平三郎は、おえんに横恋慕し、わがものにしようとひそかに狙っている。そしていったんは、おえんつれ出しに成功したのだが……。》
松本清張『西海道談綺(六)』文春文庫・1981年
《白髪女お島から聞かされた身の上話に愕然とする太田恵之助。破傷風にかかりながらも執拗におえんを追い求める向井平三郎。敵、味方入り乱れた山の中で、恵之助はかくし金山のあることをつきとめる。そこはおえんが捕われている山伏のすみかでもあった。頼みの綱の浜島孝介まで山伏一味に捕われ、恵之助は思案にくれる……。》
松本清張『西海道談綺(七)』文春文庫・1981年
《山伏一味から、太田恵之助に届いた書状の中には、殺したはずの妻が持っていた鬼蔦のかんざしの写しが入っていた。恵之助は、白髪女お島が志津であり、彼女を助けたのが甚兵衛だとさとる。その甚兵衛は、犬神宗族に助けを求めに行って帰らない。恵之助は、甚兵衛をあきらめ、単身隠し金山に乗りこむが、思わぬ罠が待っていた。》
松本清張『西海道談綺(八)』文春文庫・1981年
《山伏一味に捕えられてしまった恵之助。執拗に憎しみの炎を燃やしおえんをなきものにしようとする白髪女。甚兵衛が説得した犬神宗族の統領は村人の怒りをこめて、山伏秀観と呪術くらべを決行する。妖気をはらんだ対決をよそに、隠し金山の地底にとじこめられた恵之助たちは、さらに大きな法螺の音を聞いた……。解説・三浦朱門》
森奈津子『姫百合たちの放課後』ハヤカワ文庫・2008年
《「ああ、静香お姉様! 気高く清らかな白百合! わたくしがあなたを守ってさしあげます!」―サディストの魔手が迫る美しき先輩・静香の純潔を守るため、一計を案じた女子高生・純子の奮闘を描く表題作、オリンピック正式種目となった“自慰道”に懸ける青春「花と指」、地球外生命の侵攻から人類を救うレズビアニズムの奇跡「2001年宇宙の足袋」など、可笑しくも甘酸っぱい全9篇を収録する“百合コメディ”作品集。》
収録作品=姫百合たちの放課後/姫百合日記/放課後の生活指導/花と指/2001年宇宙の足袋/お面の告白/一九九一年の生体実験/お姉様は飛行機恐怖症/ひとりあそびの青春
野尻抱介『ふわふわの泉』ハヤカワ文庫・2012年
《浜松西高校化学部部長・浅倉泉の人生の目標は“努力しないで生きること"。文化祭を前に泉は、ただ一人の部員・保科昶とフラーレンを生成する化学実験を行っていた。そのとき学校を雷が直撃! 実験失敗と落胆する泉の眼前には空気中に浮かぶシャボン玉のような粒子が生まれていた。ダイヤモンドより硬く空気より軽いその物質を泉は“ふわふわ"と名づけ、一儲けしようと考えるのだが……伝説の星雲賞受賞作、ついに復刊》
野尻抱介『沈黙のフライバイ』ハヤカワ文庫・2007年
《アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する――静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。》
収録作品=沈黙のフライバイ/轍の先にあるもの/片道切符/ゆりかごから墓場まで/大風呂敷と蜘蛛の糸
高峰秀子『いっぴきの虫』角川文庫・1983年
《虫が好く、虫が知らせる――といういい方があるように、人の心の中にはいっぴきの虫が住んでいるらしい。それは動物的な勘でもあり、なにかをやり遂げる原動力のようでもある。
それらの虫の欲求にこたえて、一筋の道を歩みつづけ、功なり名を遂げた各界の著名人だちとの素敵な出会いを楽しいおしゃべりを交えて披露する。
女優として、主婦として、これまたいっぴきの虫にかきたてられて、懸命に生きてきた彼女の洞察力の鋭さとしゃれたユーモアがちりばめられた魅力あふれる人物エッセイ。》
向田邦子『無名仮名人名簿』文春文庫・1983年
《愚痴をこぼす代りに真赤になるまでおみおつけに唐辛子をかけていた祖父、しびれを切らす程待たせたよその主人に「お待たせしました」と言った友人、大きな目やにをつけていたジャン・マレー、記者会見で45分も演説したマーロン・ブランド。みずみずしい感性が日日の暮しの中から掬い上げた大人のためのエッセイ。解説・秋山加代》
ジョルジュ・ボルトリ『スターリンの死』ハヤカワ文庫・1979年
《1953年3月5日、スターリンの死は全世界を震撼させた。彼自身がすでに一つの時代となった。……本書は、スターリンの時代から次の時代への時の移り変りを、事実に基づいて克明に描いたものである。
スターリンの死の前後の一年間――“幻の敵”と戦うために立て龍ったダーチャ(別荘)での日常生活、ヴォルガ=ドン運河の開通式で高台に列する“戦友”と「偉大なスターリンに栄光を!」と歓呼する大群衆、強制のもとにあえぐ農民、熱狂的な第19回党大会の光景とその裏で吹きすさぶ粛清の嵐、暗黒世界のルビャンカ刑務所、収容所の囚人労働者、マレンコフ・フルシチョフ・コスイギンら後継者の周辺、非スターリン化、ベリアの処刑。
著者は、厖大な資料と当時の体験者の証言をもとに、人間スターリンを浮き彫りにすると同時に、史上最も知られていない部分を鮮かに再現し、それが現代にどのような関りをもつか、追究する。》
関中子『誰何』思潮社・2021年
《わたしを聞く
深い青に誘われる
一枚の枯れっ葉のようにシーツにひっついて
うす青い空に眺められる
地上から見えない日にも信じる
(「これくらい」)
青ずっぱい空、白く光る風、空を繕う真珠―ー人は21世紀の景を歩き始めたばかりよ。あのころの青と、いまの青は変わっただろうか? 湧き出る詩想にひかりを投げる新詩集。》
アイザック・アシモフ『暗黒星雲のかなたに』創元推理文庫・1964年
《銀河系諸国は、すぐれた宇宙航空技術を駆使するティラン帝国の圧制にあえいでいた。星雲諸国の領主の息子バイロンは帝国をくつがえし、諸国の自治を回復せんとする父の命令を受けて、地球大学に留学中だった。銀河系宇宙に縦横にはりめぐらされた帝国の強力なスパイ網、それに対抗する諸国の逆スパイ網、その渦中にとびこんで再三窮地を脱したバイロンは、反乱軍の根拠地である謎の惑星の所在を必死になって追求する。その惑星の所在は――暗黒星雲のかなたに!》
岬兄悟『風にブギ』ハヤカワ文庫・1986年
《ああ、なさけない! 26歳にもなって片想いで悩むなんて。と思いつつも行動力皆無のススムは悶々と小説を書く。その中で――沢野進は真夜中のコインランドリーで眠れる全裸の美女に遭遇する。しかも目覚めた彼女は自分の本当の体の持ち主を探してくれと進に頼むのだ。娘の正気を疑う進だが、ついついベッドを共にした結果、夜ごと筋肉男に意識を移しこの世と次元を異にする〈中間界〉に失踪した娘の意識を求めて魑魅魍魎と戦う大冒険を演ずるはめになるが……。リリカルな現実とエロティックで怪奇な虚構が不思議にやさしく交錯する異色長篇!》
河野稠果『人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか』中公新書・2007年
《二〇〇五年から始まった日本の人口減少。一〇〇年後には半減と予測されている。北・西ヨーロッパに端を発し、いまや世界人口の半分を覆った少子化は、なぜ進むのか―。急激な人口減少が社会問題化するなか、急速に脚光を浴びる人口学だが、戦前の国策に与したと見られ、近年まで疎んじられてきた。本書は、人口学の入門書として、人口の基礎的な考え方、理論、研究の最前線、少子化のメカニズムなどを平易に解説する。》
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