古本屋の百円本から古い食味エッセイの類を買い込んでしまった。
2月下旬から暇になった途端にこの時期恒例の低血圧の悪寒が出て、積み本消化は遅々として進まず。
澁澤龍彦『夢の宇宙誌』河出文庫・1984年
《「観念は、形象化する作用のなかに生まれる」(ホイジンガ)――多年、観念の可視化作用に関心を寄せてきた著者が、自動人形、遊戯機械、崎形、怪物、天使、アンドロギュヌスなどさまざまなテーマをとりあげ、多様なイメージに通底する人間の変身願望、全体性回復への意志、大宇宙と照応する小宇宙創造への情熱などを考察するエッセー集。著者六〇年代の代表作。》
冲方丁『微睡みのセフィロト』ハヤカワ文庫・2010年
《従来の人類である感覚者と超次元能力を持つ感応者との破滅的な戦乱から17年、両者が確執を残しながらも共存している世界。世界政府準備委員会の要人である経済数学者が、300億個の微細な立方体へと超次元的に“混断”される事件が起こる。先の戦乱で妻子を失った世界連邦保安機構の捜査官パットは、敵対する立場にあるはずの感応者の少女ラファエルとともに捜査を開始するが……著者の原点たる傑作SFハードボイルド》
吉本隆明『源氏物語論』ちくま学芸文庫・1992年
《『源氏物語』をひとつの小説作品として自由に読みとくと、その世界はどのように立ち現れてくるのか。作品をつらぬく無意識としての〈自然〉、霊異に対する人々の心のありよう、また歴史物語『大鏡』や『栄花物語』とのトポロジカルな同型性に着目し、作品の構造と深層を浮き彫りにする創見と洞察にみちた画期的論考。》
冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』文春文庫・2018年
《廃病院に集まった十二人の少年少女。彼らの目的は「安楽死」をすること。決を取り、全員一致で、それは実行されるはずだった。だが、病院のベッドには“十三人目”の少年の死体が。彼は何者で、なぜここにいるのか?「実行」を阻む問題に、十二人は議論を重ねていく。互いの思いの交錯する中で出された結論とは。解説・吉田伸子》
柳原敏雄『味をたずねて』中公文庫・1981年
《日本全国十二ヵ月移り変りの折々、古風な小正月の行事の内に北国の食生活を訪ね、南国の老舗に異国趣味の卓を囲む。
山菜鮮魚、豚骨あり駄菓子もあり、その足跡は長万部・十和田から、九州柳川・鹿児島に及ぶ、近茶流宗家による旅情に満ちた日本の料理探訪記。》
駒敏郎『東京の老舗 京都の老舗』角川文庫・1982年
《目抜き通りや小路の奥で、ふと立ちどまって、思わず中を覗きたくなるような夢のあるお店。そんな心惹かれる老舗を100店、東京と京都から選んでお届けします。確かな商いに徹して暖簾を守ってきたお店だけに信用充分、丁寧な案内をしてくれることでしょう。味の店から装いの店、日用雑貨の店から旅館まで、ちょっといいお店へあなたをお誘いします。》
水木しげる『不思議旅行』中公文庫・1984年
《ひっそりと隠れているもの、身辺にいるのに見えないもの、見えているのに気づかない人……。お化けはさまざまな場所に、千差万別の形をとって存在している。彼らはこの世とあの世を結び、人の運命を変えてゆく。体験を中心につづる不思議旅、お化け二十二話。》
神吉拓郎『たべもの芳名録』文春文庫・1992年
《鳴るは鍋か、風の音か。きぬぎぬの朝はやはり湯豆腐がふさわしい。また例えば、むかし花柳界では接吻をオサシミと呼んだがその謂れとは、等々。究極の愉悦とは、官能と精神がぴったりと結びついていなければならぬ、という。日々の食を材に、さりげないウンチクをかたむける芳醇端麗の語り。この作家ならではの美味探究の一冊!》
三隅治雄『祭りと神々の世界―日本演劇の源流』NHKブックス・1979年
《劇の起源は遠く神ごと・祭祀儀礼に発する――。沖縄から東北にわたる日本各地の祭りのなかに、劇の芽ばえとみえがくれの形成前史を辿るユニークな演劇起源論。》
春風亭柳昇『与太郎戦記』立風書房・1974年
《与太郎兵士――突撃開始!!
ここはお国を何百里……。人も知らない三流戦場に落語家兵士―柳昇がまき起こす涙と笑いの戦闘記録!
こんなおかしい戦記はない
柳家金語楼
あたしも山下ケッタローの昔兵隊落語をやってきましたが、この柳昇クンの本にはカブトを脱ぎました。こんなおかしい戦記はない。キマジメな柳昇クンの命がけの体験と落語家的センスが、みごとにとけあっている。》
五木寛之『箱舟の去ったあと』講談社文庫・1974年
《神が死んだあと、救済の箱舟の去ったあとに生をうけた我々に、この困難な時代を絶望して傍観するのではなく、闇の現実を自らの故郷として引受け、闇の中への旅立ちを訴えてやまぬ衝撃の討論集。
現代を生きる八人の論客と全エネルギーを傾け対決する思想と心情のドラマ。》
荒俣宏『アレクサンダー戦記1 魔王誕生』ハルキ文庫・1998年
《紀元前四世紀、ギリシアの辺境マケドニアに一人の王子が誕生した――世界を制覇する「神の子」との神託を受けて。その名はアレクサンダー。父王フィリッポスにも勝る知力と野望を持った王子は制覇の道を歩みはじめる。果たして彼は本当に「神の子」なのか? それとも「世界の調和を乱す者」なのか? 荒俣宏が放つ、歴史と幻想に彩られたファンタジー巨篇がいま、幕を開く!》
荒俣宏『アレクサンダー戦記2 覇王狂乱』ハルキ文庫・1999年
《父王・フィリッポス二世の暗殺死により、遂に誕生した若き王・アレクサンダー。小国マケドニアを率いてギリシア諸都市を着々と支配下においていく彼の前に立ちはだかるのは最強の帝国ペルシアとその王・ダリウス三世であった。「神の子」としての神託を受けて世界統一への道を突き進むアレクサンダーとの決戦の日が近づく! 征服王の波爛に満ちた生涯を描く一大ファンタジー第二弾。》
荒俣宏『アレクサンダー戦記3 神王転生』ハルキ文庫・1999年
《強敵ダリウス三世との戦いに勝利し、ペルシア帝国をもその支配下においた若き征服王・アレクサンダー。ギリシアの王、アジアの王として、彼の進む道はただ一つ、世界の王への道のみだった――。一方、世界と宇宙の秩序と調和をもたらす「プラトン立体」をめぐって恐るべき事実が明らかになろうとしていた! アレクサンダーの野望は、世界を破滅へと追いやってしまうのか? 一大ファンタジー完結!》
森本哲郎『ぼくの旅の手帖―または、珈琲のある風景』角川文庫・1977年
《モスクワ、アテネ、バグダード、ナイロビ、カサブランカ、ベルリン、そしてパリ……世界各国25ヵ所で味わった25杯のコーヒーのカップから生まれた「旅の手帖」。
サハラ砂漠の真中で星空を見上げながら飲むコーヒー、雨降る北欧のホテルで飲むコーヒー、そしてパリの街角のカフェのテラスで、道行く人々をながめながら飲むコーヒー、いずれもそのほろ苦い味と高い香りが、異国にある身をおもい出させ、旅情をかきたててくれる。旅人とは、自分が旅人であることを自覚している人間のことだ、と定義する著者の、真骨頂を示す珠玉の紀行エッセイ集である。》
木村尚三郎『色めがね西洋草紙』角川文庫・1981年
《ヨーロッパ各地で、密やかに、あるいはおおらかに繰りひろげられてきた男と女の愛の交歓。本書は、第一級の歴史学者による、ユニークな視点からの「もう一つの西欧史」である。
ここに示される人間の諸相は、教科書では決して学ぶことのできないものばかりであるが、それだけに生き生きとして魅力的である。深い才識とたくまざるユーモアで、等身大のヨーロッパを教えてくれる好著。》
西丸震哉『未知への足入れ』角川文庫・1984年
《この本は昭和35年に単行本が刊行された、西丸さんの処女出版物である。最初の海外調査旅行、南極用食糧の研究、動物との触れあい、音楽の話、酒の話、山や秘境の踏査行……と、その後の西丸さんの行動と考え方の原点がここにある。
本書では、題名のとおり、初めての体験に対する新鮮な驚きと喜びが、みずみずしく語られていて魅力的だ。うわべだけの世間の“良識”にとらわれないその文章の裡に、読者は、西丸さんの精神の柔軟さと、自然や人間に寄せるあたたかいまなざしを感じとることだろう。》
エドガー・ライス・バロウズ『時に忘れられた世界―太古世界シリーズ1』ハヤカワ文庫・1970年
《第一次世界大戦のさなか、大西洋上で、米人ボウエンは乗っていた客船をドイツの潜水艦に撃沈され、愛犬ノブス、見知らぬ女性リズとともに通りがかりの英国船に助けられた。そしてまたしても現れた潜水艦を今度は逆に乗っ取るが、何者かの手で計器を破壊され艦は針路を失う。あてどない漂流を続け、いつか彼らは周囲を峨々たる絶壁に囲まれた未知の大陸に到達――そこは猿人、原人、恐竜、翼竜、ありとあらゆる怪獣が跋扈する太古そのままの世界だった! 永劫の時の流れの彼方に没し眠り続けてきた死の世界が、ここに今再び悪夢にも似て彼らをとりかこむ……。》
西江雅之・吉行淳之介『サルの檻、ヒトの檻』朝日出版社・1980年
《文化人類学の「文化」と文化人の「文化」のちがいの検討から講をおこし、人間が設定された状況の中で“どのようにか”生きており、その“どのようにか”生きているということの背景には、どこか集団的に一致した面が見られる。それが“ある文化”を定義するものであり、畢竟、人間は文化という“逃れられない檻”に入っているという。座談の名手が軽妙な語り口で、多才な人類学者から地球上の人間の生きざまを、エピソード風にひき出してゆく。》
なだいなだ『鞄の中から出てきた話』集英社文庫・1985年
《“ストレス解消法”“煙草の止め方”“コンプレックスについて”などなどetc…。出るわ出るわ、あれやこれやの話題満載。現役の精神科医でもある著者が、複雑怪奇な人生のヒダに触れながら、ある時はユーモアを、ある時は皮肉をまじえて、現代の世相を鋭く抉る好エッセイ! 解説・竹田津実》
宮本常一『塩の道』講談社学術文庫・1985年
《本書は生活学の先駆者として生涯を貫いた著者最晩年の貴重な話――「塩の道」「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」の三点を収録したもので、日本人の生きる姿を庶民の中に求めて村から村へと歩きつづけた著者の厖大な見聞と体験が中心となっている。日本文化の基層にあるものは一色ではなく、いくつかの系譜を異にするものの複合と重なりである、という独自の史観が随所に読み取れ、宮本民俗学の体系を知る格好の手引きといえよう。》
豊田有恒『持統四年の諜者―小説・古代王朝』角川文庫・1978年
《時は持統四年(690年)今を去ること千三百年の昔のこと。たった一人、新羅の孤島で三十年間戦い続けた日本人兵士が帰国し、人々は熱狂的に歓迎した。
当時朝鮮半島では、新羅、百済、高句麗の三国が鼎立。新羅は唐軍と連合して百済を滅した。日本は、その百済を再興するため、四万二千もの大軍を朝鮮に送り、連合軍と戦ったが大敗を喫した。世にいう“白村江の戦い”。日本が戦った史上最初の対外戦争である。帰国した兵士は、その生き残りであり、日本軍再来を期しての残置諜者だったのだ! 表題作など、大和に統一国家が築かれる以前に割拠した大王たちの盛衰の謎をロマン豊かに描いた作品集。》
収録作品=歌垣の影媛/樟葉の大王/常世の虫/持統四年の諜者/崇りの墓
五木寛之『ヒットラーの遺産』講談社文庫・1977年
《ヒットラーが最後の夢を託した幻の秘密兵器とは? マスコミ世界の暗部を遊弋する二人の男が嗅ぎつけた奇怪な噂、謎の追及と共に浮び上る現代史の深い亀裂を描く表題作。異国の夜、ファドの調べを背に、長い尾を曳いて消えた二つの星の物語「暗いはしけ」。他に「暑い長い夏」「怨念コマソン館」「双面のヤヌス」を収録》
収録作品=ヒットラーの遺産/暑い長い夏/怨念コマソン館/双面のヤヌス/暗いはしけ
A・F・マルチャノ編『カルロ・スカルパ』鹿島出版会・1989年
《モダン・ムーブメントが置き去にした要素がいまだ活きづいている20世紀のイタリアの巨匠建築家カルロ・スカルパの創作活動の全貌を紹介。彼の建築哲学や思想を説き明かし、現代建築史上での位置づけを明確にする。》(「BOOK」データベースより)
最近のコメント