『凡海』は南うみを(1951 - )の第3句集。栞文:中田剛。
著者は「風土」主宰。
なめくぢの目鼻なく哭く涅槃変
伸びることうれしき春の蚯蚓かな
悼 藤本安騎生翁
深吉野の太き蕨を狩り残し
残花たどれば信長の焼きし寺
呑まれゆく蛙や脚を真つ直ぐに
猪臭し猪引きずりし雪もまた
瀧垢離にいつさい音の無かりけり
野菜くづ花とちらして冬田かな
かすみとも霾ぐもりともあはうみは
川涸れて骨の自転車骨の傘
春一番小石が靴に入りたがる
くちなはの水のごとくに岩すべる
入れ食ひの鯵や原子炉温排水
ずりずりと畳につぶす夜の蟻
見えぬ火が籾殻の山のぼりゆく
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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