古井由吉に死なれてしまった。高校生の頃に『山躁賦』に驚いて以来、作品の大半を読んできた作家だったので、訃報を受けとめかねている。近々何か探し出して再読することになると思う。
持田叙子・髙柳克弘編著『美しい日本語 荷風Ⅱ 人生に口づけする言葉』は編著者から寄贈を受けました。記して感謝します。
福本和也『謎の巨人機』角川文庫・1980年
《19時50分。東京国際空港では三分間に一機の割合で飛行機が離着陸し、管制官たちが最も緊張する時間帯である。黒木は、全神経を集中して各機に指示を与えていた。その時、緊急機の連絡が入った。エンジンに故障を来した極東航空のジャンボ旅客機が、緊急着陸を要請してきたのである。
木更津上空で連絡を絶ったまま計器着陸してきたその巨人機は、3150mの滑走路を、ほとんどいっぱいに使って停止した。だが、ドアは開かず、誰も降りてこない。直ちに機内が調べられたが、報告を聞いて黒木は呆然とした。機内では全員が死亡していたのだ!
航空小説の第一人者がサスペンス溢れる筆致で描く航空ミステリーの巨編。》
増田みりん『私がヒロインだけど、その役は譲ります』ビーズログ文庫アリス・2017年
《ヒロインと恋に落ちるはずの、学園の王子・東條昴。
幼なじみである昴のことが好きなライバルキャラ・美咲。
美咲のことが好きだけど、諦めたいと思っている蓮見。
そして、少女漫画のヒロイン・凛花に転生した私は――
『大っ嫌いなヒロインみたいな恋愛はしたくない!!』
こうなったら昴とのフラグを回避して、美咲様と昴をくっつけよう
……と思ったら、なぜか蓮見に協力しろと脅された!
しかもいつの間にか漫画と同じ状況になっていて!?》
佐藤愛子『娘と私の時間』集英社文庫・1979年
《“用事をさせること、説教を聞かせること。この二つの楽しみがなくて、なんで子供なんぞ、育てていけようぞ!” 怒り、嘆き、悲しみ、ときには突張り合い…娘の成長するさまを、愛子先生がユーモアを込め綴る。好評『娘と私の部屋』に続く爽やかエッセイ集、第2弾!! 解説・池田敦子》
吉野信『カラー版 アフリカを行く』中公新書・2002年
《アフリカといえば、広大なサバンナをさまざまな動物たちが闊歩する動物王国との印象が強い。だがアフリカの魅力はそれだけにとどまらない。雄大な滝、厳しい砂漠、近代的なビルが林立する都市など、その表情は驚くほど多様であり、またそこに生きる動物や人々もまた多様である。アフリカに魅せられ、三〇年にわたって撮り続けている写真家とともに、アフリカの「いま」を訪ねる。》
オーギュスト・ラシネ『民族衣装』マールカラー文庫・1994年
《オールカラーのビジュアル文庫シリーズ。類例のない美しい多色刷を驚きの低価格でお届けします。
本巻は『世界の服飾1民族衣装』のダイジェスト版。美麗な図版と簡明な解説でデザイン資料としても民俗学資料としても貴重な原典(約140年前にフランスで出版され、世界的に評価の高い服飾古典書”Le Costume Historique”『服装史』中の”Le Costume National”『民族衣装』)の一部を、どうぞお楽しみ下さい。》
オーギュスト・ラシネ『世界装飾図』マールカラー文庫・1994年
《オールカラーのビジュアル文庫シリーズ。類例のない美しい多色刷を驚きの低価格でお届けします。
本巻は『世界装飾図集成』全4巻の超ダイジェスト版。織物、彫刻、陶器、金銀・宝石細工、写本装飾、ステンドグラス、モザイク、etc… 古代から18世紀までの、世界中の壮麗、豪華な工芸美術のデザインをどうぞお楽しみください。》
中野雄『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』文春新書・2002年
《一六〇年にわたる時代の試練を乗り越えて造り上げられたウィーン・フィルの黄金の響き――マーラー、フルトヴェングラーなど、幾多の指揮者たちとの“音の戦い”によって鍛えられたこの音色は、小澤征爾のウィーン国立歌劇場音楽監督就任によって、その歴史に新たな一頁が付け加えられようとしている。東と西の音楽の出会いは、どのような音と響きを生み出すのか。いまクラシック音楽の故郷の一つウィーンで、新たなドラマが始まろうとしている。》
草野唯雄『人みな欲望を持つ』角川文庫・1985年
《私、写真マニアのルポライター真木信に正体不明の女から、奇妙な依頼があった。
近くにある団地を撮影してくれというのだ。しかもおかしな条件がついている。晴天の正午、真正面から、リアルに、一棟残さずフィルムにおさめよという。
一体、何が目的なのか。
仕事を請け負い、シャッターを切る私に、当然ながらさまざまな反応がおきてきた。
――無事に撮影終了。だがその翌晩、私は何者かに襲われ、おまけに依頼主の女が殺された。意表をつく設定で新境地を拓く著者のハードボイルド・ミステリー。》
内田康夫『追分殺人事件』FUTABA NOVELS・1988年
《春まだ浅い信濃追分駅近く、みやげ物店「ひいらぎ」の前で中年男の変死体が発見された。さらに三日後、東京は本郷追分に近い「八百屋お七の墓」の前でも中年男の変死体が……。二つの「追分」を結ぶ謎の糸は北海道へ連なり、奇怪な連続殺人の様相を深めていく。「信濃のコロンボ」こと竹村警部と警視庁・岡部警部の名探偵コンビの前に、追分節の哀切なメロディーが、数奇な運命に弄ばれた男たちの悲歌として迫って来た!!
――名探偵コンビの推理と、溢れる旅情を華麗に描く著者会心の長編旅情ミステリー!!》
羽生善治、NHKスペシャル取材班『人工知能の核心』NHK出版新書・2017年
《二〇一六年三月、人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破った。羽生善治は、その勝利の要因を、「人工知能が、人間と同じ“引き算”の思考を始めた」とする。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのか――。NHKスペシャル『天使か悪魔か─』の取材をもとに、その先を描く。天才棋士が人工知能と真正面から向き合い、その核心に迫る、“人工知能本”の決定版。》
ジミー・カーター、フェルナンド・カルドーゾ、グロ・ハーレム・ブルントラント、メアリー・ロビンソン、マルッティ・アハティサーリ、リチャード・ブランソン/吉成真由美[インタビュー・編]『知の英断』NHK出版新書・2014年
《「戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領」ジミー・カーター、50年続いたハイパーインフレを数か月で解消したフェルナンド・カルドーゾ元ブラジル大統領……ネルソン・マンデラのもとに集まった「知の長老たち」(エルダーズ)は世界の“困難”にどう立ち向かうのか。「核の問題をどうするか?」「国家の秘密は守られるべきか?」「日本は近隣諸国とどう向き合うべきか?」――現代最高の「知の実践者」6人が世界の課題と解決策について答える、大ベストセラー『知の逆転』に次ぐ第2弾!》
デズモンド・モリス『「裸のサル」の幸福論』新潮新書・2005年
《人間は霊長類の中で唯一、体毛のない「裸のサル」である――。そう断じてかつて世界的センセーションを巻き起こしたモリス博士が、今度は「裸のサル」の幸福の本質に迫る。競争、協力、達成感からダンスやSM、果ては麻薬まで、人間に幸福をもたらすあらゆる源泉を、動物行動学者の視点から網羅的に分析する。ヒューマニズムとは一線を画した全く新しい幸福論。》
川又千秋『火星の白蛇伝説 星界伝奇』中公文庫・2017年
《「蛇不老だ、捕まえろッ」火星辺境の町で素密素は荒くれ者から逃げる娘を助けるが…(第一話「火星の白蛇伝説」)。金星に降り立った怪人・達達の目的を突き止めて欲しいとの依頼を受け、素密素は謎の古代遺跡へと潜入する(第二話「金星〈閩歌城〉の秘密」)。スリルとロマンに満ちた幻想SF冒険譚! 短篇「〈嵐〉エンジン開発秘話」を併録。》
宇野千代『私はいつでも忙しい』中公文庫・2004年
《身辺のこと、人との出会い、またなつかしい回想をつづって、老いを知らぬ若々しい感情と、いつも前向きに生きてゆく人生の深い知恵があふれる、さわやかなエッセイ集。》
春日武彦『不幸になりたがる人たち―自虐指向と破滅願望』文春新書・2000年
《虎に喰われたかったのに熊に喰われて昇天してしまった主婦、葬式代がないからとアパートの床下に妻の遺体を埋めた夫、電動式自動遙拝器を作ってただひたすら「供養」する男などなど――世の中にはときどき、不幸や悲惨さを自分から選びとっているとしか思えない人たちがいる。しかし彼らは、この過酷な人生を生きてゆくために、奇妙なロジックを考えだし、不幸を先取りしなければ生きてゆけなくなった人たちなのだ。あなたの隣の困った人たち、それはもしかしたら私たち自身の姿なのかもしれない……。》
岩村忍『アフガニスタン紀行』朝日文庫・1992年
《モンゴル帝国のあの壮図を支えた勇者たちの末裔がアフガニスタンに住んでいる。そのチンギザイ族〈チンギス・ハーンに属する者〉を訪ねて8000キロ、本書は、昭和30年の京都大学カラコルム・ヒンズークシ学術探検の先駆となった踏査報告であるとともに、詩的感動をさそう記録文学である。》
原作:「艦これ」運営鎮守府『艦隊これくしょん -艦これ- 艦娘型録 携行型 2014年版』角川文庫・2015年
《300万人を超える提督(=プレイヤー)たちが楽しむブラウザゲーム「艦隊これくしょん‐艦これ‐」。本作が提督たちに愛される理由のひとつに旧海軍の艦艇の記憶を秘めた「艦娘」たちの存在がある。本書は、「艦娘」たちの情報を単行本『艦隊これくしょん‐艦これ‐艦娘型録』(2014年6月発売)を基にフルカラー400ページ超えのボリュームで再構築。「艦娘」たちを知る上で欠かすことのできないハンドブックがここに!》
中村紘子『チャイコフスキー・コンクール―ピアニストが聴く現代』中公文庫・1991年(大宅壮一ノンフィクション賞)
《初夏のモスクワで4年に1度、1ヵ月間にわたって催されるチャイコフスキー・コンクール。この世界で最も権威ある国際音楽コンクールの審査員として、これまで触れられることのなかった舞台裏を描くとともに、国際化時代のクラシック音楽の現状と未来を鮮やかに洞察する長篇エッセイ。1989年度大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。》
宇野千代『私のお化粧人生史』中公文庫・1984年
《生きて行くためにとにかく一歩踏み出すこと…何度失敗しても芽はちゃんと出るものです…恋愛は相手の心にテンポを合せることが大切…お化粧をしなくなった娘は危険です…失恋したら泣くだけ泣いて、外へ出ること…何歳になっても女性は「結婚適齢期」です…
いつも前向きに生きる人生の達人が、恋愛とお化粧と失恋の青春の体験をすべて打ち明けて、あなたに贈る、親切な人生案内》
堀田善衞『めぐりあいし人びと』集英社文庫・1999年
《日本人では考えられないような深さ、すごみを持ったインドのネルー。モンパルナスの部屋で楽しく雑談をかわしたサルトル。刺身を豪快にたいらげる太宰治。逗子の自宅にかくまったアメリカの脱走兵。時代を切り取った人びととの交流のありさまが、いまふたたび生きて目の前に現われる。「広場の孤独」「ゴヤ」など幾多の傑作をものした戦後文学の巨匠が、初めて肉声で語る自伝的回想録。》
ぷにちゃん『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』ビーズログ文庫・2016年
《自国の王太子に婚約破棄を言い渡されたティアラローズ。「ここって私がプレイしていた乙女ゲームの中だ!」おまけに私が悪役令嬢!? どうやらゲームの悪役令嬢に転生してしまった! そしてストーリーはゲーム通りに進んでいく……のだが、ありえない出来事が! 隣国の王太子アクアスティードが、求婚してきた!! ここからはティアラローズにもまったく読めなくて!?》
カズオ・イシグロ『日の名残り』ハヤカワepi文庫・2001年(ブッカー賞)
《品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々――過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。》
宇野千代『水西書院の娘』中公文庫・1981年
《直吉をめぐる二人の女――花街生れの正子と盲目の少女とき子。ことばを超えた無垢の愛の原型を鮮やかに彫りあげた「水西書院の娘」と、焼跡の闇市から身を起しついに一流料亭の女将になった痛快老女の奮闘記「ママの話」。》
星新一『ごたごた気流』講談社文庫・1975年
《星新一の一見優しそうなまなざしの中には、はっとするほど鋭く、残酷な視線が隠されている。氏の強烈な刺すような視線を浴びると、今まで平凡なものに見えていた現実の中にふしぎな超現実が、平穏な生の裏に不吉な黒い死が、楽しい平和の背後に恐しい破壊と殺人がまるで二重像のように浮かび上がってくる。―――――――解説より》
収録作品=なんでもない/見物の人/すなおな性格/命の恩人/重なった情景/追跡/条件/追究する男/まわれ右/品種改良/門のある家/ごたごた気流
星新一『おかしな先祖』講談社文庫・1974年
《戸をあけると、ルパン三世、雪ダルマや宇宙人。変なのばかりが飛び出してくる「戸棚の男」。かみつかれたものなら何にでも、変身につぐ変身をかさねる自主性のない男の悲喜劇「オオカミそのほか」。アダムとイヴが、とつぜん現代に出現する「おかしな先祖」など。残酷なまでにさえかえった10の星新一SF落語。》
収録作品=心残り/とんとん拍子/戸棚の男/四で割って/ほれられた男/オオカミそのほか/倒れていた二人/ふーん現象/所有者/おかしな先祖
星新一『声の網』講談社文庫・1973年
《未来のある時代、あるマンションの一階に始まり、二階、三階……とつぎつぎにおこる異様な出来事。強盗の入るのが予告されたり、死んだはずの人間から電話がかかってきたり。そしてしだいに明らかとなる戦慄すべき犯人の姿。情報時代がついに生みだした奇妙な十二の物語を積み重ねた異色長編SF。》
竹田米吉『職人』中公文庫・1991年(日本エッセイスト・クラブ賞)
《江戸伝来の木造建築から近代建築へ移行する草創期の建築界と、今は滅びた明治の職人の世界、下町風情を、江戸前の歯切れのよい文章でいきいきと描いた好随筆。とりわけ当時の職人の気質・美風、生活などを綴った「職人」の1章は、父から聞いた江戸職人の話、また自らの体験とあいまって、興味深く語られており、職人の風俗史として貴重な証言となっている。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。》
プルタルコス『エジプト神イシスとオシリスの伝説について』岩波文庫・1996年
《モンテーニュ、ベーコン、ルソー……。エラスムスが「最も学識深き」と呼んだプルタルコス(46-125頃)の浩瀚な著作『モラリア』は、『英雄伝』とともに数多くの熱烈な愛読者をうんだ。その中の1篇、エジプトの理知の女神イシスと太陽神オシリスについての伝説を記した本書は、古代エジプトの宗教・風土を伝えて極めて興味深い。》
堀尾真紀子『フリーダ・カーロ―引き裂かれた自画像』中公文庫・1999年
《悲劇はバス事故に始まった――苛酷な身体的障害との闘いの果てに生まれた衝撃的な自画像の数々、リベラ、トロツキー、イサム・ノグチら時の文化人達を魅了し続けた華麗な遍歴。革命に揺れるメキシコに逝った伝説の画家の、悲壮にして艶やかな生涯と苦悩の芸術の秘密に迫る、日本人の手による初めての評伝。 横尾忠則×堀尾真紀子特別対談収録。》
岡本綺堂『玉藻の前』中公文庫・2019年
《金毛九尾の狐の物語「殺生石伝説」を下敷きにした、綺堂の長篇伝奇小説。平安朝、妖狐に憑かれ国を惑わす美女になった娘と幼なじみの若き陰陽師の悲恋を軸に、権力闘争にあけくれる殿上人や怪僧らが暗躍する。附録として短篇「狐武者」を収載。装画と口絵は山本タカトによる描き下ろし。本文には井川洗厓による挿絵を再掲。 〈解題〉千葉俊二》
持田叙子・髙柳克弘編著『美しい日本語 荷風Ⅱ 人生に口づけする言葉』慶應義塾大学出版会・2020年
《人生という残酷で美しい時間
永井荷風の生誕140年、没後60年を記念して、
荷風の鮮やかな詩・散文、俳句にそっと口づけするようなアンソロジー。
▼永井荷風「生誕140年・没後60年」記念出版。
▼荷風の美しい日本語を堪能できるアンソロジーを全3巻で刊行。》
左右社編集部編『お金本』左右社・2019年
《「キツト、キツト、お返しできます。」
「〆切」の次は「お金」! 累計5万部、話題の文豪アンソロジー最新作。友人に借金し、借りた金で酒を呑み、親の脛を囓り、執筆以外の金儲けを考える。現実と理想の間でもがきながら、今日を力強く生きるのだ。貯金は底をついても才能は枯渇しない。作家、実業家、ミュージシャンまで総勢96人、生きるか死ぬかのお金ばなし100篇。》
桜あげは『ある日、ぶりっ子悪役令嬢になりまして。1』レジーナ文庫・2018年
《ある日、階段から落ちた隠れオタク女子高生の愛美。なんとその瞬間、彼女は大好きな乙女ゲーム世界にトリップし、悪役令嬢カミーユの体に入り込んでしまった! この令嬢はゲームでは破滅する運命……。そこで愛美は、本来のカミーユとは異なる道を歩み、未来を切り開こうと試みる。その方法とは、魔法を極めること!? ところが彼女の思惑以上にシナリオが狂い出してしまって――。破滅フラグをなぎ倒せ! 痛快悪役令嬢ファンタジー、文庫だけの書き下ろし番外編も収録!》
小松左京・谷甲州『日本沈没 第二部(上)』小学館文庫・2008年
《海底に眠る「日本」の遺跡が慰霊祭で映し出される。日本列島が海の底に沈んでから二十五年がすぎていた――。
国土を失った日本人は、パプアニューギニアやカザフスタンなど世界各地に入植していたが、現地の人々との軋轢もまた厳然と存在していた。
一方、中田首相を中心とした日本政府の研究グループは国の復興のために、あるプロジェクトを密かに進めていた。旧日本海上に広大な人工島を建造する計画――だがそれは中国や北朝鮮など、周辺国との利害対立を生むものだった。 四〇〇万部ベストセラーの刊行から三十三年の時を経て、ついに描かれた衝撃の続編!》
小松左京・谷甲州『日本沈没 第二部(下)』小学館文庫・2008年
《日本列島の沈没は、単なる前触れにすぎなかった――。
断続的な冷害に襲われ、深刻な飢饉に見舞われていた北朝鮮に、中国が軍事侵攻した。日本列島の物理的消失により、東アジアの気象が大きく変動し、その影響も拡大していた。
日本政府は、もうひとつのプロジェクト――日本人の技術を結集した全地球の環境予測システム・地球シミュレータの実用化に乗り出す。皮肉にもそこにシミュレーションされたのは、地球全体を「新たな異変」が呑み込もうとする悪夢のような内容だった。
この地球の未来をも予測し、全人類に警鐘を打ち鳴らした世紀のSF巨編、堂々完結!》
風見くのえ『悪の女王の軌跡1』レジーナ文庫・2016年
《気がつくと、戦場で倒れていた大学生の茉莉。周囲には大勢の騎士がいて、茉莉に向かって「女王陛下」と呼びかける。どうやら今は戦のさなかで、自軍は劣勢に立っているらしい。てっきり夢かと思い、策をめぐらせて勝利を得たのだけれど……なんと、本当に女王と入れかわっていた!? その後わかったのは、戦の原因が女王の悪政にあることと、もう元の体に戻れないこと。そこで茉莉は、荒んだ国の立て直しを決意して――? 愛の軌跡の真実を描く、ミラクルファンタジー! 文庫だけの書き下ろし番外編も収録!》
風見くのえ『悪の女王の軌跡2』レジーナ文庫・2017年
《ある日突然、異世界のワガママ女王と入れかわってしまった大学生の茉莉。彼女は女王として生きる決意をして、崩壊寸前の国を立て直すべく、仲間達と動き出した。しかし復興の兆しが見えはじめた矢先、隣国との関係が悪化。さらに宣戦布告され、茉莉は国民を守るべく、自ら出陣することを決めた。地球で学んだ知識をもとに様々な策をめぐらせる中、女王と入れかわった謎にも近づいていき――? 愛の軌跡の真実を描くミラクルファンタジー、完結編!文庫だけの書き下ろし番外編も収録! 》
麻生ミカリ『この結婚、秘密にさせていただきます!?~旦那さまはイケメン声優~』ヴァニラ文庫・2016年
《高校時代の同級生・侑斗と、ついに結婚した真帆。ラブラブな新婚生活かと思いきや、二人の結婚は誰にも秘密。なぜなら、彼は人気急上昇中のイケメン声優だったから! 「真帆の全部、俺だけにちょうだい」耳元で囁かれる甘い声、肌をすべる淫らな指先。結婚までHはお預けだった初夜、侑斗に仕事の呼び出しが! 彼の仕事を応援したい真帆だけど!?》
遠藤周作『一・二・三!』中公文庫・1973年
《風が吹く。今年も憂鬱な大学入試の季節がやってきた。だがまたしても失敗して浪人生活四年目を迎えた二人の青年、「なあに、学歴だけが人生やない」と、ヤケクソまじりに盛り場にくり出し、奇妙な人物X氏と知り合い、マレー奥地のジャングルに元日本兵を探しに出かけることになった。さて、そこで起った数々の謎の事件――。傑作『沈黙』『死海のほとり』の作者が、独特のユーモアとペーソスをもって人間愛を追求する青春小説。》
遠藤周作『ヘチマくん』角川文庫・1963年
《“ヘチマくん”とは豊太閤の末孫豊臣鮒吉のアダ名である。容貌風采ヘチマの如くモッサリとして世知に疎く、底抜けに善良で人を疑ぐることを知らぬ。その彼がフト捲込まれた事件、それは海千山千のバー・マダムを相手取る鹿児島桜島の買地競争だった。現代に於ける人間性回復を訴えた「おバカさん」に次ぐ著者のユーモア長篇小説。》
筒井康隆『虚人たち』中央公論社・1981年(泉鏡花文学賞)
《同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはるかに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識しつつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。》
筒井康隆『霊長類 南へ』講談社文庫・1974年
《ひょんな事からついに始まってしまった地球最終戦争。空には巨大なミサイルが飛びかい、地には死の恐怖におびえる人人が逃げまどい、霊長類は水爆の落ちなかった南へ、南へと……。
極限状況のもとの人間の愚かさ、哀しさを壮烈に、残酷に描いた筒井康隆の最初のライフワークである長篇SF。》
筒井康隆『幻想の未来』角川文庫・1971年
《1億年後の地球。そこにはかつての人類の物質文明の繁栄は跡かたもなく、荒廃した岩山と砂漠だけがあった。ホモ・サピエンスの末裔たちは突然変異体としてさまざまな形態を待ち、また食人、近親交配、殺人等のタブーすら解かれていた…。SF界の俊才筒井が独自の想像力を駆使して描く未来の世界。他に「ふたりの印度人」等9篇。》
収録作品=幻想の未来/ふたりの印度人/アフリカの血/姉弟/ラッパを吹く弟/衛星一号/ミスター・サンドマン/時の女神/模倣空間/白き異邦人
トーマス・M・ディッシュ『人類皆殺し』ハヤカワ文庫・1976年
《町、農場、砂漠、ジャングル……あますところなく地球は一面、緑のカーペットにおおわれた。宇宙からの目に見えぬ播種者がまいた無数の微細な胞子は、いま高さ六百フィートの大木に成長しつつあったのだ。名づけようもない《植物》は草木を絶滅においやり、人類から土地を剥奪し、ついには人の生命を脅かし、加速的に繁殖する! 世界は崩壊して、文明は滅び去った……。広大無辺な宇宙に人類の卑小さを冷徹な目で見つめるディッシュが、従来の妥協的なパターンをまったく捨て去り、一片の救いも光明も残さぬかつてない破滅テーマSFへ、迫真の筆をふるった野心長篇!》
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。