『天空の鏡』は辻美奈子(1965 - )の第3句集。栞文:鈴木比佐雄。
著者は「沖」編集長。
蛍烏賊ほどを灯して授乳せり
いたいけな春の筍剝いてやる
はなびらの張り付いてゐる三輪車
絨毯のなかで迷子になる小鳥
あらたまの年純白の抗癌剤
病む父は冬の欅のやうである
新月や子が子を産んで酵母菌
子供らは果実のごとく春を待つ
産み足らぬからだよ杉の花粉症
夏掛を子等へ投網のごとく投ぐ
シリウスを覚えて吾子は十代へ
名のついてより猫の子の末子めく
とむらひののちの刈田の匂かな
スカイツリーは東京の杭終戦日
母われにだけ流星のまだ見えぬ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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