『黒き蝶』は蓬田紀枝子(1930 - )の第5句集。
著者は「駒草」前主宰、顧問。
牡蠣洗ふ笊に片寄る牡蠣のいろ
蟻出づる木橋の温さ渡りけり
蛇苺声を残して子ら過ぎぬ
青年の水しなやかに墓洗ふ
郵便局灼けて人無き浜通り
失つてしまへば兄に積もる雪
夫逝く
黒き蝶庇をくぐる夕立かな
本堂の涼しく広し赤子這ふ
水打ちて遠くへ飛ばぬ齢かな
雪くるかステンドグラスのみどり消ゆ
ヘルパーの帰る音する台風理
弟逝く
元日の礼拝堂へ置く柩
赤ん坊に見送られたる春の闇
大震災禍の閖上海岸を訪い一句
地震跡の雲雀野となる広さかな
朝顔の二つ萎え一つ咲く朝餉
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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