『百年』は金子兜太(1919 - 2018)の第15句集(遺句集)。後記:安西篤。
声美し旅の隣の姫始め
床の間に大蜘蛛垂れて羽黒山(はぐろ)なり
朝食べるバナナ亡妻笑いおる
秩父盆地皆野小学校はわが母校。そこを訪ねて尿瓶を語る 五句 より
後輩と尿瓶に冬のひかりかな
津波のあとに老女生きてあり死なぬ
積乱雲避難所にうずくまる老女
白寿過ぎねば長寿にあらず初山河
花は葉に鹿撃たれ谷川に墜ちる
干柿に頭ぶつけてわれは生く
山径の妊婦と出会う狐かな
雲巨大なりところ天啜る
集団自衛へ餓鬼のごとしよ濡れそぼつ
愛猫シン穴に入る蛇見送りいし
人よ生き他を謗(そし)り且つ満たされず
陽の柔わら歩ききれない遠い家
※本書は編者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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