『晩緑』は行方克巳(1944 - )の第8句集。
著者は「知音」代表。
空蝉に象が入つてゆくところ
秋風や野ざらしが口きけば父
サングラスはづせば只の秋の暮
鷹の眼のたれも拒まず何も止(とど)めず
踏切がへだつ成人式の二人
行春や輪ゴムのごとく劣化して
六月の花嫁(ジューンブライド)笑へといへば笑ひけり
炎昼のゴリラその一その二その三はわれ
考へるひとのかたちの溽暑かな
東京は住みよき荒地野菊かな
尋ね当てたれば障子を貼つてをる
木枯一号新宿の目が涙ぐむ
餅代といふボーナスのありしころ
初暦掛けて錆釘ゆるびなき
鈴ちりちり鳴らしてうかれ猫となる
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。