『茫々』は中嶋鬼谷(1939 - )の第3句集。帯文:恩田侑布子、栞:齋藤愼爾。
菜の花や傷に安らぐ飛鳥仏
リスト弾く小指するどき若葉風
氷柱しづく人差指に流しけり
朧夜のねぢり捨てたる稿軋る
陶窯(すゑがま)の罅よりけむり山つつじ
箱眼鏡鮎の真顔の過りけり
遠い木に風吹いてゐる雛祭
二〇一一年六月十日午後一時三十分、「原発さえなければ」
と書き残し、自死せし牛飼あり
板壁に牛飼の遺書やませ吹く
あばたなす裸の月と原発と
白南風の鉄橋をゆく鉄の音
ゆらゆらと腹見せて蟹沈みゆく
天心は宇宙の闇や木守柿
露寒や手細工の竹りりと割り
地層とは時間の屍鳥の恋
濡れそぼつ「カレーの市民」走り梅雨
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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