今月は後半、微熱と背の痛みがひどくなってろくに本が読めなくなった。
最寄のブックオフの閉店セールでまたBL本が増えてしまったので、その辺を消化してばかり。
鎌田東二氏の初の詩集『常世の時軸』は著者から寄贈いただいた。感謝します。
北杜夫『優しい女房は殺人鬼』新潮社・1986年
《繊細で心やさしい童話作家の私。この純粋無垢で純情な私が、結婚した娘に送金するために、悪寒と戦慄、恐怖と吐気に七転八倒しながら、バイオレンス小説を書きはじめた。家族のために死ぬ思いで苦労している私を、優しく美しく、知性もある女房が殺そうとしている。次々と襲う危険な罠、恐怖体験。私の妄想か、錯覚か?―ちっとも怖くない大恐怖ユーモア小説。》(「BOOK」データベースより)
中村真一郎『王朝物語』新潮文庫・1998年
《『竹取物語』にはじまったわが国の「物語」という文学形式は、平安朝とともに起こり平家滅亡とともに生命力を失い、室町時代にお伽草子という幼稚なジャンルのなかに埋没する。世界文学史上の奇跡である『源氏物語』とプルースト、カーニバル的感覚の『今昔物語』とラブレーなど、わが国の王朝物語の特質を外国文学との類似にまで言及した、かつて誰も成しえなかった壮大な文学論的随想。》
鹿住槇『きみに星をあげる。』もえぎ文庫・2010年
《傲慢そうで、嫌味なくらい美形の男……霞はバイト先の常連客・風岡がなんとなく苦手だった。しかし、遅刻しそうになった朝、強引に風岡に「車に乗っていけ」と誘われる。その後も何かとかまってくる風岡に、どうして自分なんか……と困惑する霞。そんなある日、酔った風岡に押し倒されて!? そのとき霞は、風岡の意外な一面を知ってしまうのだが……。
一見完璧に見える風岡と、コンプレックスを抱えた霞の、不器用な恋の行方は?》
鳥舟あや『暴君は狼奴隷を飼い殺す』ラルーナ文庫・2016年
《照国北方の都・吉佳。琥珀の髪に狼のごとき眼をした奴隷は、市場で城主のイェセカに買われシツァと名付けられた。お前は俺の為に何ができる、と尋ねられ、アンタの為に死ねると即答したシツァ――賢く働き者で、だがどこか死の翳を纏った狼奴隷にイェセカはいつになく執着を覚え、その逸物に金環を嵌めて使えなくした挙句、お傍付きとした。ある日、イェセカの弟である幼き皇帝トゥイシが、シツァを欲しいと言い出して…。》
南原兼『花嫁は男子校の番犬』もえぎ文庫・2011年
《黒凰館学院の「番犬」こと、生徒会役員で会長の側近でもある氷川冬一郎と和泉春樹は、かつてパリに留学した折、一度だけ身体を重ねたことがあった。それもあって全力で愛をぶつけてくる春樹に対し、冬一郎は彼に惹かれつつも理性とプライドが邪魔して応えられない。だが受験直後のある日、卒業旅行として訪れた冬の雪山で冬一郎と春樹がまさかの遭難! 二人は抱き合って寒さをしのぐはずが欲情してしまい……!?
番犬二匹の発情サバイバル。 》
橋本治『巡礼』新潮社・2009年
《いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの男は、いつ、なぜ、家族も道も、失ったのか。誰もが目を逸らすような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。》
伊郷ルウ『暴君の激愛』もえぎ文庫・2012年
《消息を絶った父親を探すため、インド奥地に赴いた蜂矢水晶。不思議な遺跡を発見するが、気づくと見知らぬ男たちに取り囲まれていた。そこは志把王が治める我叉羅王国だという。王宮に連れていかれた水晶は、引き合わされた王からいきなり花嫁の代わりを務めろと言われ、婚礼の儀を執り行うことに!しかもその日、本当に身体を奪われてしまう!逃げ出した水晶だが、彼を待ち受けていたのは…。 》
金沢有倖『逆らえねェよ!』ガッシュ文庫・2005年
《母親を亡くし、身寄りを頼って上京してきた兄の暁と眉目秀麗の弟・翠の前に現れたイトコの保護者様は、男前の大富豪!ところが、その保護者サマ・氷巳は兄弟の生活費・学費などの面倒を見る代わりに、暁の身体を要求してきた。男同士はもちろん女の子とだって経験のない暁は激しく抵抗するが、翠の将来を思うと、どうしても逆らえない。更に、翠にまでヤキモチをやいた氷巳は…。》
白露にしき『美人な俺が好きですか?』ショコラ文庫・2016年
《平凡な大学生活を送る春雪は友人の強い勧めで有名美容院を訪れた。場違いな空間に萎縮していると施術を終えたトップスタイリストの大迫が現れる。芸能人に劣らない彼の美貌に感心していた春雪だが目が合った大迫が突然「見つけた!俺のミューズ!」と叫んだ。春雪の高校時代の黒歴史である美人コンテストに出た時の最低だった女装姿を目撃していた大迫は、自分なら最高の“春雪”に仕上げることが出来ると熱弁を振るい、女装を持ちかけてきて…。》
成瀬かの『白虎の契り』角川ルビー文庫・2014年
《呪術師の家系に生まれた清夏は、成人の儀の直前に、銅鏡の裏側の世界に迷い込む。そこは人間に変化する様々な「妖」の住む世界で、元の世界に戻るには妖と契り、式神契約を結ばないといけないのだという。そこがいつも夢で見ていた景色と同じことに気付いた清夏は、懐いていた美丈夫・俐星を捜すが、彼の屋敷に姿はなく、仲間だという白虎のハクがいるだけ。けれど自分の体を狙う様々な妖から守護してくれる優しいハクに、清夏は次第に惹かれていくのだが…? ケモ耳ラブ♡》
御堂なな子『神狼さまの恋薬』幻冬舎ルチル文庫・2017年
《銀色の髪を持つことから街の人々に忌み嫌われていたトウリは、優しい祖父母と三人でひっそりと暮らしていた。ある日、街の長の娘の病気を治すため生贄にされそうになったところを、蔡牙という美しい神様に救われる。懐かしい匂いを纏う蔡牙に、次第に惹かれていくトウリ。だが、トウリには誰にも言えない秘密があって……。》
ケン・リュウ『紙の動物園―ケン・リュウ短篇傑作集1』ハヤカワ文庫・2017年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞)
《香港で母さんと出会った父さんは母さんをアメリカに連れ帰った。泣き虫だったぼくに母さんが包装紙で作ってくれた折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動きだした。魔法のような母さんの折り紙だけがずっとぼくの友達だった……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作など、第一短篇集である単行本版『紙の動物園』から7篇を収録した胸を打ち心を揺さぶる短篇集》
収録作品=紙の動物園/月へ/結縄/太平洋横断海底トンネル小史/心智五行/愛のアルゴリズム/文字占い師
山口瞳『家族』文春文庫・1986年
《府中の競馬場のパドックで川崎の幸町小学校での同級生石渡広志に、偶然会った。このことがきっかけとなり、私の川崎での幼時体験の記憶が動きだす。記憶のかなたにいるおぼろげな父の像。こわい夢がオーバーラップする……。前作菊池寛賞受賞の「血族」に続き、熱き愛で静かに父の実像を凝視した意欲長篇。》
井上ひさし『モッキンポット師の後始末』講談社文庫・1974年
《食うために突飛なアイディアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の“不良”学生三人組。いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師──ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作。》
西村京太郎『黄金番組殺人事件』徳間文庫・1983年
《視聴率30%を誇るNBTテレビの「ザ・リクエストタイム」のレギュラー5人が、ビデオ撮りのスタジオから忽然と消えた。そして2日後、NBT社長宛に5人の身代金5億円を要求する手紙がとどけられる。前代未聞の誘拐事件に戸惑う関係者をよそに、さらに人質の1人が死体で発見され、ご存知私立探偵・左文字進の登場となったのだが……。華やかな芸能界の舞台裏に渦巻く黒い人間関係を抉る会心の長篇推理!》
高木彬光『妖術師』角川文庫・1987年
《歳の差が倍も違う初老の夫との生活に倦んでいた麻耶子は、知り合いの大学生がもたらした“予言者”の噂を、とても信じられなかった。その男は人を喰ったような態度で「人間なんて名前など必要ない。顔を見ただけで、運命がわかる」と豪語し、麻耶子の現在・過去をズバリ言い当てたのだ……。
科学の力では説明できない神秘現象に巻きこまれ、煩悩の虜になった若い人妻の怪! 本格推理傑作集。》
収録作品=奇妙なお土産/四月馬鹿の殺人/一匹の蟻/犯罪の環/脱獄死刑囚/火の雨ぞ降る/食人金属/妖術師/廃屋/氷の花/薔薇の妖精
さとむら緑『いちご牛乳純情奇譚』ショコラ文庫・2016年
《いちご牛乳だけを糧に生きる人畜無害な吸血鬼のアキは、妖怪仲間とともに占い師として生計を立てている。ある夜、“薬売り”と呼ばれる妖怪退治屋に殺されかけたところを、近所に住む町医者の伊勢彦に救われた。優しくて男気のある伊勢彦は、詳しい事情も訊かず怪我の手当をしてくれた上に、その後も何かとアキを気にかけてくれる。初めてできた「人間の友達」にアキは夢中になるが、なぜか彼からは甘い美味しそうな匂いがして……。》
後藤明『南島の神話』中公文庫・2002年
《ハワイとポリネシアを中心に、各地の神話を紹介。英雄マウイ、女王ペレ、姫ヒナが活躍する南太平洋の創世、恋愛、穀物起源など、語り文化の豊かさを改めて確認する。日本との共通点も浮き彫りに。》
ジャック・ヒギンズ『非情の日』ハヤカワ文庫・1984年
《銃器密輸のかどで留置された元英国情報部の精鋭サイモン・ヴォーン少佐。釈放を条件に彼が情報部から要請されたのは至難の任務だった。IRAの一派に奪われた50万ポンドの金塊の行方を追えというのだ。件の一派より取引の打診を受けた武器商人はヴォーンの旧友マイヤー。ヴォーンはその代理人になりすまし、過激な武装集団の只中へ単身潜入を果たす。が、行手にはIRAの熾烈な内部抗争が招く殺戮と陰謀の嵐が待ち受けていた!
硝煙に煙るアイルランドを舞台に、『裁きの日』の主人公ヴォーン以下、多彩な登場人物を配して描く傑作冒険ロマン!》
白川静『中国の神話』中公文庫・2003年(改版)
《無体系のまま放置されていた中国の神話を、豊富な史料から発掘し、その成立・消失過程を、体系的に論ずる。これらの神話はアジアから、遠くギリシャ・ローマとモチーフを共有する。日本神話理解のためにも必読。》
天野かづき/原作・影木栄貴『BACK STAGE!!1』角川ルビー文庫・2011年
《超有名芸能一家・瀬名家のマネージャーである相楽玲は、スケジュール管理から瀬名家の世話まで完璧にこなすパーフェクト人間。ある日、瀬名家の次男で超オタクな大学生の泉水にTVCMのオファーが入る。嫌がる泉水をCMに出演させるため、超人気バンド「クラッシャーズ」のボーカルで(ブラコンな)瀬名家長男の聖湖に頼み込むが、当たり前のように代償を求められ…!? 影木栄貴×蔵王大志によるショート漫画も収録。話題の芸能界ラブ「LOVE STAGE!!」コラボ小説が登場♡》
梶山季之『苦い旋律』集英社文庫・1982年
《奇抜な求人広告に応募した一貫寺邦子は、下着メーカーのドリム産業・曄道征四郎社長の有能な秘書となった。花嫁修業で通っている茶道師範藤野登志子の手によって邦子は、異常な性の洗礼をうけ、官能の渦の虜になった。多彩な人間関係と、妖しい性の世界を巧みなストーリーの展開のなかで描いた鬼才・梶山季之の異色長篇。 解説・佐々木久子》
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』講談社学術文庫・2005年
《紀元後二世紀頃、ローマの一般大衆へギリシャの神話世界を伝えるために編まれた、二七七話からなる神話集。壮大なギリシャ神話の全容を網羅的に扱うためか、神話の骨子や人物の事績等がきわめて簡潔に綴られていて、作者は事典的性格を意図したものと推測される。作者のみが伝える神話要素も含み、ギリシャ神話の研究者・愛好家必読の書。本邦初訳。》
井上ひさし『江戸紫絵巻源氏 (上)』文春文庫・1985年
《奥州は館藩の藩主が遊女桐壺に生ませた落し胤の源次。質屋・光屋の養子となった源次は希代の巨根にものを言わせて母にそっくりの藤壺、若村さき、末次はなを初め手当り次第の女体行脚の挙句、ついには竜宮城にまで遠征する。玉手箱のご利益でこの世に帰って来た源次を待っていたのは……。奇想天外の大河性春小説。》
井上ひさし『江戸紫絵巻源氏 (下)』文春文庫・1985年
《父の急死によって奥州館藩六十一万千百十一石の藩主となった源次。たっての頼みで将軍と入れかわり、大奥数百人の女体をタップリ愉しんだあと、京へ上って畏れ多くも帝の身代りとなり、大内の女官たちを総ざらいにするという掛値ナシに抱腹絶側、波瀾万丈の物語。本になるのはこれが初めてのオリジナル作品。 解説・駒田信二》
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『あまたの星、宝冠のごとく』ハヤカワ文庫・2016年
《地球からの異星調査隊が不思議な共生生物と出会い深い関係を結ぶ「いっしょに生きよう」、神の死の報を受け弔問に来た悪魔の考えた天国再活性化計画が意外な展開を見せる「悪魔、天国へ行く」、55年後の自分と2週間だけ入れ替わった男女が、驚愕の未来に当惑する「もどれ、過去へもどれ」など、その生涯にわたってSF界を驚かせ強い影響を与え続けて来た著者による、中期から晩年にかけて執筆された円熟の10篇を収録。》
収録作品=アングリ降臨/死のさなかにも生きてあり/悪魔、天国へいく/肉/すべてこの世も天国も/ヤンキー・ドゥードゥル/いっしょに生きよう/昨夜も今夜も、また明日の夜も/もどれ、過去へもどれ/地球は蛇のごとくあらたに
清水一行『小説 兜町』角川文庫・1983年
《魚のブローカーから一転して興業証券への再入社。 37歳の山鹿悌司のこの転身は、兜町最後の相場師へのスタートとなった。
入社以来2年間を地味な事務作業で過していた山鹿は、株式市況の悪い昭和29年4月、新設された投資信託販売特別班長の一人に抜擢された。ズブの素人にもかかわらず、独自の発想と勘で、山鹿は農協を始め、信用金庫などの雑金融機関から大口の注文を集め、たちまち抜群の実績を上げた。そして次には、神武景気の端緒を見抜き、造船株一本に勝負を賭けて彼の顧客を大いにもうけさせ、次第にその頭角をあらわしていった……。
相場を生き抜いた男の波乱万丈の半生を描いた傑作長編!》
清水一行『悪の公式』角川文庫・1983年
《年商百億、東京の神田に地上七階、地下二階のビルを構える商社K・K赤石。創始者の赤石定造は、約40年前、香港でこの会社を設立した。当時、わずか一円で買った中年浮浪者の命と引換えにして得た保険金500ポンドで……。
しかし商社とは名ばかり、K・K赤石はあらゆる悪の公式を使って弱少業者を喰い物にしつつ、巨大化していった。この経営法は、定造から息子の竜夫にしっかり受け継がれており、現在の企業規模は定造の年来の悲願を十分達成するものだった。だが、好事魔多し、竜夫が脱税容疑で逮捕されてしまった!
法すれすれの卑劣な手段で徹底的に獲物をしゃぶる悪徳商社の実態を描いた傑作長編。》
小川国夫『マグレブ、誘惑として』講談社・1995年
《幻を見据え、幻聴を捉える自分の「言葉」が枯れていく。果して「書くこと」の復活は可能なのだろうか。いま熱く心は遠いマグレブの空へ飛ぶ―。危地に陥った文学者の自己再生を賭けた旅を描く長篇小説。》(「BOOK」データベースより)
松本清張『高校殺人事件』文春文庫・1977年
《闇のなかから流れてくる妖しい笛の音にひかれて、高校裏の沼に近づいたノッポは、無残な死体となっていた。武蔵野の面影がまだ残っているこの町で、次から次へと奇怪な事件が起る。私たち高校三年の仲間は、推理マニアの坂本信子を中心に、その謎を解くために乗り出した。夏休みが終るまでに事件は解決するだろうか……。》
松本清張『馬を売る女』文春文庫・1981年
《大都会の盲点・高速道路の非常駐車帯で殺されたのは競馬情報をサイドビジネスとするOLだった。彼女は秘書という立場を利用して馬主のもとに集る情報を巧みに商売にしていたのだった。女の金を狙う男の完全犯罪は成功したかに見えたが……。現代風俗を描く表題作他「式場の微笑」「駆ける男」「山峡の湯村」解説・大手眞年》
東京建築探偵団『スーパーガイド 建築探偵術入門』文春文庫・1986年
《東京の街に埋もれた謎の西洋館を見に行こう。手には地図、肩にはカメラ、ポケットにはコーヒー代、ボッ、ボッ、ボクらは今日も街を行く。》(「BOOK」データベースより)
吉行淳之介『男と女の子』中公文庫・1974年
《街で会った少女は、みすぼらしい服装で丸い顔だけに念入りな化粧をしていた。男と、その少女――歌手になりたくてヌード・モデルにまでなった貧しい女の子の、愛に似た心の揺れと淡い情交を、灰色の猥雑な都会の風景のなかに、繊細な澄んだ抒情的色彩で描きあげた長篇小説。他に青春の記念碑的短篇三篇を収載する。》
収録作品=男と女の子/水族館にて/白い神経毬/人形を焼く
吉行淳之介『技巧的生活』新潮文庫・1967年
《都会には珍しい霧の舞う夜道で葉子は生れてはじめての接吻をかわす。霧の夜から2年が過ぎて葉子は酒場“銀の鞍”のゆみ子に変貌していた。高級娼婦として金を貯めている女、同じ男を共有している女など、反目、嫉妬がうずまく女達の中を泳ぎまわりながら、ゆみ子はロマンティックな恋の心を秘めつづける。男と女の間にひそむ悲しみを、女性の内的心理に視点をおいて描き上げる。》
松本清張『聞かなかった場所』角川文庫・1980年
《農林省の食糧課係長浅井が、それを知らされたのは出張先の神戸であった。
その晩、地元食品加工業者の招待による宴会の途中、料亭の女中が彼に東京の自宅からの電話を告げた。妻英子の、外出先での心臓麻卑による急死、――耳を疑う知らせであった。
(英子は発作が起こったとき、どこを歩いていたのだろう?)
急きょ帰京する寝台車の中で、浅井は思った。そして、義妹によって語られた、都内代々木のその場所、それは妻がかつて口にしたことのない町であった。……
妻の死の真相を追って、思わぬ運命にまきこまれる、一官吏の悲劇を描く力作。》
フロベール『サランボオ(上)』角川文庫・1953年
《今は跡かたもなく消え去った前三世紀のカルタゴを舞台に、ヌーボー・ロマンの源流に位置するフロベールが描く女神官「サランボオ」の至純の恋。〈小説の世紀〉を代表する傑作。》
フロベール『サランボオ(下)』角川文庫・1954年
《今は跡かたもなく消え去った前三世紀のカルタゴを舞台に、ヌーボー・ロマンの源流に位置するフロベールが描く女神官「サランボオ」の至純の恋。〈小説の世紀〉を代表する傑作。》
アナトール・フランス『舞姫タイス』角川文庫・1952年
《博学フランスの名文は、聖者パフニュスと、踊子タイスの交渉を描きながら、古代アレキサンドリアの生活や迫害を避けて砂漠をさすらうキリスト教徒の生活をいきいきと再生させている。》
チャイナ・ミエヴィル『都市と都市』ハヤカワ文庫・2011年(ヒューゴー賞・世界幻想文学大賞・ローカス賞・クラーク賞・英国SF協会賞受賞)
《ふたつの都市国家“ベジェル”と“ウル・コーマ”は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく……。ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。》
天野かづき/原作・影木栄貴『BACK STAGE!!2』角川ルビー文庫・2011年
《セナプロの敏腕マネージャー・相楽玲は悩んでいた。敬愛する社長の聖夜が病気療養中で、事務所は最大のピンチを迎えていたのだ。そんな中、玲は超人気インディーズバンドのライブに行くことに。しかしそのボーカルは、玲を振り向かせるため「父の聖夜を超える」と宣言して家を出た聖湖だった! 玲は聖湖を連れ戻そうとするが、懐いていた聖湖から予想外の冷たい態度を取られて!? 書き下ろし&ショート漫画も収録した話題の芸能界ラブ「LOVE STAGE!!」コラボ小説第2弾☆》
犬居のすけ『寡黙なシュガーラブ』ショコラ文庫・2015年
《やたらと威圧感のある無口な会社の後輩、古志圭一郎になぜか嫌われている、臆病な安藤有希人は理由も聞けずストレスを募らせていたある日、彼がただの口下手の甘いもの好きで、有希人からする甘い匂いが気になっていただけだと知る。それ以来、お菓子作りが趣味の有希人は、作って余らせていたお菓子を古志にあげるようになるが、誰が作っているのか聞かれた際に妹だと咄嗟に嘘をついてしまい……。》
水瀬結月『あなたに真心♡にゃん急便』二見シャレード文庫・2009年
《三宅宮が三代目を務める美猫運送株式会社は、鮮魚販売から立ち上げた大手宅配業者。創業の逸話からネコを大事にする社風はそのままに順調な経営を続けているが、現在、重要な取引の局面を迎えている。そのさなか、なんと宮にネコ耳としっぽが生えるという事態が発生! しっぽを掴まれただけでイッてしまうという痴態を晒す宮。しかも秘書の金子の側に寄るだけでマタタビを嗅いだような快感が襲ってきて…。シャレにならない社長の姿に金子はネコ耳の隠蔽工作を開始するのだが、その会社最優先の様子に宮は一抹のさみしさを覚え…。》
栗城偲『愛のコロッケパン~恋する商店街~』プラチナ文庫・2016年
《合作コロッケパンが名物のベーカリーと精肉店、それぞれの店の看板息子・麦と陽介は幼馴染みだ。父が急逝した陽介はホストをして稼ぎ店を再開させたが、麦は、弟のように思う彼がなんだか知らない男になったようで、少し複雑な気持ちだった。それでも、子供の頃と変わらぬ距離で陽介が傍にいて嬉しい。スキンシップと甘い台詞には、麦も「さすが元ホスト」と笑っていたけれど!? 》
森本あき『お姫様に乾杯!』セシル文庫・2007年
《女の子みたいに可愛い、と言われることにずっと反発してきた佐藤潤が、文化祭での映画のヒロインを引き受けたのは相手役が生徒会副会長の阿倍貴だったから。阿倍は、佐藤がずっと恋している相手だったから、反対なんてできるはずがなかった。一緒にいられるだけで幸せだったけど潤は一大決心をして、この奇跡の恋をがんばることにしたが!? 書き下ろし番外編「王子様とお姫様のその後」付き❤》
鎌田東二『常世の時軸』思潮社・2018年
《無限遠点の彼方へ
超越の波動が悲の受精卵を苦の岬から突き落とす。満月に向かって悲しく聳え立つ母之理主よ応答せよ応答せよ応答せよ!
(「悲の岬」)
星海を孤独に光りながら渡る常世舟。宇宙に切り立つ岬から永遠へと堕ちていく時の欠片。還る場所はあるのか――壮大な神話詩をうたう、極北の第1詩集。》
吉田珠姫『夢魔はいかが?』白泉社花丸文庫・2011年
《夢野桃夜は「ブラックペッパー」と渾名され、自他共に認めるスジガネ入りの根暗だ。しかしその正体は夢魔一家の長男。とはいえ、桃夜はなぜかいまだ一度も吸精できず、その暗さに拍車をかけていた。そんな桃夜の支えは、幼馴染兼親友の池谷誠士郎。彼がいるから桃夜は学校に通えていたのだが、新しい担任として現れた半田翔平が桃夜のことを「タイプ」と言ってちょっかいをかけてくる。はたして半田の正体は?桃夜は夢魔として成長できるのか? そして桃夜と誠士郎の関係はいったいどうなるのか!?》
最近のコメント